お笑いナタリー Power Push - 稲川淳二×ダイノジ大谷

ライブツアー「稲川淳二の怪談ナイト」23年連続公演決定! ダイノジ大谷が聞き出す稲川流・怪談の極意とは?

怪談は我々のすぐ後ろに存在している

──怖い話には怪談のほかにもホラーなどいろいろジャンルがありますが、稲川さんが思う怪談の素晴らしさとは何でしょうか?

左から稲川淳二、ダイノジ大谷。

稲川 よく「怪談を科学する」みたいな企画がありますけど、怪談はむしろ民俗学なんですよね。因習や生き方を話すこともあれば、生活にこびりついてるものが怪談にしみこんでいたりもする。ホラーっていうのは襲ってくる恐怖なんです。突然建物の中で起こるような。怪談は、なにげない自分のいる場所が意外と怖い場所だったりする。我々のすぐ後ろに存在してるんです。

大谷 稲川さんの怪談には、「怖い」だけとも違う、味わったことのないものがありますよね。

稲川 ただ怖いだけじゃ寂しいんですよ。そこには思いやりや悲しさがある。怖いと思うのはこっちの勝手で、角度を変えたら、そうではないかもしれない。

話の破片を集めて1つの怪談にする

──「怪談ナイト」の話をお聞きします。セットも毎回ものすごくこだわってますよね。

大谷 完成度がすごい!

稲川 うちのプロデューサーが真剣にやってくれてるんですよ。がんばっててすごいんです。裏の見えないところまで作りこんでる。夢中でやってるんじゃないですか。以前はね、どういう話になりますか?って事前にあわせてセットを作ってたんだけど、最近は無理。ライブが始まるギリギリまで、話をあれにしようこれにしようって迷うから。要するにこういう怪談ジジイがいて、その場所にみんなが集まる雰囲気があって、じゃあこの傾向でいこうと。だいたいうまく合うんですがね。

ダイノジ大谷

大谷 地方に行くと、その地方ならではの話って耳に入ってきたりします?

稲川 地方はね、同じ話をしていてもウケ方が違う。怪談ツアーも23年目を迎えるわけですが、その土地のにおいってのがありますよ。土地によってそれぞれ怖い話があって、それに近い話になるとノリが違ってくる。

大谷 ライブ前にその土地の人に話を聞いたりするんですか?

稲川 いや、ライブじゃないときに会いに行きます。話を持ったおじいちゃんのところに行くと「偶然なんですが不思議な話があるんです」っていろいろ教えてくれる。でも、ずいぶん死んじゃってね。今回はしばらくぶりに、80歳を越した人がツアーに来てくれそうなんですよ。

大谷 たとえば僕ら若手も怪談ライブをやってるんですけど、心がけたほうがいいことは?

稲川 わかりやすい怪談が一番いい。怪談は怖いところを聴きたいのに、イメージが沸く以前に説明が多いのはやめたほうがいいよね。入り口のために必要なぶんだけ言っておいたらば、あとは削いだほうが怖い。いらない部分が多いと、かえって弱くなる。

大谷 勉強になるなー。

左から稲川淳二、ダイノジ大谷。

稲川 私もキャンペーンで「話を5分でまとめて」って言われるときもあるんですけど、難しいんですよ。もっと言いたいこともあるのに、捨てていっちゃうでしょう。「つらいなー」って。でも、話はとってあるんですよ。20年くらい前からある話もある。私は話の破片を集めて1個にするんだけど、昔の話と今の話をあわせるとピタッと合うこともあるんですよ。今年もやろうと思ってやめた話があるけど、もしかしたら来年になったらば、その話の破片がつながるかもしれないじゃない?

大谷 DJみたいですね(笑)。自分の中で編集していって、アウトプットする。

「MYSTERY NIGHT TOUR 2015 稲川淳二の怪談ナイト」

稲川淳二の怪談ナイトとは?

1993年に開催された「川崎ミステリーナイト」を発端に、1995年より毎年行われている稲川淳二の全国ライブツアー。怪談約90分、心霊写真解説約30分の2時間構成で怖い話を届ける。毎年趣向を変えた豪華な美術セットも魅力の1つだ。

「稲川怪談クラシック」 / 2015年7月8日発売 / [CD] 2160円 / ハッツアンリミテッド / HUCD-10187
「稲川怪談クラシック」」
稲川淳二(イナガワジュンジ)
稲川淳二

1947年生まれ。東京都渋谷区出身。タレント、工業デザイナー、怪談家。ユニJオフィース所属。

ダイノジ・大谷ノブ彦(オオタニノブヒコ)
ダイノジ・大谷ノブ彦

1972年生まれ。大分県佐伯市出身。相方の大地洋輔とダイノジとして活動中。8月27日(木)に静岡・沼津ラクーンよしもと劇場にて、「ダイノジ大谷ノブ彦の怖い話」を開催。同日同会場で行われる「よしもと歌うま選手権~ネタとカラオケ大会~」にも出演する。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。