ナタリー PowerPush - みうらじゅん&いとうせいこう

見仏記コンビが語る「ザ・スライドショー」

DVD「みうらじゅん&いとうせいこう ザ・スライドショー 12+11」が発売された。みうらじゅんといとうせいこうのユニット「ロックンロール・スライダーズ」によるトークイベント「ザ・スライドショー」のDVD最新作だ。

本作には、昨年2012年に東京・渋谷公会堂にて開催された公演の模様を収録。「見仏記スペシャル」と銘打たれたこの公演は、2人のライフワークとも言える「見仏記」の取材開始20年を記念したものでもあり、仏像関連のスライドが多く盛り込まれている。

さらに、したまちコメディ映画祭でのシークレット公演「ザ・スライドショー11」の模様もダイジェストで収録。こちらは映画をテーマにしたスライドとトークが楽しめる。お笑いナタリーでは、本作をリリースしたばかりの2人にインタビューを敢行し、その出会いからお互いへの熱い思い、「スライドショー」の変遷とその現状、展望などをたっぷり語ってもらった。

取材・文 / 成田邦洋 インタビュー撮影 / 辺見真也

いとうせいこうは最強のツッコミ

左からみうらじゅん、いとうせいこう

──まずはお2人の出会いからお聞かせください。1992年に雑誌連載がスタートした「見仏記」が初対面でしょうか?

いとう それより前に、僕がやっていたスペースシャワーTVの番組にみうらさんが来て、話したら意気投合したんだよね。冗談がよく通じた。

みうら 当然いとうさんの存在は知ってたんですけど、まったく別ジャンルの人だと思ってたんです。

いとう それから、みうらさんから誘いがあって「うちの事務所に来ないか」と。

みうら 怪しいよね。日曜の午後から仕事でもないのに2人で部屋が真っ暗になるまで、電気もつけないで喋ってました(笑)。

──そのときはどんなお話を?

みうら いろんな話題が出たんですけど、最終的に仏像の話題になったんですよ。

いとう 途中から、みうらさんが仏像のスクラップブックを持ち出して。その場で俺がスクラップを見ながら「なんだこの俳句! 季語ねーよ!」とかツッコんだんです。

みうら そのツッコミは今でもまったく同じ。20年前のあのときとね(笑)。

DVD「みうらじゅん&いとうせいこう ザ・スライドショー 12+11」の一場面。

いとう 当時は“スクラップというスライド”があったわけだよね。「理解してるけど、あえて否定する」というスライドショーの芸はすでに完成されてた。

みうら いとうさんが元・編集者だから、レイアウトとかにもツッコんでくるからね(笑)。

いとう みうらさんは自分のことをツッコミだと固く信じてそれまでやってきたんだけど、あのスクラップを見せたときから、まぁ転がされる転がされる(笑)。どこまで追い詰めても逃げて逃げて、なおもボケ続けるありさまに天才を見ました。

みうら ツルツルすべる“ボケうなぎ”だからね(笑)。そこは最強のツッコミを得たから初めてわかったことでさ、自分であって自分じゃないような状態とでも言うかさ。

ブームを作るのはスライドショーをやるため

──スライドショーにはさまざまな思い出があると思います。

みうら 昔は実際にスライド機を使っていたんで、入るネタ数の上限が80枚って決まってた。今はそれがデジタルになって、よくわかんないことになってきた。

いとうせいこう

いとう またスライドショーをやっていない間は、2人で見仏してるんだよ。そこの変わり身が、飽きずにできている理由ですかね。

みうら 見仏に行っても、俺が何か写真を撮ってるときは、いとうさんは見てないフリするから(笑)。「その場でツッコむと面白くない」と思って、泳がしてるんだよね、俺を。

いとう みうらさんのほうから“熱風”が来るんです。「なんか見つけてる!」って(笑)。そこからは顔をそむけるね。

──スライドの内容や質にご自身で変化は感じますか?

いとう 最初は「VOWネタ」が多かったんだけど、あるときから、みうらさんがVOWネタをやめちゃうんだよね。とんでもなく難解なものを始める。

みうら 「俺のシリーズ」くらいからね。

いとう それからは、まったくほかの人ではマネできない笑いになっちゃった。

みうら 本当はウケないほうが面白いのかもしれないね(笑)。ウケるってのはパッと観たらみんな笑えるけど、いとうさんとは、もうそれじゃなくなってきてるから。失笑くらいの寸止めがおかしいんだよね。

いとう みうらさんがとにかく興味のあるものを僕にぶち当ててくる。泥団子みたいなものを(笑)。

みうら 俺はいとうさんを鬼だと思って投げてます(笑)。

いとう ツッコミとして、すごくテクがいるんですよ。わけのわかんないことを客に説明しつつ、みうらさんにも怒らなきゃいけない。まず出してるものが何であるかを一瞬で理解しなきゃいけない。

みうら いやぁ、大変だと思いますよ。

みうらじゅん

いとう ゆるキャラも、今は普通に全国的なものにはなってるけど、最初は「なに見つけだしたんだよ!」っていう笑いだったもんね。

みうら ゆるさの感覚が、今は使い方が違ってるもんね。

──スライドショーをきっかけに、みうらさんのブームも独自の進化を遂げていったわけですね。

みうら 途中から無理やりブームを作っていかなきゃいけなくなって(笑)。早くスライドショーはしたいし、いとうさんにも会いたいけど、そのためにはまずブームを作らなきゃいけない。天狗とか、たいして興味ないのにさ(笑)。

いとう がんばってる感じがおかしいんだよね。どこかの山に行ってるとき、森の中に赤い建造物があったんだけど、その途端、みうらさんが写真をバシャバシャ撮り始めて。頭の中に天狗のことがあるから、もう「赤い!」ってだけで、それで撮っちゃう。

みうら いとうさんに「これ天狗の影響でしょ?」なんて言って「天狗じゃねーよ!」ってツッコまれるためにね(笑)。

左 / みうらじゅん(1958年2月1日生まれ、京都府出身)

右 / いとうせいこう(1961年3月19日生まれ、東京都出身)

1992年に見仏記コンビを結成し、雑誌連載を開始。1996年に満を持して「ロックンロール・スライダーズ」を名乗り、スライドを使ったトークイベント「ザ・スライドショー」をスタートさせた。ザ・スライドショーは、これまでに原宿ラフォーレ、渋谷公会堂、日本武道館、NHK大阪ホール、仙台市民会館など全国で行われている。なお、みうらは、4月18日(木)より5月14日(火)まで、大阪・梅田ロフト 7Fロフト・フォーラムにて「国宝 みうらじゅん いやげ物展」を開催する。