コミックナタリー Power Push - わぁい!

前代未聞の「オトコの娘マガジン」誕生 編集長が趣味全開でその魅力を語る

想像力を刺激できるのが魅力

──「わぁい!」の連載陣には、成人向け雑誌で活躍されている方もいますよね。なのにあえて「わぁい!」を成人向けではなく全年齢向けにしたのはなぜですか?

女装男子が好きだとか、女装が好きだとかって趣味に目覚めるのは、小学生くらいの早い時期が多いと思うんですよ。そういう時期にいざこの手の雑誌を探そうと思っても、成人向けのものはいっぱいあるけど、全年齢向けのものになるとほとんど見当たらないっていうのが現状で。私が小中学生のときはインターネットもなかったので、かなり探し回ったりして苦労しました。だから小中学生でも買えるものがあるとうれしいなっていう自分の思いがまずあって。

──12歳の土方さんの願望が形になった、という感じですね。一方で、全年齢向けだからこそできること、というのもあると思います。

カスカベアキラによる「わぁい!」第1号の表紙イラスト。

ええ、成年向けの雑誌だと、女装をしている男の子が性的に犯されたり犯したりっていうシーンが当然あったりするわけなんですけど、そういう直接的な描写じゃなくて、想像力がもたらすものを大事にしたいんですよね。描いてないからこそ、頭の中で想像するからこそ、よりエロかったりとか、あるいはすごい面白かったりっていうのがあると思うんです。成年向けは目的が性描写なので、男の子がいきなり女装していても特に違和感はないんですけど、全年齢向けの場合はエンタテインメントとして成立することが前提なので、なぜ女装するのか、そこに理由がないといけない。このジャンルはシチュエーションが大事なので。そういう意味では、むしろ成年向けではなくて、全年齢向けで描いて面白いジャンルではないかと思います。想像力を刺激できるんですよね。

──描写の制限やガイドラインみたいなものは作ってるんでしょうか。

もちろんあります。女性の乳首はNGだけど、男性の乳首はOKとか。女装男子のイラストって、下着まで見せないと「この人は男です」っていうのを表現しづらいんですよ。あとは肩幅の表現とかで表すしかないので、その辺は難しいところですね。なので下着のもっこりしてる表現がNGとか、乳首がダメということにしてしまうと何も描けなくなってしまうんで、その辺はOKにしてます。

──肩幅や骨格で男の子だってことを表現するんですね。

ほかには骨盤の位置とか、おしりの大きさとかですね。そういうところで調整していくしかなくて。女装男子好きならではのツボとかもいろいろあるので。

──ツボって、例えばどんなことですか。

例えばですけど、初めて男の子が女性の服に袖を通すとき。すんなり着るのか、それとも抵抗を感じながら着るのか。端的に言えばそういうところですね。ほかにも、男の子が積極的に女装している場合、相手役の男の子がどういう反応をすべきか、とか。

──気持ち悪がる、とか?

気持ち悪がるにしても、気持ち悪がっているその相手に対して女装男子はどういう行動をとるのか、とか。シチュエーションごとにツボがいろいろありますね。そのあたりを読んで味わってもらえればと。

女性にも読んでもらいたい

──このジャンルって、男の子が無理矢理女装させられてるのがいい、とか、自分から積極的に女装するのがいい、とか、嗜好がすごく細分化していると思うんですけど、その辺りはどういう風に取り込もうとしていますか?

あまり極端に寄せないで、なるべく間口を広く取ろうとは思っています。これっていわゆる性癖の問題なので、どうしてもパーソナルなものに細分化していくんですよ。描き方でも、男性っぽさが残っているほうがいいとか、女の子の絵だけど男の子という設定になってるのがいい、とか。すごく読者ごとにこだわりが多いジャンルなんですよね。

──たしかにネット上で論争が巻き起こっているのをよく目にします。

例えばメイドが好きな人たちは、メイドさんのスカートは長いのがいいか短いのがいいかって論争をよくしています。でも最終的には、両者とも「どっちもいいよね」っていう結論に落ち着くんですよ。ところがこの女装男子っていうジャンルに関しては、「どっちもいい」にはほとんどならないんですよね。なぜか延々と言い争ってることが多い(笑)。でも「わぁい!」はなるべく多くの人に楽しんでもらいたいので、両者とも取り入れたい。

──なるほど。では女装男子好き以外ではどんな人に読んでもらいたいですか?

全く興味のない人に読めとは言わないですけど、ショタに興味にある女性にはぜひ読んでいただきたいですね。女装男子というのはショタの延長線上でもあるので。「わぁい!」は基本的に男性向けの雑誌ですけど、女性が読んだ上での意見も聞いてみたいです。

──ショタっていうのはもともとは女性の文化ですしね。

ただ女性の文化でも、BLというジャンルで表現される男×男の関係性とも微妙に違うので、BL文脈での女装少年×男装少年みたいなのを期待されるとがっかりさせてしまうかもしれません。細かく規定しだすとキリがない世界ですから、読まれる方はどうぞ広い心で「こういう女装男子もあるんだな」と受け止めてもらえれば。あとどちらにしても狭い世界での嗜好ですから、宗教戦争はやめて、みんな仲良くしましょうよ、と(笑)。

女装男子への想いを熱弁する土方編集長。

新世紀オトコの娘マガジン「わぁい!」季刊 Vol.1 / 2010年4月24日発売 / 1200円(税込) / 一迅社

  • NOW PRINTING
  • Amazon.co.jp

一迅社から発行される、男性が女性の衣装を着る「女装男子」をテーマとしたコミック+情報雑誌。

第1号ラインナップ

■コミック
神吉「さざなみチェリー」/ひねもすのたり「オンナノコときどきオトコノコ」/日辻ハコ「すずのね若女将?奮闘記」/ゑむ「ひみつの悪魔ちゃん」/すえみつぢっか「リバーシブル!」/冬凪れく「ののの。」

■特集記事:ゲーム
処女はお姉さまに恋してる 2人のエルダー/乙女はお姉さまに恋してるPortable/アッチむいて恋/Cross Days/俺の妹のエロさが有頂天でとどまる事を知らない/Cure Mate Club/嘘デレ!/幼馴染みはベッドヤクザ!/他

■特集記事:アニメ
バカとテストと召喚獣/ささめきこと/まりあ†ほりっく

■特別企画
おんなのこらいふ!/オンナノコになりたい!出張版

■イラスト
蒔田真記/ゆきうさぎ/あおぎりぺんた/上田裕/あめとゆき