ナタリー PowerPush - ジョージ・ポットマンの平成史

視聴者にツッコミを委ねる歴史バラエティ プロデューサーが明かす番組の作り方

50ネタに1ネタくらい通ればいい

──会議はどのように進めたんですか?

「めちゃイケ」をやってる伊藤正宏さんや、「クイズ☆タレント名鑑」とか「ロンドンハーツ」をやってる興津豪乃さん、佐藤ちゃっかりさんとか、そういう作家さんたちと、さっき言った学生リサーチャーさん、うちのスタッフ2、30人が集まって毎回ネタ出ししてもらって、1回の会議で大体1人2ネタくらい出してきます。ただ、毎回40~50ネタは出てるはずなんですけど、結局1個も通らないことが多くて。大体50ネタに1ネタくらい通ればいいなっていうくらい。っていうのは、1個1個のネタは面白いんですけど、やっぱり30分番組が成り立つボリュームのネタってなかなかないんですよね。だからほかのテレビでは30分1ネタでやらないと思うんですけど。

──集まるスタッフも歴史に詳しい方とバラエティ寄りの人と混ざっているんですね。

そうですね。作家さんは面白くするセンスが一流の方に集まっていただいたんですが、ディレクターに関しては基本的にはすごい硬派な人を集めました。「警察24時」をやってる人とか(笑)。ふざけるのは徹底したほうがいいと思ったんで、昔うちでやってた「新説!? 日本ミステリー」っていう信長とか秀吉とかの本格的な歴史番組を作ってた人に童貞の歴史を作ってもらったらどうなるのかなって。童貞史はその歴史番組やってた人が作ったんですけど、本格的なドキュメントに仕上がったなって(笑)。化学反応が起きたんじゃないかと思ってます。

2時間かけて4秒か5秒のカットを撮る

──この番組は映像のカット数が尋常じゃないですよね。全部同じ方が撮っているんですか?

基本各回ごとにそれぞれのディレクターが1人で撮影してます。作品感を大事にしたくて、「この30分は自分が責任持って作ろう」っていう。だから撮影もやっぱり時間がかかるんですよ。みんな「映画よりも大変」って言ってます(笑)。ドラマだったらワンシーン撮れば長く使えるじゃないですか。下手したら30秒くらいワンシーンで行けたりするんですけど、この番組はワンカットが3秒とか4秒なんですよね。

──その3、4秒にかける情熱がこちらにも伝わってきます。

たとえば、「マンガの汗史」で水前寺清子さんをどうやって紹介しようかって、カット割りの打ち合わせを僕とディレクターでするんですよ。あだ名が「チータ」だから、チーターがいる動物園でレコードジャケット撮ろうって言って、許可下りたのが多摩動物公園だったから2時間かけて4秒か5秒のカット撮って帰ってくる(笑)。っていうのを延々やってましたから。反町隆史さんの画がほしいときに、基本こういう番組だからタレントさんの許可って出ないんですよね。だから反町駅(東急東横線)に行って、反町駅をおしゃれに撮ってくるっていう。それもやっぱり往復1時間くらいかかるところなんですよね。数秒なんですけど、その積み重ねがやっぱり大事ですから。ディレクターはつらいって言ってましたけどね。ドラマみたいに全部カット割りしてやってました。

──教養が身につくと同時に笑える貴重な番組ですが、笑いの配分はどれくらいを目安にしていましたか?

3カットか4カットに1回くらいはちゃんと狙いで笑わせようとしてました。それはナレーションでもいいですし、テロップでも画の撮り方でもいいんですけど、意識して笑わせようって。そうしないと本当飽きちゃう番組なんで、ずーっとプレビューのときはそこに重点を置きました。

番組ではツッコまないのが決まり

──この番組はどんな人に見てもらいたい、どんな気持ちになってもらいたいと思って作っていましたか?

30代後半から40代くらいの世代にも楽しんでもらいたいなって思いつつ、一番見てもらいたいと思っていたのは若者ですね。20代から30代前半くらいの人たちに見てもらいたいなっていうのがありました。基本バラエティで、くだらないものを入れて面白くしてるんですけど、毎週最後にポットマンが若者にグサッと刺さるひと言を言うように作っているんです。やっぱり童貞がこんなにもてはやされるとか、人妻がブームって、新聞やマスコミは真剣に向き合わないですけど、なにかしら平成時代の病理って言ったら言い過ぎですけど、平成時代の問題が潜んでると思うんですよね。そこは30分楽しんだあとに、ふと我に返って若い人がちょっとでも問題意識を持ってくれたら面白いなと思って。

──ひと口にバラエティといっても、ほかの番組と見せ方が全然違いますよね。

ちょっとねえ、やっぱりお笑い番組が過剰サービスになってるなっていう思いがあって。笑いどころは全部ツッコむのが当たり前になってきていて、番組も「ここ笑いどころだよ」ってツッコませるテロップとか効果音を過剰に入れるようになっちゃったんです。僕はそういうのちょっと鬱陶しいから、あんまり好きじゃなくて。だから視聴者がどんどんツッコんでくれるような作りのバラエティ番組にしたいなと思って。“間”もその1つなんですけどね。「なんなんだよ、この“間”」って1人でツッコんでくれれば(笑)。だから、あえて番組ではツッコまないっていうのを決まりにして。すべり続けるとか、すべってるんだったらずっとすべって、意味のわかんない“間”を作るから勝手に視聴者のみなさんツッコんでくださいねっていう。そういうスタイルです(笑)。

──視聴者を信頼されてますよね。わかってくれるはずっていう。

絶対そうだと思うんですけどね。視聴者の中にも「お笑い番組は過剰だな」って思ってる人もいるんじゃないかなって。だから大丈夫だと思うんで、ぜひ見てください(笑)。

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本編収録内容
  • 人妻史 前編・後編 / 白ブリーフ史 / 性教育史
特典映像
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DVD「ジョージ・ポットマンの平成史 Vol.2」2012年4月18日発売 / 3990円(税込) / 発売元:テレビ東京 / 販売元:ポニーキャニオン / PCBE-12010

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本編収録内容
  • 童貞史 前編・後編 / スカートめくり史 / ラブドール史
特典映像
  • 平成時代の「知の巨人」&ポットマン教授 スペシャル対談
    • (1)「団鬼六と人妻」(大阪府立大学 堀江珠喜教授)
    • (2)「セックスレスと日本」(明治大学 鹿島茂教授)
    • (3)「オナニーと少子化」(東京大学大学院 赤川学准教授)

書籍も発売!「ジョージ・ポットマンの平成史」ジョージ・ポットマン著 / 2012年4月25日発売 / 1470円(税込) / 大和書房

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高橋弘樹(たかはしひろき)

テレビ東京 制作局プロデューサー・ディレクター。
「TVチャンピオン」「新説!?日本ミステリー」「決着!歴史ミステリー」「ザ・ドキュメンタリー」「空から日本を見てみよう」などのディレクターを経て、「ジョージ・ポットマンの平成史」プロデューサー・演出・構成を担当。