コミックナタリー Power Push - ウルトラジャンプ

怒涛の新連載7タイトルを総まとめ サンホラ楽曲コミカライズ作家の対談も

「Moira」をやることを決断するのにだいぶ待ってもらった(桂)

桂遊生丸が手がけた「Moira」のイラスト。

──桂先生が7年ぶりにサンホラのコミカライズを手がける新連載「Moira」が、ウルトラジャンプ1月号(集英社)でスタートしますね。「Moira」はロシア人の富豪・ズヴォリンスキーが母親の形見の叙情詩「エレフセイア」を読み解いていく、という形式で、古代ギリシャ風世界の人々と戦いが紡がれる物語です。

 サンホラさんの事務所の方から私に「Moira」をお願いしたいと言ってくれていると、担当さんからの電話で知って「ええー!?」って(笑)。10周年のコミカライズ企画に参加するということは決まっていたんですが、まさか「Moira」とは。軽はずみに「はい」とは言えないなと、やることを決断するのにだいぶ待っていただきました。

──どのあたりが決断するのに時間がかかった要因でしょうか。「Moira」は古代の戦争シーンがたくさんある、というのが特徴のひとつに挙げられると思いますが……。

 それもありますね。でもここで断ったらもう描くチャンスはないだろうと思ったんです。

鳥飼 名場面が多いアルバムですよね。

 そうなんですよ。みんなが名場面だと思っているシーンにちゃんとたどり着いて、しかもみんなを感動させることができるのか……。名場面って、いいセリフの表面だけ描けばいいというものではなく、それまでに盛り上がるための下準備をしなくてはいけないじゃないですか。

鳥飼 そうですね。いちファンとしては楽しみで楽しみで「早く読みたい!」という気持ちです。

桂遊生丸が手がけた「Moira」第1話より、ズヴォリンスキー。

担当 実は描き上がったばかりなんですが(「Moira」第1話を取り出す)。

鳥飼 うわあ!この見開きのページ、頭の中にあのメロディが流れてきます。

──第1話の最後は、雑誌を90度回転させて読む構図になっていますね。

 ええ、「Moira」の歌詞カードにも縦になっている部分があるので、やりたかったんです。

鳥飼 カッコいい……! 「Moira」はいろいろなシーンがすごく楽しみというか、戦々恐々というか……ってネタバレになってしまいますね。すでにCDが出ているのでストーリーは公開されていますが、ネタバレにはどう気をつければよいかいつも悩みます。

サンホラの曲の解釈に正解はない(桂)

──確かに。先生方は、サンホラを聴いている人に向けて描いていますか? それとも聴いたことがない人を意識していますか?

鳥飼 聴いたことがある人にも楽しんでいただけるような作品にしたいのはもちろんですが、コミカライズという貴重な機会をいただいたので、ぜひたくさんの人に見ていただきたいです。

桂遊生丸が手がけた「Moira」第1話より。

 私も同じですね。マンガを読んで、CDに興味を持ってくれたらいいなあ。特に「Moira」は2008年にリリースされて時間が経っているアルバムなので、聴いたことがない人も多いだろうと想定してます。サンホラの曲の解釈には正解がないので私の解釈になりますが、私がCDから受け取ったものを素直に、読者にわかりやすく、と。

鳥飼 そうですよね。正解はないんですよね。

 普通は完成したシナリオがあって、それをマンガという表現にしていく作業ですが、サンホラの物語はCD内でも明言されていないことが多いですし。マンガだけ読めば全部わかる、ということにはなりませんよね。マンガはマンガで、作者の解釈であって正解ではないので、ぜひ「CDと一緒にどうぞ」みたいな(笑)。

──サンホラのコミカライズは、解釈の手助けというか、解釈のひとつという位置付けなんですね。そういえば、桂先生が最初に手がけたサンホラのコミカライズ作品「Ark」が、ウルトラジャンプ1月号の付録になっているとか。

 ええ。多少写植に修正が入っていますが、ほぼ当時のままです。

桂遊生丸が手がけた「Ark」より。

──「Ark」は「Elysion」に収録されているナンバーですが、コミカライズすることになったきっかけを伺えますか?

 サンホラのコミカライズをしたいと、ウルトラジャンプ編集部の皆さんとRevoさんのところに会いに行ったんですよ。その場で私が事前の打ち合わせもなしに、一番好きだった「Ark」がやりたいです、って言っちゃって。Revoさんはちょっと不安そうでしたけど(笑)。本当にできるの?みたいに。でもRevoさんは覚えてないかもしれないですけど、「Ark」を描き終わったあと褒めてもらえました。

──単行本未収録の短編なので、桂先生の読者やサンホラファンはうれしいですね。最後にせっかくの対談ですので、サンホラをコミカライズする作家同士で何か聞いておきたいことはありますか?

 友達になってください。

鳥飼 ええっ!? ぜひお願いします! うれしいです、桂先生は尊敬する先生なので……。

 とんでもないです(笑)。 Sound Horizonの話をできるマンガ家さんを全然知らなくて、「このシーンはこうで、あのキャラはああで」とローランのみんながやってるのを見て、いいなあって。

鳥飼 わかります、私も指をくわえて見ています。

 「Moira」のコミカライズに関わったら、もう表立って「Moira」の話はしないほうがいいと思うので……。もっといちファンとして好き勝手なことを騒いで楽しみたい(笑)。ということでぜひお友達に。

鳥飼 こちらこそ、よろしくお願いします!

「ウルトラジャンプ」

連載タイトル

秋★枝「恋は光」/荒木飛呂彦「ジョジョリオン」/井上淳哉「La Vie en Doll ラヴィアンドール」/舞城王太郎×大暮維人「バイオーグ・トリニティ」/落合さより「ぎんぎつね」/オノ・ナツメ「レディ&オールドマン」/カガノミハチ「アド・アストラ ―スキピオとハンニバル―」/夏達「長歌行」/成家慎一郎「ラパス・テーマパーク」/林家志弦「はやて×ブレード2」/皆川亮二「PEACE MAKER」/Monty Oum & Rooster Teeth Productions原作、三輪士郎漫画「RWBY」/Sound Horizon原曲、桂遊生丸漫画「Moira」/鈴木マナツ「コネクト」/紙魚丸「惰性67パーセント」/新貝田鉄也郎「怪人ようちえん monster's kindergarten」/カラスマタスク「ノー・ガンズ・ライフ」/島崎麻里「アリアドネの冠」/中田春彌「Levius/est」/LRIG原作、nini漫画「selector infected WIXOSS~まゆのおへや~」

原曲:Sound Horizon 漫画:桂遊生丸「Moira」

Sound Horizon10周年特別企画!
「Roman」の強力タッグ再び!!
Sound Horizon 6th Story CD「Moira」をコミカライズ。
遥か遠き神話の世界を生きた英雄たち。
彼らを導くのは!?
運命の糸が織り成す世界を見よ。

原曲:Sound Horizon、漫画:鳥飼やすゆき「新約Märchen」

Sound Horizonの名盤「Märchen」を、新鋭・鳥飼やすゆきが美麗なタッチでコミカライズ! さぁ、復讐劇の始まりだ……。

桂遊生丸(カツラユキマル)
桂遊生丸

代表作にあかほりさとる原作による「かしまし~ガール・ミーツ・ガール」、同じくあかほり原作の「ラブアレルゲン」、「AIR」など。2007年よりウルトラジャンプ(集英社)にて、Sound Horizonの5th Story CD「Roman」のコミカライズを手がけた。ウルトラジャンプ2016年1月号より、Sound Horizonの6th Story CD「Moria」のコミカライズを連載中。

鳥飼やすゆき(トリカイヤスユキ)
鳥飼やすゆき

8月27日生まれ、神奈川県在住。好きな食べ物は卵かけご飯とワイン。少年マガジンエッジ(講談社)にてSound Horizonによるアルバム「Marchen」(aはウムラウト記号付きが正式表記)のコミカライズを連載している。