エレ片の最新DVD「エレ片 光光☆コントの人」が1月29日にリリースされた。
10年にわたって展開してきた「コントの人」シリーズに一区切りつけ、前作「新コントの人」でタイトルの通り新境地を切り開いたエレ片。マザー牧場の菜の花畑で撮影した、一面の黄色が眩しいライブビジュアルから「光光☆(ピカピカ)」のイメージが湧いてきたという今作でも、これまでとは違うアプローチで彼らにしかできない笑いを生み出している。
すべてのコントが片桐演じる仁子、やつい演じるやち子、今立演じるダチ子の3姉妹の物語になっているのも新たな試みの1つ。お笑いナタリーではエレ片3人へのインタビューを行い、特にやついには「オチは必要ない」と語っていた前回からこの1年でネタ作りにどんな変化があったか聞いた。
取材・文 / 狩野有理 撮影 / 笹原清明
つじつまが合ってなくてもいいじゃん
──前作「新コントの人」のインタビュー(参照:エレキコミック&片桐仁「エレ片 新コントの人」インタビュー)では、「コントにオチをつける必要はない」という考えになってきているというお話を伺いました。
やついいちろう 「光光☆コントの人」はまさにそのモードで書いています。それをもっと進めて作ってみた感じ。イメージだけで書いたらどうなるんだろうっていう思いから出発して、なんでもいいじゃん、つじつまが合ってなくてもいいじゃん、っていう気持ちでしたね。
──東京、大阪、名古屋の3都市で上演しましたが、各会場で反応は違うものだったのでしょうか。
片桐仁 そんなに違いはなかったです。劇場のサイズ感によるかなというくらいで、各地盛り上がってくれたと思います。
やつい あと、こっち次第という感じもありましたね。
──「こっち次第」というのは?
やつい お客さんが笑わなくてもいいのかなって思っていたけど、笑いを取らないとみんなが不安になっちゃうので、やっぱり笑いを取る方向に転換したんです。
今立進 初日公演を観たスタッフが……(笑)。
片桐 長文のメールがやついに送られてきたんですよ。
やつい 「音がない」って言うんです。お客さんが笑っている“音”が出るような演出に変えたほうがいい、と。
今立 スタッフ本人は廊下で観ているから、面白いかどうかを自分の目では判断してくれなくて(笑)。
やつい 現象でしか判断してくれない。会場から“音”が出ているってことはウケている、じゃあ面白いんだろうって。
片桐 ある種正しいですよ(笑)。合理的。
やつい 僕としては、今回はあえて“音”を出さないようにしたかったんですけど。
今立 まあ、両方できるってことを確認できたから。
──笑いを取ろうと思えば取れる。
やつい だって、会場に来ている人にウケるくらいはできるじゃないですか。
──それも難しいことだと思いますが……。
やつい そもそもファンなわけだから、そんなの誰だって笑いくらい取れますよ。
片桐 あははははは!(笑)
今立 好きで観に来てくださってますから。
片桐 確かに。コンテストじゃないしね。
やつい そんなのは簡単なことなので、今回は観ている人を戸惑わせてみたかった。面白さっていろいろあるから、わかりやすく笑えるものじゃなくても探したら面白いとか、そういう方向性の面白さを試したかったんです。でもスタッフに「ダメだよ!」って言われて。
今立 もちろん自分たちがやりたかったことを変えたということはないんですけど、説明を増やしたり、軽い雰囲気にしたりして“音”が出るような見せ方にしました(笑)。
人がぶつかっているのが面白い
──最近のやついさんのネタ作りはそういうモードになっているんですね。
やつい 今回は全部そんな感じで作りました。
片桐 2日目以降、1本目の「光猪」は説明をたくさん入れたんだけど、これはこれで面白かったなー。うまく伝わっていなかったらもう1回最初からやったりもして(笑)。
やつい このネタ自体は、うちに黄色いイノシシのオブジェがあって、常々かわいいなーと思っていたので作ったネタです。ちょうど亥年だったし、(黄色で)ピカピカだし。
──今立さんはやはりタックルのパワーを買われてイノシシの役に?
やつい 最初は違ったんですけど、今立にイノシシ役をやらせたらしっくりきた。体重も一番あるから体当たりしたときにボーンって身体をふっ飛ばしてくれるんですよ。
片桐 肩が大きいんだよね。
──エレ片では体当たりしたり殴り合ったりすることが多いですよね。
やつい 昔から、人がぶつかってるのが好きなんです。身体が変な形で持ってかれるのが面白くて。人にぶつかるの、楽しくないですか?
片桐 とにかく好きだよね。ぶつかってきて超笑ってる。
やつい 楽しくありません? こうやったりとか(と言って片桐に体当たりする)。
片桐 いってえな!
やつい ちょっと痛いくらいが面白いんです。
片桐 俺はやだ! ぶつかったときに首がぐんってなるのが怖い。
今立 インタビュー中にやめなさいよ(笑)。
やつい あとここをバン!って叩くのが面白くて(と言って片桐の肩をグーで殴る)。
片桐 痛い!
やつい 楽しいじゃないですか。
片桐 ラジオもこの座り位置だから嫌なんだよ、俺ばっかり叩かれて。
──やついさんは自分が痛くてもいいんですか?
やつい 痛くてもいいし、ふっ飛んでいくのが面白いです。
今立 自分では制御できないっていうのがいいんでしょうね。
やつい エレキコミックの最初の発表会でも、信じられない重さの粘土を投げ合うネタをやりました。全然ウケなかったですけど。
片桐 すっごい重いんだけど、白い粘土だったから見た目で重さが伝わらないんだよね(笑)。
やつい 飛んできた粘土をキャッチしたときに、身体が止まらないで後ろにぐいんって持っていかれるじゃないですか。それが面白いと思ったんですけど、全然みんな笑ってなかった。
今立 (笑)。
前のコントにフリを入れる“匂わせ”の作業
──登場するキャラクターがライブ全編を通して同一人物、というのは今作が初めてではないですか?
やつい そうですね。もともと三姉妹の話を作りたいというアイデアが自分の中にあって、そこから書いていったら全部つなげられるなと。全員女の子のネタは今までなかったですし、やってみようと思いました。
──全員、性格と服装がマッチしていて、今っぽい感じもかわいかったです。
今立 ファッションには力入れてますからねー。
やつい それだけはこだわってやってます。
片桐 ただ、今まで一番かわいいはずだった今立が、この歳になって変な感じになってきたのが残念。今立演じる三女のダチ子は女子高生の設定なんですけど、身体がとにかくデカくて(笑)。「カフェ女子ババア」で着ているモコモコの部屋着姿はもはやプロレスラーみたい。
──稽古にはどれくらいの期間を費やしたんですか?
やつい いつもと同じで、2週間くらいです。その前の段階の打ち合わせもありますけど。
片桐 今回はどのコントもお芝居中心だったからけっこうしっかりやりましたね。空気感を作らないといけないので。
やつい つなげていく作業は楽しかったです。「このコントのフリをここに入れちゃおう」みたいな、“匂わせ”の作業でした。
片桐 三姉妹ありきで、反対に男バージョンのコント(「三兄弟」)を作ったりね。
今立 三兄弟が三姉妹の悪口を言うんですけど、それが実際の僕らへの悪口っていう(笑)。フリートークみたいで楽しかったです。
──キャラクターの設定はみなさんが女だったら、という感じですか?
片桐 それもあると思います。物語上では、長女の仁子は出戻りで、SNSを始めてオシャレに目覚めるキャラ。
今立 次女のやち子はコントによって振り幅がすごい。
片桐 「夕陽の詩人」では暴走しちゃってるもんね。
やつい だんだん三姉妹の設定が足かせになっている気がしてきて、このネタで割り切ったところがあります。人っていろんな面があるじゃないですか。だからネタごとにキャラが違っても「同じ人なんだよ!」っていう強引な理屈でやりきりました。でも、そもそも「光猪」でうんこ食ってますから。
今立 そうだ(笑)。次女が一番自由かもしれませんね。
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しゃべったことをテープ起こししたみたいに再現