麻倉もも|“恋の歌”を歌い続ける理由

麻倉ももが2月13日に5thシングル「365×LOVE」をリリースした。今作には恋する女の子を描いたアップテンポな表題曲と、彼女にとって初めての失恋ソングとなったカップリング曲「さよなら観覧車」を収録。麻倉がバレンタインデーの時期にリスナーに贈る“恋のシングル”となっている。

2016年にソロデビューして以降、数多くの恋愛ソングを歌ってきた麻倉。なぜ彼女は恋する女の子の気持ちを歌い続けるのか? 音楽ナタリーでは麻倉にインタビューを実施し、少女マンガに影響を受けているというソロアーティスト・麻倉ももの世界観に迫った。

取材・文 / 須藤輝

大塚愛さんと松田聖子さんしか聴いてこなかった

──麻倉さんは歌手では松田聖子さんがお好きだそうですが、これまでほかにどんな音楽を聴いてこられたんですか?

人生で初めて意識的に音楽を聴いたのは、すごくよく覚えてるんですけど、小学3年生のとき。小学校って、だいたい4年生ぐらいからクラブ活動が始まるじゃないですか。で、各クラブが活動内容をアピールする新人勧誘会みたいな場で、バトンクラブが大塚愛さんの「さくらんぼ」に合わせて踊ってたんです。それを聴いて「えっ!? めっちゃいい曲!」って感動して、バトンクラブに入ったんですよ。

──「ここに入れば『さくらんぼ』で踊れるんだ」と。

そうです(笑)。そのあとすぐにレンタルショップに行って「さくらんぼ」のCDを借りたのも覚えてます。

──大塚愛さんから2000年代のJ-POPには行かなかったんですか?

私は昔も今もそんなに冒険しないタイプというか。私生活でもそうなんですけど、1つ好きなものができたらそれ一辺倒になって、そこから別の何かに手を広げようとしないんです。だから小学生のときは大塚愛さんしか聴いていなくて。

──では、松田聖子さんとの出会いは?

中学生のときにパソコンで動画を見てたら、たまたま関連動画に松田聖子さんの動画があって、なぜかわからないけどクリックしたんです。そこで「この人、すごい!」って衝撃を受けて。その動画は「風立ちぬ」を昔の歌番組で歌われている映像だったんですけど、そこからはもう松田聖子さんしか聴いてないという。だから、かなり偏ってるんですよね。

麻倉もも

──例えば松田聖子さんの動画を見て、自分も歌手になりたいと思ったりは?

まったく考えなかったですね。声優になるためにミュージックレインのオーディションに応募して合格するまで、こういう歌の活動があることも知らなくて。入ってから歌とダンスとお芝居のレッスンを受けさせていただいたんですけど「なんで歌とダンス? どちらも表現に関わることだからかな?」ぐらいに思っていたんです。そしたら、そのあとしばらくして先輩の戸松(遥)さんのライブを観に行かせていただいたときに、スタッフさんに「麻倉もああなるんだよ」と言われて。そこでようやく歌手としての活動を意識したという感じですね。

──それ、大丈夫なんですか?(笑)

今思うとちょっとヤバいですよね(笑)。ちゃんと調べておけよという話なんですけど。ただ、歌自体はそれなりに歌っていたというか……私は中高一貫の女子校に通ってたんですけど、そこでミュージカル部に入っていたんです。というより、小学生のときにそのミュージカル部の学内公演を観て、「この部活に入りたい!」と思ったのがきっかけでその女子校に行こうと決めたんですよ。でも、それは歌やダンスが好きだったからというよりは、みんなで一緒に1つのものを作り上げているところに惹かれたからなんですよね。

──そのミュージカル部の経験が、TrySailやソロ活動に生かされていると感じますか?

どうでしょう? オーディションに受かった1つの要因ではあると思うんですけど……私はそのときアピールできることが何もなかったので、オーディションでミュージカル部の話ばっかりしてたんですよ。それでも、今言ったような「みんなで1つのものを作ることが楽しい」みたいな感覚は、今の活動のベースになってる気がします。

TrySailとソロではお客さんの空気感が違う

──麻倉さんがソロデビューしてから2年と少し経ちますが、その間に変わったことは?

もう、変わったことしかないというくらい変わったなって思います。まず1stシングルの「明日は君と。」(2016年11月発売)は、カップリングの「花に赤い糸」が映画「好きになるその瞬間を。~告白実行委員会~」の挿入歌になることが決まっていて。なので「もうこの日には録らなきゃいけないし、この日には劇場で流れるし」みたいな状態で、気持ちの整理がつかないままあれよあれよと制作が進んでいたんです。しかも、ソロデビュー以前からTrySailの一員として活動してはいたものの、正直まだ人前で歌うことに対して苦手意識もあって……だからかなり浮き足立ってましたね。もちろんどちらの曲もすごく気に入ってたし、レコーディングでも精一杯歌ったことは間違いないんですけど。

──なるほど。

でも、そのあとリリースイベントとかでお客さんの反応を見ているうちに、だんだん地に足がついてきたというか。たぶんほかの2人もそうだと思うんですけど、TrySailとソロではお客さんの空気感が違うんですよ。

──と言いますと?

私のソロを応援してくださる人って、私が危なっかしいからなのか(笑)、声もたくさん出してくれるし、より気にかけてくれている感じがするんですね。だから私が客席に向けて1人でしゃべっていてもちゃんと会話が成立してる実感があるし、かなりアットホームな空間になるというか、すごく居心地がいいんですよ。その距離感みたいなものを楽しめるようになって「あ、1人でも大丈夫だ」って思い始めて。そこから「私はこういう歌が好きなんだ」とか「こんな歌い方もできるんだ」というのが、ちょっとずつわかってきましたね。


2019年2月14日更新