音楽ナタリー PowerPush - BAGDAD CAFE THE Trench Town

全員が主人公 新生BAGDADの向かう先

BAGDAD CAFE THE Trench Townが9月17日に約5年ぶりとなるオリジナルアルバム「EVERLONG」をリリースする。2010年よりリードシンガーのmaiが事実上の脱退を発表し、バンドは活動を休止。その後3人の女性ボーカル以外の男性メンバーによってBAGDAD RIDDIM SECTIONが始動し、さまざまなシンガーやMC陣をフィーチャーするなど、フレキシブルかつクリエイティブなインスト集団として、その実力を磨いてきた。2013年にmaiが再びマイクを握り、それに伴ってRAN、Bigmomのボーカル陣も再び合流。BAGDAD CAFE the trench townとして5年ぶりとなるニューアルバム「EVERLONG」を完成させた。

ナタリーでは、今回はボーカルのmai、バンドの屋台骨を担うドラムの番長、そしてベースのNHKにインタビューを実施。新作の収録曲に込めた思い、mai復帰の真相などをたっぷりと語ってもらった。

取材・文 / 宮内健 インタビュー撮影 / 佐藤類

maiの復帰を待っていた

──約5年ぶり通算9枚目となるアルバム「EVERLONG」が完成しました。まずその前に、バンドが再始動するまでの時間を振り返ってみたいと思います。maiさん脱退後、約2年を経ての再スタートとなりましたね。

左からNHK(B)、mai(Vo)、番長(Dr)。

mai(Vo) そうですね。2010年から丸2年後、2013年ニューイヤーで復帰しました。

──その間、ボーカルを抜いたバンド編成のBAGDAD RIDDIM SECTIONとしての活動もあったので休んでる印象はなかったんですが、本体のバンドが活動休止しているとき、メンバーはどんなふうに過ごしてたんでしょう?

番長(Dr) バンドの活動休止が決まった直後は、だいぶ迷ってました。歌モノをやってたけどボーカルがいないインストバンドになってしまったので、このまま続けるかどうかっていう話にもなって。だけど、maiちゃんがいつか帰ってくるやろと思ってたんで、そのときに歌える場所があるようにって考えてました。自分らの新しい境地も見つけたかったので、インストバンドとしても成立させたかったし、歌モノのレゲエバンドとしてのクオリティも下げたくなかったので、いろんなアーティストをゲストボーカルに招いて両方うまいこといけるように活動していました。

もうマイクを持つことはないと思っていた

──BAGDAD RIDDIM SECTIONとしての活動がもたらしてくれたものはありましたか?

番長 今までは歌のバックっていうところで、楽器に関しては一歩下がるような考え方やったと思うんです。でもボーカリストがいなくなったことで音が前に出るというか、歌詞がなくてもきっちり楽曲やアレンジのよさだけで聴かせられるようになりましたね。逆にそこで歌が入っても、歌があるからって引かずに、きっちり前に出た演奏の中で歌を乗せられるようにもなったかな。

──BAGDAD RIDDIM SECTIONの活動を、maiさんはどのようにご覧になっていたんですか?

mai 最初の1年ぐらいはまったく音楽も聴かないし、ライブも行かないような状態だったんです。無理に音楽から離れようとしたわけじゃなくて、自然とそうなったんですけど。

──maiさん自身は当時、“アーティスト活動を休止する”(参照:BAGDAD CREATIONSボーカルmaiがアーティスト活動休止)と発表していましたが、実際はもう復帰しないっていう考えだったんですか?

mai(Vo)

mai そうですね。もうマイク持つことはないって思ってました。

番長 俺は絶対にまたマイク持つって思ってたけどな(笑)。1年過ぎた頃から、ちょいちょいライブ来て、ステージ袖から演奏覗いてたもんな。

mai いや、あのときはまだそんな気分になってへんて。

番長 でも、辞めた直後なんか、絶対そんなことせえへんかったやん。

mai せやな。打ち上げもおりたないって感じやったもんな。

──それが、やっぱり歌いたいって思いが強くなってきて。

mai 何も考えないでいたら、そういう答えが出てきましたね。20歳からずっと歌ってて、復帰するつもりもなく歌うことから離れて、自分のプロフィールの半分なくなったような……でも、最初はそれで全然よくて、新たな自分のはじまりぐらいに思ってたんですけど、だんだん物足りなくなってきて。1年半ぐらい経ってから、イベントとかにちょくちょく行くようになって、BAGDAD RIDDIM SECTIONのライブも観に行ったりしてて。そのとき、楽器だけでここまで盛り上げてるのがすごい!って率直に思ったんですね。それはメンバーだったからとか関係なしに、めっちゃカッコいいって思って。私が復帰してからも、ライブの始まりにはバンドだけで演奏する時間を作ってて、そこでしっかりと魅せてくれます。だから、BAGDAD RIDDIM SECTIONと今のBAGDAD CAFE the trench townの活動はつながってるなって思いますね。私が言うのもなんやけど、今回のアルバムの中にあるインスト曲の役割がすごくしっかりしてますね。「ここはホーンで魅せる!」みたいに、しっかりと見せ場があるんですよね。

番長 確かに、1つひとつのフレーズに、以前よりも責任感が出たような気がしますね。

ニューアルバム「EVERLONG」2014年9月17日発売 / 2300円 / apple of my eye / AOME-0006 / Amazon.co.jp
BAGDAD CAFE THE trench town「EVERLONG」
収録曲
  1. Feel&Go
  2. Make Your Fire
  3. Birthday
  4. 夢をかぞえて
  5. THIS WAY
  6. HIGH PRESSURE
  7. Anything Goes
  8. DUBthing Goes(Sadam Dub by Mad Professor)
  9. EVERLONG
  10. Feel&Go(LIVE @MEETS THE REGGAE 2014)
BAGDAD CAFE THE Trench Town
(バグダッドカフェザトレンチタウン)

レゲエを愛するナニワのソウルロッカーズ。2001年に大阪を拠点に活動をスタートさせ、2003年8月にリリースした1stアルバム「Love Sunset」が地元FM局でヘビーローテーションされるなどして注目を集める。2005年9月に3rdアルバム「MOVIN' ON」でメジャーデビューを果たし、数多くの野外フェスにも出演。2006年8月発売の4thアルバム「GOOD TIMES」は、オーセンティックなラヴァーズロックサウンドを追求し話題を呼んだ。2010年にリードシンガーのmaiが脱退するも男性メンバーのみで構成されたBAGDAD RIDDIM SECTIONが始動し、フレキシブルな活動を展開。2013年にmaiが復帰したタイミングでRANとBigmomの女性ボーカル陣が再び合流しBAGDAD CAFE THE Trench Townとして再スタートを切った。2014年9月に約5年ぶりとなるニューアルバム「EVERLONG」をリリース。