コミックナタリー PowerPush - 月刊!スピリッツ
西村ツチカと真造圭伍の新鋭対談 時代を切り開く旬の月刊誌に注目
高野文子フォロワーみたいにひとくくりに語られて
──10月27日発売の月刊!スピリッツ(以下、月スピ)で新連載を立ち上げる西村ツチカさんに話を聞くにあたり、きょうは月スピの先輩として、「森山中教習所」でデビューを飾った真造圭伍さんにもご登場いただきました。
真造圭伍 いや、先輩とか、とんでもないです。
西村ツチカ いやいや、ヒットの秘訣を教えて下さい、先パーイ(笑)。
──読者として見ていると、月スピからはすごい勢いを感じるというか、いい作家が集まってきてるなあ、と。
ツチカ まあ僕はそんな、大したあれじゃないですけど、小原愼司さんの新連載「地球戦争」は最高でしたね。第1話。バリクソ面白かった。
真造 確かに。僕は「重版出来!」すごい好きですね。松田奈緒子さん。面白かったです。
──なんか作家が楽しんで読んでるっていいですね。さて2人はプライベートでも親交があって、同人誌「ジオラマ」の仲間であり、なによりここ数年、身も蓋もない言い方をすれば「高野文子チルドレン」としてグルーピングされてきたと思いますが。おたがいにライバル意識みたいなものはありました?
真造 そうですね、自分はその枠に入れられるの、危惧してたんですよ。だからライバル意識っていうより、とにかく自分は早くそこから脱しなきゃいけない、というか。
ツチカ うん。抜きん出たいっていうか、ちょっとそういう気持ちはありました。でも結局、それぞれ違うところに行くんだ、目指してる山が違うんだなっていうのがわかったんで。
真造 や、そうは言っても、最初は、あったよ……。ライバル意識……。
ツチカ 待って待って、そんなん言ったら僕だってすごいありましたよ……。
──いい調子になって参りました(笑)。じゃあその最初の頃、2人の出会いから聞いてもいいですか。デビューがだいたい一緒の時期ですが、ファーストコンタクトは?
そんなに僕のマンガ好きなんですか?
ツチカ 僕のブログにコメントくれたんです、最初は。横に「真造圭伍」って書いてあったからびっくりしましたよ。
──そうなんだ! 何て書いてあったんですか。
真造 「いつも枕元に単行本置いてます」みたいな。ほんとに露骨な、ファンみたいな感じでしたよ。「毎晩読んでます」みたいな感じだった。気持ち悪い……。
ツチカ そんなに僕のマンガ好きなんですか?
真造 ……好きです。
ツチカ (絶句)……嬉しいですよ。
──名前見てびっくりした、ってことは、西村さんも真造さんのことは前から認識していたわけですね。
ツチカ もちろん。僕は月スピをぱらぱら見てたら、なんか面白い絵のマンガが載ってるぞ! と思って。絵が上手いというのもあるんですけど、ちょっとこの人、好きなマンガ家がたぶん僕と一緒やな、と思って。それが真造くんの(「森山中教習所」の連載)第2回やったんです。
──第2回ということは2009年の11月号ですね。そしたらブログにその人から書き込みがあった、と。
ツチカ あ、でもコメントもらったのは「なかよし団の冒険」が単行本になった(2010年11月)あとです。まあとにかく、真造くんの絵がすごいな、と思って読んだのが最初でしたね。やっぱり最初、絵から入りませんか?
真造 そうです、俺も。まったくそうですね。
──真造さんがツチカさんを認識したのは?
真造 pixivです。ちょうど僕もやりはじめた頃で……、いや違う、最初はtumblrだ。
ツチカ あ、そうなんですか。
真造 tumblrにツチカさん初期の絵が流れてきて「おおっ!」って思って、それで検索したらpixivにたどり着いて。「なかよし団」が出たときは、担当編集さんに「この人すごい」って言ったのは覚えています。「非日常な彼女」ってイラストのコーナーが月刊!スピリッツにあるんですけど、「あそこに絶対描いてもらったほうがいいですよ」って言いましたからね。
ツチカ ありがとうございます。実際それでお声が掛かって、その縁から今回の連載ですから、真造様々ですよ。真造サマ~。
真造 いや、よしてください。よかったんで、ほんと。
ブログ読んでるうちに、文体で「男の人かな?」
──それで本人のブログにもコメントを書き込んだわけですね。それからは?
ツチカ それで知り合いになってTwitterとかフォローしあう感じになったんですけど、1回真造くんを飲みに誘おうみたいなことになって。デザイナーの森敬太くんと3人で飲みに行ったんです。結局それが同人誌ジオラマの誕生につながったんですけど。
──そんな経緯だったんですね。
真造 ほんとうにネットのおかげですよね。
ツチカ ネットのおかげです。みんなネットの。それからは同人誌の打ち合わせとかで割と集まって飲むようになりました。
──同人誌の打ち合わせって何を話すんですか?
真造 別になんも……何しゃべってるんですかね、俺。なんか緊張しちゃって。
ツチカ そうですか?
真造 いやなんかほんとうに緊張しちゃうんですよ。好きな作家さんって、あんまり会いたくないじゃないですか。なんかちょっと……ツチカさんにはマジなんか緊張しちゃうんですよ。だからほんとはもう、たくさんしゃべりたいことあるんですけど……。こう……ダメですね。
ツチカ (おどけて)なんだよおー。
真造 ダメなんです。ちょっとそういう……なんか……。
ツチカ 水くせえなー(笑)。酒飲んだら結構しゃべるけどね。
真造 そうですね。酔わないとしゃべれない、ダメなタイプです。
──ちなみに初対面のときの印象はどんなでしたか?
真造 なんか……すみません、こういう人かーって思った。太ってましたね。
ツチカ 恥ずかしい。
真造 や、それ、あとがきのせいなんですよ。
──ああー。「なかよし団」のあとがきマンガで、西村さんはご自分のこと少女の姿に描いていましたもんね。スカートを穿いた。
真造 あれ読んで、やっぱり最初は女の人だと思ってました。あ、でも、ブログに書き込んだときは「男の人かな」くらいにはわかってきてた。ブログ読んでるうちに、文体で。
月刊!スピリッツ12月号ラインナップ
- 西村ツチカ「さよーならみなさん」
- さぬいゆう原作・伊丹澄一作画「共学高校のゲンジツ」
- 松田奈緒子「重版出来!」
- 小原愼司「地球戦争」
- 伊藤悠「シュトヘル」
- モリタイシ「今日のあすかショー」
- 手原和憲「ミル」
- 野田宏「拝啓、旧人類様。」
- 中山豪「0482」
- 高嶋あがさ「トド彼」
- 石神しし「ほんとにほんとにほんとにほんとにライオン田!」
- 大瑛ユキオ「ケンガイ」
- 大ハシ正ヤ「月刊 大ハシ正ヤ」
- ムロ・ゾノフスキー「Rolly▼婚」
- 南門前クマヲ「ゾンビ営業 高橋」
- 荒井ママレ「おもいでだま」
- 高田サンコ「たべるダケ」
- タナカカナタ原作・ハナツカシオリ作画「ギリギリ魔法少女?法子」
- 高橋聖一「パスタでわかる世界消滅!」
- 中川いさみ「世界美女話ビジョバナ」
- 吉田聡「七月の骨」
- 原克玄「かばやし」
- ルノアール兄弟「さよなら、もっさん。」
- 荻野真「孔雀王ライジング」
- 竹本友二「8 はち」
- イラストギャラリー「非日常な彼女」039 トミイマサコ
- 坂口恭平「新経済概論[鼻糞と接吻] 」
- 付録:花沢健吾×浅野いにお 「アイアムアヒーロー」10巻別バージョンカバー
※▼はハート、吉田聡の吉の字は正式表記では俗字になります
西村ツチカ(にしむらつちか)
1984年神戸生まれ。2008年に「君の動き」が月刊COMICリュウ(徳間書店)の龍神賞にて銅龍賞を受賞、翌年「黒岩さん」が同誌に掲載されデビュー。2010年に刊行した短編集「西村ツチカ作品集 なかよし団の冒険」が第15回文化庁メディア芸術祭マンガ部門の新人賞を受賞した。2011年には第2作品集「かわいそうな真弓さん」を発表。月刊!スピリッツ2012年12月号にて初の本格連載「さよーならみなさん」を開始。
真造圭伍(しんぞうけいご)
1987年1月23日、石川県生まれ。週刊ビッグコミックスピリッツの「スピリッツ賞」に投稿ののち、大学3年時に「なんきん」でデビューした。その後月刊!スピリッツに「森山中教習所」を、週刊ビッグコミックスピリッツに「僕らのフンカ祭」を連載。短編をまとめた単行本「台風の日」も2012年に刊行。現在、新作鋭意準備中。