コミックナタリー Power Push - 映画「ライフ・イズ・デッド」
今度のゾンビはニートで草食! 古泉智浩×花沢健吾、ゾンビマンガ家対談
何もない日本の田舎町を舞台にした脱力系ゾンビマンガ、古泉智浩「ライフ・イズ・デッド」の実写映画が2月11日に公開される。映画に併せ原作のリニューアル刊行も決定しており、エンタメ業界を席巻しつつあるゾンビブームの決定打となりそうだ。
コミックナタリーは、原作者の古泉とブームの火付け役と目される「アイアムアヒーロー」の作者・花沢健吾の対談をセッティング。さらにこの映画の魅力を多角的に探るべく、主人公・逝雄役の荒井敦史とヒロイン・消子役のヒガリノに話を聞き、演者としての「ゾンビ体験」を語ってもらった。
作品紹介
映画「ライフ・イズ・デッド」の原作は、2006年に漫画アクション(双葉社)で連載されていた古泉智浩の同名マンガ。アンデッド・ウイルス(UDV)と呼ばれるゾンビ化する病が蔓延した世界を舞台に、田舎町に暮らす感染者・赤星逝雄の最後の日々を描く。作品の大きな特徴は、ゾンビをモンスターとしてではなく、日常的に存在する厄介事として扱っていること。命に関わる危険がすぐ近くにありながら、登場人物は皆どこか他人事のようで、そのズレた言動が日本人らしい滑稽さをリアルに写しだしている。
登場人物
ゾンビマンガ家対談 古泉智浩 × 花沢健吾
映画化は「アイアムアヒーロー」がミリオンヒットになったおかげ
古泉 きょうは週刊連載の作家さんに来ていただいて、ほんとうに恐縮しています。人間業じゃない忙しさだと思うんですよ。ありがとうございます。
花沢 とんでもないです。よろしくお願いします。
古泉 そもそもこの映画の企画が通ったのはですね、花沢さんの「アイアムアヒーロー」がミリオンヒットになったおかげなんですよ。映画化の話、何度もポシャってきたんですから。
花沢 いやいやまさか(笑)。
古泉 ほんとに。暗礁に乗り上げていた企画がですね、花沢さんが「アイアムアヒーロー」でゾンビ界を盛り上げてくれたおかげで動き出したんです。
花沢 ゾンビ界ってあんまり実感ないんですけど、そんなにあちこちでゾンビものってやってるんですか?
古泉 すぎむらしんいちさんが今「ブロードウェイ・オブ・ザ・デッド 女ンビ ―童貞SOS―」ってマンガ描いてたり、相原コージさんが「Z~ゼット~」って描いたりしてますね。
花沢 ああ、言われてみるとそうですね! 福満しげゆきさんも去年モーニング(講談社)で描いてましたよね。
古泉 「日本のアルバイト」って短編を久々に発表してました。あれも面白かった。こういくつもあると、追い風感があっていいですね。
花沢 ちなみに映画界もゾンビブームなんですか?
古泉 映画も多いと思います。フィルムからデジタルになって制作費が安くなったのもあって、インディのゾンビ映画が無数に作られてます。ゾンビものは作りやすいからね。新しくモンスターとか考えるの大変じゃないですか。
花沢 そうなんですよ(笑)。ところで「ライフ・イズ・デッド」を描くきっかけはなんだったんですか。
"ゆっくりゾンビ"のいる社会が、すっごいリアルなんです
古泉 「ショーン・オブ・ザ・デッド」(2004年イギリス、エドガー・ライト監督)っていう、元祖ゾンビをパロディにした映画を観て、「こういうアプローチなら僕にも描きやすいな」って思ったのがひとつ。あと当時ちょうど父が死にまして、それまで人の死についてあまり描いたことがなかったので、父の死を間近で見たのを踏まえて、身に染みる感じを描きたいなと思って。だから痴呆症とか末期がんとか、その延長でゾンビを造形したんですよ。「アイアムアヒーロー」はどういう経緯だったんですか?
花沢 始めはパニックものをやろうと思っていて……、どういうのがいいのかなって考えたときに、ゾンビがいちばんマンガとして作りやすいし面白いかな、って思ったんです。
古泉 「アイアムアヒーロー」は「28日後...」(2002年イギリス、ダニー・ボイル監督)っぽいですよね。
花沢 そうですね、「28日後...」とか「ドーン・オブ・ザ・デッド」(2004年アメリカ、ザック・スナイダー監督)にかなり衝撃を受けて、これはすげえ、と。
古泉 それまでのゆっくり歩くゾンビと違って、ゾンビが走るタイプの。
花沢 走らないとパニック展開にならないんですよ。感染スピードが遅いと、ある程度対処できちゃうので。だからマンガでも走ってもらったほうがほうがいいや、って。
古泉 ゆっくりゾンビにはね、よっぽど油断してない限り人間が負けることはないんですよ。昔のゾンビ映画って受けの美学というのかな、全日本プロレスみたいでしょ。
花沢 「ライフ・イズ・デッド」は、ゆっくりゾンビへの対処がすっごいリアルなんです。本当に作中のようなことが起きたらあんな感じの社会になるかな、って思わせる。
古泉 花沢さんのゾンビはむちゃくちゃ怖いですよね。内臓とか描いてて怖くないですか?
花沢 もう慣れちゃったので怖くないですね。実は連載前に耐性付けとかなきゃと思って、ネットでグロ画像ばっかり漁って、見まくったんですよ。ただ描くのが難しいのはあります。噛み付かれた箇所がグチャーッと傷んでくる、その質感を描くのが手間ですね。
──ゾンビの魅力はどんなところに感じますか。
古泉 僕は「無常感」ですね。僕、廃墟が好きなんですけど、廃墟を見るときとゾンビに抱く感覚が割と近いんです。立派な家が朽ち果てて、錆び切った廃墟とかを見ると、過去にここで豊かな生活をしてた人がいて、家族がいたり、楽しい思いもあったろうになーって感慨を持つんですよ。ゾンビもね、この人にも親があって、好きな人もいたかもしれないし、友達もいたかも、仕事場では活躍してただろうに、みたいな感覚があって、その哀しさが好きなんだと思います。
花沢 僕はそこまで考えてなかったけど……、今の漠然とした社会不安が単純な形で表れてるのがゾンビだと思うんです。いきなりわけのわかんないことが起きて、抗えないという点では、去年の地震とゾンビの理不尽さは似てるかもしれませんね。ちょっと一時期前までは、人の内面を掘り下げていく作風が流行ってたような気がしたんですけど、震災以降、なんていうか……、
古泉 それどころじゃない、っていう。
あらすじ
近未来、世界中に、人間の体液によって感染するアンデッド・ウィルス(UDV)が蔓延していた。それは日本も例外ではなかった。UDV感染は通称ゾンビ病と言われた。その症状は5段階に分けられており、レベル5になると、心臓も思考も停止しているのに動き回る動く死体、すなわち、ゾンビになってし まうからだ。赤星逝雄は、高校卒業まぎわにUDV感染の宣告をされた。そのせいで就職出来ず、ニートになる。UDVの大敵はストレス。だが、社会のUDVへの対応は酷い有様で、まさに混迷しており、その怒りのストレスで、逝雄のゾンビ化はますます進行してゆく。逝雄の父・浩止と母・冥子は、息子を守るべく奮闘する。妹・消子は、兄を思い、献身的に尽くす。恋人の茜、友人の面井や同級生の矢白が関われば関わるほど事態は混乱し、ストレスを増加させていく。けれども、逝雄には希望の光があった。それは担当のナース・桜井の笑顔。世間の風あたりはますます厳しくなっていくが、赤星家は家族一丸、立ち向かう。しかし、ユキオのUDVのレベルはどんどん上がっていくのだった。
古泉智浩(こいずみともひろ)
1969年生まれ。新潟県出身、新潟市在住。専修大学にて心理学を専攻。剣道二段、空手七級。趣味、映画鑑賞・ラジオ鑑賞。1993年、ちばてつや賞大賞受賞でマンガ家デビュー。2005年「青春☆金属バット」が熊切和嘉監督により映画化。2009年に自伝的作品「ワイルド・ナイツ」が発売。2012年「ライフ・イズ・デッド」が菱沼康介監督により映画化、さらに「渚のマーメイド」が城定秀夫監督により映画化。2月7日に発売される漫画アクション4号(双葉社)には、「ライフ・イズ・デッド」の映画化を記念して、ヒガリノとの対談および同作の外伝「日本一スカートの短いゾンビ」が収録される。
荒井敦史(あらいあつし)
1993年5月23日生まれ。18歳。埼玉県出身。第21回JUNONスーパーボーイコンテストにて、ビデオジェニック賞を受賞。若手俳優集団・D2に所属し、多方面で活躍する。公開中の映画「仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦 MEGA MAX」に湊ミハル役で出演。2012年春公開予定の映画「リアル鬼ごっこ4」では主演を務める。
ヒガリノ
1992年5月11日生まれ。19歳。沖縄県出身。プチョン国際ファンタスティック映画祭招待作品のゾンビ映画「セーラー服黙示録」にて、初主演を務めた。日本テレビ系にて毎週日曜午前8時から9時55分に放送されている、生放送情報番組「シューイチ」にレギュラー出演中。