ナタリー PowerPush - 真心ブラザーズ×宇宙兄弟
マンガと音楽が互いに共鳴! まさかの兄弟コラボ実現
その人のキャラクターが見えることが大事(小山)
小山 ちなみにお2人はタイプ的にヒビトとムッタどっちですか?
YO-KING んー、どっちですかねえ?
小山 桜井さんがムッタじゃないですか?(笑)
YO-KING まあそうでしょうね。僕がヒビトでしょうね(笑)。
桜井 自分がムッタっていうのは納得できるかも。
小山 ライブを観せていただいたとき、終始桜井さんがイジられてたじゃないですか。それを見てムッタかなって思ったんですよね。
桜井 アハハハ。年々イジられる傾向が強くなってるんですよね。
小山 イジられてるのを受け入れている桜井さんを見て、お2人の関係性ってこういう感じなんだなあって。
YO-KING 受け入れてるっていうか、イジられるの大好きなんですよ(笑)。
桜井 (笑)。
YO-KING ライブ中のトークって、ないならないほうがラクなんです。音楽とは違った回路を使わなきゃいけないんで。でも、初めて観に来てくれる人なんかには、そのトークの部分も絶対大事なんですよね。そこから入ってもらって、さらに音楽もより好きになってもらいたいっていうか。
小山 マンガも同じだと思います。宇宙がどうのっていうことよりも前に、出てくる人たちのキャラが見えるっていうことが大事なんですよね。
マンガと音楽の共通点はトルクの強さ(YO-KING)
──マンガと音楽。フィールドは異なれど、表現という部分では共通項がたくさんあるようですね。
桜井 うん。音楽もマンガもそんなに離れた表現じゃないように思うんだよなあ。それこそジャズを追求するとか、古典音楽を追求するとか、そういうことよりもむしろマンガ描いたりっていうほうが僕らの音楽に近い気がしますね。
YO-KING マンガも音楽もストレートというか、すぐにその世界に入れるんですよ。小説とかだと面白くなるまでに時間がかかったりするけど、例えば(THE ROLLING STONESの)「Jumpin' Jack Flash」の♪ジャッジャージャジャジャっていう頭のフレーズを聴けば、それだけでもうグッと入れちゃう。そういうトルクの強さっていうんですかね、そこはマンガも音楽も近いんじゃないですかね。で、そうやってグッと世界に入れるってことは、その間ネガティブなことを考えてないってことでもあって。楽しいこと、面白いことを考えていられる。普通に生きてるとポジティブじゃないことを考えちゃうこともあるんですけど、トルクが強いとすぐにそれをシャットアウトできるんですよね。それって現代にはすごく大事なことだと思うんですよ。それはつまり逃避のススメなんですけど(笑)。
小山 僕もマンガの役目はそこだなって思ってますね。一時的な現実逃避でもいいから、楽しませたり感動させたりっていうものを表現し続けていきたいなって、震災があって以降、より強く思うようになりました。
桜井 震災によって、音楽とかマンガとか、そういう素晴らしいものが世界にはあふれてるんだっていうことを忘れそうになってしまう瞬間もあったと思うんですね。そうなるとやっぱりキツイですから。
──今回のコラボで多くの人が楽しい逃避を満喫してくれるといいですね。
桜井 きっと楽しんでもらえるんじゃないかな。ただ聴いて喜ぶ、ただ読んで楽しむっていうだけじゃない、一歩深い楽しみ方ができると思うので。
YO-KING どっちかだけのファンの人が、お互いを知っていくっていうのもいいじゃないですか。
小山 曲を聴きながら絵を見たり、いろんな楽しみ方をしてほしいですね。僕は散歩しながら「サニー」を聴いたりするんですよ。ちょうど歩幅に合っていて、のんびり歩くのにいいテンポなので。ただ、歩きながら聴いていると最初のチリンチリンで必ず後ろ振り返っちゃうんですけど(笑)。
YO-KING アハハハ。俺、ジャマなのかな!? みたいな。
真心ブラザーズ(まごころぶらざーず)
YO-KINGと桜井秀俊によって1989年に結成。テレビ番組の「勝ち抜きフォーク合戦」で10週勝ち抜いたことをきっかけに、同年9月にシングル「うみ」でメジャーデビュー。「モルツのテーマ」「どか~ん」といったナンバーがTVソングに起用され、そのフォーキーなサウンドが好評を博す。1995年リリースのシングル「スピード」以降は、それまでのイメージを払拭するようなロック&ソウル色の強い音楽性へと移行。「サマーヌード」「拝啓、ジョン・レノン」「空にまいあがれ」など、数々の名曲を発表する。デビュー20周年を迎えた2009年にはベストアルバム「GOODDEST」をリリース。結成以来初となる2人きりのアコースティックライブツアー「真心道中歌栗毛」が、6月28日青山・草月ホールを皮切りにスタート。
小山宙哉(こやまちゅうや)
1978年京都生まれ。初めての持ち込み作品「ジジジイ」 で第14回マンガオープン審査委員賞(わたせせいぞう賞)を受賞。「ハルジャン」「ジジジイ-GGG-」などのヒットを経て、2007年12月から週刊「モーニング」で代表作「宇宙兄弟」の連載をスタートさせる。「宇宙兄弟」は2012年春に実写映画の公開も決定。2011年6月23日には単行本最新14巻が発売される。