奥浩哉「いぬやしき」

「GANTZ」作者がイブニングで新連載 山本直樹×奥浩哉の師弟対談

「GANTZ」で知られる奥浩哉が、イブニング(講談社)に発表の場を移し、新連載「いぬやしき」を1月28日発売の4号よりスタートさせる。また奥の師匠、山本直樹も「レッド」をイブニングで毎号連載する。

コミックナタリーではこれを記念し、2人の対談を敢行。師弟ともに同じ雑誌で連載することになった心境や、奥が山本のアシスタントをしていた時代の思い出話、同じデジタルでもまったく違う手法を執る2人の作画方法について、たっぷりと語ってもらった。

取材・文/増田桃子 撮影/坂本恵

 
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山本直樹×奥浩哉の師弟対談

マンガって、黒く塗れればどんな画材でもいいんだなって(奥)

山本直樹(左)と奥浩哉(右)。

──奥浩哉先生は山本直樹先生のアシスタントをされていたということで、今回は師弟対談と銘打ち、当時のお話からおふたりの関係などをお伺いできればと思っています。

山本直樹 いやー師弟って言っても、俺、何も教えてないよ(笑)。

──まずはおふたりの出会いについて聞かせて下さい。

奥浩哉 高校を卒業して、19歳くらいだったから……初めて会ったのは26、27年前ですね。

山本 僕がスピリッツで連載していた時に、編集さんに呼ばれてうちに配属になったんだよね。

 そうですね。高校のときに小学館で賞をもらっていて。

山本 いやー、あのときはひどかったよね(笑)。僕が一番ハードな思いをしていた時期。スピリッツとスコラと両方仕事を受けちゃってたんだよね。「メジャーから連載来ちゃったよー!」って舞い上がっちゃってさ。

 そうだったんですね。

山本 張り切って引き受けちゃったはいいけど、どうすんだ俺って(笑)。

──これはアシスタントを入れなければ、と。

山本 そうそう。奥くんともう1人と。

 あとヘルプみたいな感じで、飛龍乱先生が来てましたよね?

山本 そうだ! 飛龍先生にも手伝ってもらってたね。2人プラスα体制だった。

──どんな仕事場だったんですか?

山本 自分ちの一室を無理やり仕事場にしてたんで、仕事場ってほどの部屋でもなかったんだけど。四畳半のスペースで3~4人が作業するっていう、ひどい劣悪な労働環境でしたねえ。僕もアシスタントも(笑)。

 僕は山本先生のところが初アシスタントだったんで、こんなもんなんだろうなって思ってましたけど。

山本直樹

山本 これがマンガ家稼業なんだろうと。

 うん、完全に。なんの疑問も持ってなかったです。

──作業としてはどんなところを担当していたんですか?

 まあ普通に、背景とかベタ塗りとか枠線引いたり、アシスタント作業全般ですね。

山本 人物も描いてもらってたよ。奥くんはやっぱり最初から上手くて、ちゃんとできちゃうから。当時はまだまだアナログだったから、墨汁とかインクとかスクリーントーンとかを使ってね。カラス口もまだ使ってたっけ?

 カラス口は使った覚えないですね。

山本 ロットリングだった?

 いや、枠線はミリペンで引いてたんですよ。僕、それにすごく驚いて。それまでよくあるマンガ入門書とかには、「枠線はロットリングやカラス口で引きます」って書いてあったのに、ミリペンで描いていいんだ、と目から鱗で。

山本 当時はあんまりフェルトペン使うのってポピュラーじゃなかったんだよね。

 マンガって、とにかく黒く塗れればどんな画材でもいいんだなって(笑)。そういうのを教わりましたね。

──プロ仕様の描き方を教えてもらってたと。

 そのおかげで今僕は3Dを使ってるんだと思います。「最終的に線が取れればなんでもいいんじゃん」って感じでコンピューターを使い始めたので。

仕事場になんか変な人が来てる、と思いながら寝てた(奥)

──印象に残っている出来事はありますか?

山本 僕はあんま覚えてないなあ(笑)。ハードすぎて。

奥浩哉

 楽しかったですよ、僕は。初めてのアシスタントだったし、学ぶことも多くて、楽しくやらせてもらってましたね。

山本 僕はつらかった……。

 先生はつらいですよね。それは今ならわかります。

山本 ああ、「俺のマンガじゃねぇからいいや」って?(笑)

 そうそう。アシスタントは別に何も背負ってないので。

山本 僕、結構無茶振りしてたでしょう(笑)。

 無茶振りかはわかんないですけど……やっぱり徹夜作業が多かったのは大変でしたね。ホントに眠くて、気づいたら全然違う原稿にベタを塗ってたり(笑)。あと覚えてるのは、仕事場に変な人が訪ねてきたことがあって。

──変な人?

 僕が別の部屋で寝てたときに、「ピンポーン」ってチャイムが鳴ったと思ったら玄関が開く音がして、「いやあ、ここが仙川地下工房ですかー」って聞こえてきて。ウトウトしながら、なんか変な人が来てるな、と……(笑)。

山本 あったあった(笑)。昔そういうサークル名で同人誌を出してて、奥付に住所を晒してたんだよね。同人誌を買ってくれたオタクさんがいきなり来たんだよ。

 僕はすっごい眠かったんで、頭の片隅でなんか来てるなーと思いながら、意識が遠くなっていったっていうのをすごく覚えてます(笑)。あれ、結局どうなったんですか?

山本 僕が普通に対応したよ。別にそんな危険な人じゃなかったし。

マニアックなビデオ借りてきて、仕事場で流したり(山本)

──奥先生がアシスタント時代に、山本先生から一番影響を受けたことってなんでしょう?

 僕は元々、大友克洋先生とか池上遼一先生とかが好きだったので、ああいう劇画路線を目指してたんですけど。山本先生のところに入って少し方向性が変わったんですよね。

山本 メジャーではなくてサブカル的な。

 山本先生の家って、本棚に読んだことないような本がたくさん置いてあって。それを読ませてもらったり。マニアックな話もよく聞かせてもらっていたので、わりとそういう部分で影響を受けていると思います。どメジャーみたいなものは元々好きだったから、マニアックなものを知って、結果ちょうどいい塩梅になったなって、あとから思いましたね。

山本 マニアックなビデオ借りてきて、仕事場で流したりしてたもんな。

 そうですね。「エル・トポ」とか、あと「まぼろしの市街戦」とか……。

山本 「フォービドゥン・ゾーン」とかね。同じのを延々と流してたりして。

 とにかくヘビーローテーション気味に。

山本 奥くんは当時から映画もよく観てたよね。昔から映画好きだったの?

 僕は高校の頃までは、映画よりアニメが好きだったんですよ。映画はテレビでやってるのを観てたくらい。高校卒業して、ちょうどアシスタントをやり始めた頃に、レンタルビデオ屋が普及してきて、自分のお金で会員になって。

山本 ああ、安くなり始めた時期だよね。

 10本1000円とか、借りれば借りるほど安くなる感じだったので、ガンガン観てましたね。仕事が終わったら速攻ビデオ屋寄って借りて、1日10本とか観てました。楽しくてしょうがなかったですね。いまだに映画は好きで観ますけど、レンタルビデオ屋のおかげで映画の地平がバッと開けたんだと思います。

「いぬやしき」連載開始直前企画!トリビュートイラスト「わたしのいぬやしき」収録

参加作家
雨隠ギド、上条明峰、木多康昭、久保保久、鈴木央、濱田浩輔、Boichi、真島ヒロ、山本直樹、山本英夫、よしながふみ

「いぬやしき」連載開始直前企画!トリビュートイラスト「わたしのいぬやしき」

「イブニング 2014年4号」 2014年1月28日発売 / 講談社 / 350円

奥浩哉の新連載「いぬやしき」スタート!

奥浩哉(おくひろや)

奥浩哉

1968年9月16日福岡県福岡市生まれ。山本直樹のアシスタントを経て、1988年に久遠矢広(くおんやひろ)名義で投稿した「変」が第19回青年漫画大賞に準入選、週刊ヤングジャンプ(集英社)に掲載されデビューとなった。以降、同誌にて不定期連載を行い、1992年よりタイトルを「変 ~鈴木くんと佐藤くん~」と変え連載スタート。同性愛を題材とした同作は道徳観念を問う深い内容で反響を呼び、1996年にはTVドラマ化されるヒットを記録。マンガの背景にデジタル処理を用いた草分け的存在として知られ、2000年より同誌にて連載中の「GANTZ」はCGを駆使した緻密な作画とスリルある展開で好評を博し、アニメ、ゲーム、実写映画化などさまざまなメディアミックスがなされた。 2014年よりイブニング(講談社)にて「いぬやしき」の連載を開始する。

山本直樹(やまもとなおき)

山本直樹

1960年2月北海道生まれ。早稲田大学教育学部国語国文学科卒。大学4年生の時に小池一夫主宰の劇画村塾に3期生として入門しマンガ家を志す。1984年に森山塔の名義で自販機本ピンクハウス(日本出版社)にて「ほらこんなに赤くなってる」でデビュー。同年、山本直樹名義でもジャストコミック(光文社)にて「私の青空」でデビューした。森山塔のほか塔山森の名義でも成人向け雑誌や青年誌などで活躍。1991年には山本直樹名義で発表した「Blue」の過激な性描写が問題となり、東京都条例で有害コミック指定され論争になった。1992年、石ノ森章太郎が発起人となり結成された「コミック表現の自由を守る会」の中核として活発な言論活動を行いマンガの表現をめぐる規制に反対。その後も作風を変えることなく「YOUNG&FINE」「ありがとう」「フラグメンツ」など数々の問題作を発表した。早くから作画にコンピュータを取り入れ、生々しさをともなわない硬質な筆致から女性ファンも多い。その他の代表作にカルト教団の心理を題材にした「ビリーバーズ」、連合赤軍の革命ドラマ「レッド」など。またマンガ・エロティクス・エフ(太田出版)のスーパーバイザーを務めている。