笑福亭鶴瓶の「無学 鶴の間」|鶴瓶がシークレットゲストと共に送る生配信番組を徹底レポート。第23回ゲストは石原良純。 (12/24)

「無学 鶴の間」第11回レポート

笑福亭鶴瓶×紅しょうが(2023年3月4日配信)

弟子・笑福亭笑瓶を送る「ええヤツやった」

「無学 鶴の間」は、ゲストを迎える前に笑福亭鶴瓶1人が、ステージに上がり、話す時間がある。日常に実際に起きたことの中から、人間の可笑しみや縁の不思議を掬い上げて話す約10分間のトークは、日常を面白がることで、それが積み重なってできていく人生の豊かさを教えてくれる。特に、同じ場所で毎月開催される会ゆえ、鶴瓶のその時々の話は、日々のドキュメントにもなっている。1カ月前とは違う「今」の話が織り込まれるからだ。

この日鶴瓶は、「何の話しようかなと思ってね」、そう切り出し、「笑瓶が死んだでしょ。だけどそんな話から入ったって暗いやんか」と苦笑した。

2月22日、鶴瓶の一番弟子、笑福亭笑瓶が急逝した。「無学 鶴の間」9回目にあたる昨年12月の生配信の日、「事始め」で笑福亭鶴瓶一門が集まったと話していたばかり。鶴瓶がどれほどの悲しみの中、故人を送り出したかは窺い知れないが、その後すぐに出した追悼コメントや葬式での弔辞からは、師匠と弟子、そしてそれを越えた2人の絆がひしひしと伝わった。

笑福亭鶴瓶

笑福亭鶴瓶

「歳も近かったからね。どっちかと言ったら俺のほうが早いわけでしょ、ほんまは。あいつが先に逝くからやね。俺も弟子の葬式出したことないしね」

家族も弟子たちも突然のことでうろたえた、と鶴瓶。「でも、慌ててるとすごくおかしいことありますよ」。そう言い、葬式までの周りの様子を、笑いを交えながら話していった。

「ほんまに葬式ってオモロいですよ。面白い、と言ったら、笑瓶も喜びよるやろうからね」

人生は完結することで、初めてその人がどう生きてきたかが明らかになる。ここ数週間、笑瓶と関わってきた多くの人たちが思い出を語り、そして、あらためて、笑福亭笑瓶の優しい人柄を伝えた。

「自分の弟子ですけど、ええヤツやったから。やっぱりものすごく可愛がられていたね。死に様が生き様みたいなところあるよね。ああいうのを見て、ああ、一生懸命がんばって生きよったんやなと思うわ」

鶴瓶はそう続けた。

「俺よりも先に東京行ったからね。俺が東京行けと言ったんや。松竹芸能にいてもあかんで、絶対売れへんでって。俺は松竹芸能ですけどね(笑)。俺は俺でなんとかやるけど、あいつはできるやろと思ったから、行けと言ったんです」

笑瓶は太田プロに所属し、太田プロ所属の芸人の方々はもちろん、プロダクションを越えて、明石家さんまにも可愛がられ、ダウンタウンからも慕われたと鶴瓶。

「そういう意味では、好かれるってすごいことだと思いますね。僕はやっぱり芸人が好きなんですよ」。そう言い、今回のゲストのことへと話を続けた。

笑福亭鶴瓶

笑福亭鶴瓶

汗だくの漫才に鶴瓶「すごいなぁ!」

「今回呼んだのも、僕が大好きな芸人です。あまり知られてなくても、俺がオモロいと思う人を呼びたいと思ったんです。こいつら、まあ、オモロいですよ。女の人2人組です。あんまりそばで見たら、卒倒するかもわかりません。迫力ありますからね。覚悟はいいですね。無茶苦茶ですよ、この人らは」

「あまり知られていない芸人」という体(てい)で紹介した鶴瓶だが、「紅しょうがです」とそのコンビ名を呼び、勢いよく2人がステージに現れると、大きな拍手が湧いた。「ありがとうございます!」と熊元プロレスの顔がほぐれ、稲田美紀が「ちなみに知ってるよ、という方はどれくらい?」と呼びかける。すると、観客のほとんどが挙手をした。

鶴瓶も顔を出し、「すごいなあ。俺、知らんと思ってた。でも1回出たら強烈やから、覚えるんやな」とうれしそうに笑った。

紅しょうが

紅しょうが

実際、紅しょうがは現在、関西を中心にテレビ、ラジオで活躍中のコンビ。お笑い賞レースのひとつ「女芸人No.1決定戦 THE W」では、4度の決勝進出を果たすなど、その実力はお笑い好きなら誰しも知るところとなっている。とはいえ、まだ全国区ではなく、だからこそ、まずは2人の面白さを知ってもらおうと、鶴瓶は一旦ステージを去り、2人の漫才から会をスタートさせた。

ネタは「将来結婚して子供ができたときのために子供との接し方を練習する」というテーマで展開。どうあやしていいかわからず、背面キャッチしてみたり、ミルクを飲んだ赤ちゃんより先にゲップをしたり、持て余す母性がどうしようもなくなり駄々をこねたりする熊元のボケが次々と畳み込まれ、それを冷静に、そして少し呆れ気味にツッコむ稲田の口調も面白く、どんどん2人の世界に引き込まれていった。

そして最後は「トンネルごっこしよ!」と、熊元が大きな身体を横たえて、迫力満点のブリッジ。さらには、汗だくになりながら「シュシュポッポシュシュポッポ、ハイハイハイハイ!」と汽車の真似をする熊元の声に、観客が手拍子をつけ、なぜか会場に一体感が生まれていくという不思議な現象が起こる。「99kgのブリッジ、きついきつい!」と稲田が笑うも、キャラを生かした熊元のボケがなんとも言えない可笑しみを誘い、観ていた鶴瓶も一言、「すごいなあ!」と、2人の笑いを讃えた。

紅しょうが

紅しょうが

紅しょうが・熊元プロレス

紅しょうが・熊元プロレス

昼のインドカレー店でコンビ結成

鶴瓶 2人が組んだ理由はどんなところからなの?

稲田 お互い組んでいたコンビが解散して、それで女の子で探していたんですよ。ゆりやんレトリィバァが熊元さんの同期で、ゆりやんに「いい子おる?」って訊いて紹介してもらったんです。

熊元 稲田さんは先輩なんですよ。2年先輩。

稲田 そのときの芸名なんやったかな?

熊元 そのとき「女房熊元」っていう名前でやってたんですよ。

鶴瓶 女房熊元!!

稲田 結婚してないのに、ややこしいんですよ。

熊元 その前に「肩ロースゆりえ」っていう名前でやってて。

鶴瓶 肩ロースゆりえ!!

熊元 もともとお肉屋さんでバイトしてて、お肉の知識があったので、肉の漫談で売れるぞっていう気持ちで「肩ロースゆりえ」にして。ゆりえは本名なんですけど、ゆりえは可愛すぎるなと思って、名字の熊元に変えようと思って、漢字のバランスで「女房」が合うなって。

笑福亭鶴瓶と紅しょうが。

笑福亭鶴瓶と紅しょうが。

稲田 それでTwitterのダイレクトメッセージ送って、「ご飯行きませんか?」って、ランチにカレーを食べに。

熊元 最初に先輩から「ご飯行かへん?」って連れて行ったところがインドカレーの店やったんですけど、1発目インドカレーかぁ、って思って。だいたい、コンビの話し合いするときって、夜、居酒屋とかなんですけど、昼間、インドカレーの店。しかも私、家のカレー以外、苦手なんですよ(苦笑)。

鶴瓶 (見るからに食いしん坊キャラの熊元に向かって)え、苦手なもんあんの?

稲田 全部食べろよ、と思うんですけど。

熊元 辛すぎるんです。でもいろいろ頼んでもらって。稲田さん、めっちゃ姉御肌なんで。

鶴瓶 稲田はあっさりしてるもんな。

稲田 あっさり?

鶴瓶 サバサバしてる。ヒコロヒーと親友やんな。

稲田 ああ、すんません、すんません。

鶴瓶 言い方、おっさんやん(笑)。だいたいこういうコンビはな、熊元のほうがおかしいと思われがちですけど、稲田のほうがたぶんおかしいと思う。

熊元 (うれしそうに)ありがとうございます。その通りです!

稲田 (冷静に)そんなことないですよ。

鶴瓶 いや、おかしい!

笑福亭鶴瓶と紅しょうが。

笑福亭鶴瓶と紅しょうが。

ナンをちぎりながら苦手な辛いカレーを食べる熊元に、稲田は「コンビ組まへん?」と持ちかけ、その日にコンビ結成。

「2人は合うてるよ。紅しょうがという名前もいいよね」と鶴瓶は言い、「俺、紅生姜、めっちゃ好きやねん」と、好物だという紅生姜の天ぷらのおいしさを力説するも、申し訳なさそうに熊元がつぶやく。

「師匠、私、紅しょうが、食べれなくて……」

その間と表情に、観客がまた笑う。

紅しょうがにしか話せない日常の面白さ

熊元 私、ネタ合わせのときとか、結構遅刻が多いんです。

鶴瓶 そりゃ、あかんやろ。時間に来なあかんと違うの?

熊元 そりゃもちろん、脳ではそのつもりで。

鶴瓶 遅刻するの、一番嫌いやわ。

稲田 (笑)。

熊元 ……師匠、私だけ、時空が違うくて。

鶴瓶 なんでやねん。

熊元 でもね、仕事は1回も遅刻したことはないんです。

稲田 それ、めっちゃ腹立つんですよ。ネタ合わせにはめちゃくちゃ寝坊してくるのに、仕事はちゃんと来る。

鶴瓶 それおかしいやんか。

稲田 おかしいやろ!

鶴瓶 (稲田に)ガラ悪すぎ、ガラ悪すぎ(笑)。で、なんで起きられへんの?

熊元 起きてはいるんですけど……。

鶴瓶 起きてんの? 起きてるんやったら、起きぃ!

稲田 「起きてるんやったら、起きぃ!」名言!

熊元 起きてはいるんですけど、ギリギリになって鍵がないとか、ヘアアイロンとかの電源をもしかして切ってないんじゃないかで見に帰ったりとか、見に帰ったとき、また鍵を置き忘れたり……。

笑福亭鶴瓶と紅しょうが。

笑福亭鶴瓶と紅しょうが。

鶴瓶 まず何分前に起きんの?

熊元 ネタ合わせが12時からやったら、11時35分とか。

稲田 男子の時間やん。

熊元 普通だったら間に合うんですけど。

稲田 でも愛嬌あるから許されるんですよ。うらやましいなと思いますよ。

熊元 愛嬌あるとは私は思ってないですよ、そんなふうには! 愛嬌あるから許されますよね、とは思ってないですよ! それはこっち側が思ったらいけないことやから。

鶴瓶 ふふふ。でも、どっかにそういう気持ちがあるやろ?

熊元 もちろんそんなつもりはないです! ただ、ただ……。

鶴瓶 第一声はどう言うねん。

熊元 「お待たせしましたよね~?」

稲田 むっちゃ腹立つんですよ。こっちに訊いてくるの。でも笑てまうんで、まあいいよってなるんです。笑かしてもらったらいいので。

紅しょうが・稲田

紅しょうが・稲田

「笑かしてもらったらいい」という稲田の言葉に、コンビの信頼感が見て取れる。一緒にネタを作る2人は、ネタのことでもとことん話し合うが、お互いプライベートのことも隠し事はないという。

話はその後、2人の恋愛事情へ。鶴瓶が「どういう話すんの?」と訊けば、どこか言いにくそうな雰囲気の熊元が、「あの……ちょっと……ホストクラブというところに行ってるんですけど」と、そこで出会ったホストとのやりとりを話し出す。

一方、稲田は「お母さんが34万払って申し込んだ本格的な結婚相談所」を通して、お見合いで男性5人とそれぞれ会ってどれもうまく行かなかったと話し、また、マッチングアプリで知り合った人とのクリスマスデートでの悲しい思い出など、ここ数年の出来事をさらけ出す。

「基本、ツライ経験が多いです。立ち直るのに、大黒摩季めちゃ聴きましたよ!」と稲田。しかし、その1つひとつのエピソードがこういうトークに生かされ、それが見事に笑いに昇華されていくところはさすが。

「だから、そういうのも経験としてすごいよね。女の芸人はすごいよ。相手がいることなので、ネタにするのは悪いけど、経験としては言えるもんな」と鶴瓶。それこそ、2人にしか話せない日常の面白さにほかならない。

浜崎あゆみ本人からの相談でPV出演

そしてそこから、浜崎あゆみのPVに熊元が出演しているという、嘘のような本当の話へ。きっかけは、今年1月、熊元が自身のTwitterに浜崎のモノマネ動画を投稿したこと。その動画に浜崎本人がリアクションし、SNS上で話題になったことがあったという。


熊元 そしたらInstagramのダイレクトメッセージに「浜崎あゆみさんがメッセージを求めています」という通知が来たんです。そのとき、ご飯屋さんで飲んでいたんですけど、「え! 浜崎あゆみがメッセージを求めている?」ってなって。

稲田 ハハハ、そんなことないわなあ。

熊元 でも、見たら、私もともとファンなので、フォローしているアカウントで、本人からダイレクトメッセージが来て、「熊元プロレスさんにご相談があるのですが」と書いてあったんです。

鶴瓶 え?

熊元 浜崎あゆみが熊元プロレスにご相談!?

鶴瓶 ワハハ!

稲田 誰からも相談されないのに!

熊元 私、友達とかにも相談されたことないんですよ。あゆだけが!

鶴瓶 (笑)。

左から紅しょうが・熊元プロレス、笑福亭鶴瓶。

左から紅しょうが・熊元プロレス、笑福亭鶴瓶。

そのPVは、浜崎に代わって、表参道を歩きながらリップシンク(口パク)で「Just the way you are」を情熱的に歌い上げる熊元プロレスの姿が最初から最後まで映されている。「熊元さんしか映ってないんです。あゆは1秒も映ってないんです」と稲田。「え、それ、誰が見るねん」と鶴瓶がツッコむと、「歌はめっちゃいいんです。でも、あゆの歌を熊元さんから聴く、という状況やったんで、こんがらがりました」と稲田。

「でも熊元を使うってええセンスやなあ」と鶴瓶が言う。熊元も「ずっと好きだったから本当にうれしかったですね」と夢のような時間だったと語り、そうやって引き寄せる力もまた、彼女たちの魅力だろうと思えた。

我に返って頭を抱える

この「無学」から番組「A-Studio+」が生まれたことは、鶴瓶自身、何度か「無学 鶴の間」でも話している。毎回、鶴瓶は呼ぶゲストのことを調べ、その上でトークに臨む。もちろん紅しょうがについても直前まで調べていたが、上がってくるエピソードがやはり「芸人」のそれ。「お前、自転車盗られたんやな」と熊元に話を振ると、そこから話は膨らみ、さらに予想を越えた熊元のユニークさを知ることに。


熊元 大晦日に、よしもと漫才劇場のライブ終わって、帰宅しようと駐輪場に行ったら自転車がなかったんですよ。大晦日になんで盗るねん、とめっちゃムカついたんですけど、その日、昼間、急いでて、トイレ間に合わへんで、ちょっとだけサドルを濡らしてしまったんですよね。

鶴瓶 「ちょっとだけ」って、そんなん難しいやん、サドル濡らすいうの。

熊元 でも急がなあかんと思って、ビシャビシャじゃないですけど……、あ、効果音出すのよくないですね(笑)。でも盗ったヤツ、ザマーミロ!と思って。そんな汚いサドルを何も知らずに乗ってると思ったら!

稲田 熊元さん、お漏らしばっかりやん。

鶴瓶 元オセロの松嶋がそうや。こないだも「きらきらアフロTM」の収録終わって、「今やから言えるんやけど、ずっと屁してた」って。なんのことやねん!

熊元 師匠、気づかなかったんですか?

鶴瓶 気づかなかった。パパパパパッてなってたんやろな(笑)。なんでそんな報告聞かなあかんねん。

笑福亭鶴瓶

笑福亭鶴瓶

熊元 笑い声とかに紛らわせて。

稲田 熊元さんもずっと我慢してるんですよ。

熊元 1回、ロケ終わりで、京都からバス乗ってゆりやんと一緒に帰るってなってたんですけど、渋滞に巻き込まれて、私が途中からトイレやばいってなったんです。それで、ゆりやんが「でかい声で歌うたおう」って、B’zさんの歌を流して2人で大声で歌って気を紛らわしたりして。それで、ゆりやんは帝国ホテルで営業があったのですが、帝国ホテル着いて、私は漏らさないようにズボンを引っ張り上げて、広いロビーをうわーってダッシュしながら、「ゆりやん! 私の仲間と思われないように離れて離れて!」って。

鶴瓶 どんな団結や(笑)。それはセーフやったん?

熊元 はい。私は「床を汚さない」がセーフなので。

稲田 ブーツに染み込ませるというのもセーフらしいですよ。

鶴瓶 どういうことやねん。

熊元 それは、家に帰ってトイレに行こうと思って帰り着いたら鍵がなくて、やっと行ける!って思ったのに、もうあかん!ってなった瞬間に出たんですけど、ムートンブーツというフワフワの茶色いブーツ履いてて、ちょっといいムートンブーツやったんで、すっごい吸収してくれて。全部出し切ったんですけど、一切、床汚れんかったんです。

鶴瓶 ワハハ! 素晴らしいなあ。ムートンは?

熊元 ムートンはすごい状態。洗えない靴なんですけど、でもちょっと拭いて乾かしたら、一切臭いもなくなった。無臭です。だから今もたまに履いてはいます。

鶴瓶 え、履いてんの?

熊元 はい。結構高かったんで。

鶴瓶 へえ(笑)。

熊元 え、私、汚すぎる!(我に返って頭を抱える) これって、配信、長い期間残していただけるんですよね。

鶴瓶 そうそう(笑)。

笑福亭鶴瓶と紅しょうが。

笑福亭鶴瓶と紅しょうが。

芸人って絶えずそんなこと考えてるんやな

そして再び、漫才の話題へ。よしもとは、大阪に、笑いの聖地とも言える「なんばグランド花月(NGK)」と、大阪の若手の芸人のための「よしもと漫才劇場」という劇場を持っており、紅しょうがは、そのどちらにも出演している。鶴瓶が「劇場って難しいやろ? どんなお客さんかわからへんから、笑わせるのって大変やんか」と切り出すと、2人ともに深くうなずいた。


稲田 なんばグランド花月とよしもと漫才劇場のお客さんは全然違うんです。NGKは、正直むちゃくちゃスベります。ウケたことないです。昼間の公演は。

鶴瓶 NGK、俺はよく出させてもらうけど、でも、俺らにはあったかいよ。

稲田 それは師匠を観にきてますから。

熊元 (NGKで笑い取るのは)やはり夢というか、NGKって、今、若手もチャンスもらえるので、トップの出番とかで出させてもらうことができるので。

鶴瓶 スベるの?

稲田 めちゃくちゃスベります。

熊元 さっきやらせてもらった漫才をNGKでやったことがあるんですけど、ブリッジしたときに、今日は手拍子してくれたんですけど、そのときはめちゃくちゃスベッて、みんなのドン引きしている顔を逆さから見るという。あれは忘れられない光景です、ほんまに。

鶴瓶 (笑)。

笑福亭鶴瓶と紅しょうが。

笑福亭鶴瓶と紅しょうが。

稲田 スベっているときのブリッジな。

熊元 距離も近いので、最前列の悲しそうな顔が。「がんばってるねえ」みたいな。

稲田 爆笑はやっぱり難しい。

鶴瓶 爆笑はどこやねん。これは来たなっていうのは。

稲田 漫才劇場や賞レースは若い方も多いし、お笑い好きな人が多いので。

熊元 でも営業は難しいですね。私らが持っているエピソードで、お子さんがウケる話が1個もない……。


そういう悩みを抱えつつも、最近子供にもウケるだろうと思える特技を見つけたという熊元。「やってみて」と鶴瓶が促すと、「“う”の口で“え”と言う人」というネタを披露。「う」を言うかのような表情で、そこから音声として出すのは「え」、という奇妙な技だが、それより何より、身体を少し前に傾け、目を見開き、なんともマヌケな顔つきで「え」と声を出す熊元の表情が面白く、会場は大爆笑。

「ウケるで、これ。みんな笑てはるやん」と鶴瓶もうれしそう。ほかに「“す”の口で“き”」や「“え”の口で“ど”」など、鶴瓶や会場のリクエストにも応えていけばいくほど、笑いがどんどん織り重なっていく。

「だんだん頭おかしなっていくわ。でも芸人って絶えずそんなこと考えてるんやな」と鶴瓶。「じゃあ、最後にネタをもうひとつ」と漫才を促した。

一旦、舞台からはけ、再び呼び出されて2人が登場。1回目のときは「会場に男性が多かったので言えなかった」という熊元の「女子~!」がここで炸裂。「めちゃくちゃ春やで~! そろそろリボンつけ始めや~」。その大声で叫ぶニコニコの顔がまた絶妙で、それがツカミとなってネタに突入。

紅しょうが

紅しょうが

テーマは「いい女の条件」。2人とも1回目よりもリラックスしている印象で、観客も、鶴瓶とのトークを経て、それぞれのキャラをより知った上で観る紅しょうがの漫才に、爆笑が続いた。

鶴瓶は、最後、あらためて2人に言った。「次も賞レースはまだ出るんやろ? 今年はぜひ獲ってほしいと思います。応援してます」

鶴瓶は冒頭で、人に好かれることってすごいことだと、そう言った。芸人は、そうやって周りの人たちに愛され、大きくなっていく。それは、「僕が好きな芸人です」と呼び込んだときの鶴瓶の言葉にも込められていた。実際、1回目の漫才よりも、2回目の漫才は、会場の笑いは大きく、その上で、紅しょうがを好きになった人たちのあたたかい笑いだったように思えた。

「無学 鶴の間」11回目のゲストは、関西でその実力を伸ばし、この春から次なる舞台を東京へと移し、全国区へ活動の場を広げていく、お笑いコンビ「紅しょうが」。2人がこれから織りなす笑いに、期待しかない。

笑福亭鶴瓶と紅しょうが。

笑福亭鶴瓶と紅しょうが。

紅しょうが

紅しょうが

第11回(2023年3月4日配信)
笑福亭鶴瓶×紅しょうが

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プロフィール

笑福亭鶴瓶(ショウフクテイツルベ)

1951年12月23日生まれ。大阪府出身。1972年、6代目笑福亭松鶴のもとに入門。以降、テレビバラエティ、ドラマ、映画、ラジオ、落語などで長年にわたって活躍している。大阪・帝塚山の寄席小屋「無学」で、秘密のゲストを招いて行う「帝塚山 無学の会」を20年以上にわたって開催してきた。

紅しょうが(ベニショウガ)

1990年生まれ、兵庫県出身の熊元プロレスと、1989年生まれ、大阪府出身の稲田美紀が2014年に結成。「女芸人No.1決定戦THE W」では、4回決勝進出し、2020年には準優勝。この春より、東京に拠点を移し、活動の幅を広げる。

2024年4月22日更新