感じていたことをキャラに背負わせてみた

──「ヒッチハイク」はやついさん扮する男がヒッチハイク中の中学生2人を車に乗せて……という怖いテイストのネタです。

やつい　これは子供の頃に友達とヒッチハイクで沖縄を1周しようとした人のエピソードを聞いて、コントっぽいなと思って作りました。

──やついさんの衣装やカツラは何をイメージしたものなんですか？

やつい　「ノーカントリー」（2007年製作、コーエン兄弟のスリラー映画）っていう映画に出てくる、ただただ人を殺していく奴です。やっているうちにネタがどんどんそいつに寄っていっちゃって。

片桐　この格好怖いよね。ジャンル分けできないタイプの人（笑）。

──DVDだとやついさんの狂気にあふれた表情がアップで楽しめますね。

やつい　自分でも「俺、細かい演技やってんなー」ってDVDで観て思いました（笑）。今立と片桐さんもいい顔してましたね。

片桐　社長が喜んでいましたよ。「やついは演技がうまいな！」って。

──コミュニケーションを取るのが下手、という設定のキャラクターでしたが、それも誰かモデルがいるのでしょうか。

やつい　なんとなくコミュニケーションは難しいなっていうのを感じてたんですよね。

──やついさん自身が。

やつい　#MeTooが流行り出した頃で、中にはスケベなことでしかコミュニケーションを取れないおじさんとかもいるんだろうなーって思っていて。でもそういうのをコントにするのってうまくやらないと説教じみてカッコ悪いし、言いたいことがある感じもダサいじゃないですか。

片桐　あはははは（笑）。うんうん。

やつい　だからキャラに背負わせてみたっていう感じです。

──実話を元にした以外で変わっているネタが「主観 客観 俯瞰」。主観、客観、俯瞰などを武器に対戦するという謎の競技が繰り広げられています。

やつい　これは稽古でだいぶ違うものになりました。最初は「公認客観士」っていう、マンガ編集者が客観的な目を持つ人を連れてきて作家に対して作品がいかにつまらないか延々と説明するネタだったんです。そしたらそれがもう本当につまんないんですよね。

片桐　あはははは（笑）。

やつい　馬喰町バンドの「許して鰐」という曲に「主観で主観で主観で見る 俯瞰で俯瞰で俯瞰で見る」っていう歌詞があって、もともとはそこから発想しています。「一番客観視が必要なことはなんだろう？」とか、最初はしっかり考えていたんですけど、作ってみたらすっげえつまんなくて。稽古でだんだん手を胸に当てたり、高く挙げてみたりして「これが主観で、これが俯瞰で……」って自分で動き出したんです。そしたら「これで戦おう！」ってなって。

今立　それがすごいよね（笑）。普通「戦おう！」ってなる？

片桐　もう子供ですよ。

やつい　今立と片桐さんを戦わせてみたら面白かったんです。今立の力が強い強い！

今立　作家も倒しましたからね。

やつい　「主観、主観、客観！」とかずっとやってたら死ぬかと思うくらい笑っちゃって。で、なるべく説明を短くしてとにかく戦おう！ってことになりました。

「光光☆コントの人」はピカピカなネタに

──さて、2月14日から始まる最新公演「光光☆（ピカピカ）コントの人」についても聞かせてください。この「ピカピカ」という言葉はどこから来ているんでしょうか。

やつい　写真ですね。湖で撮影した「新コントの人」が青っぽい色だったから、次はなんとなく黄色がいいなと思って、マザー牧場で撮りました。「新コントの人」が終わった直後だったので全然タイトルも考えていなかったんですけど、できあがった写真を見ながら考えました。

──写真の色味で「ピカピカ」に？

やつい　光に包まれている感じです。でも「光」ってちょっと言葉として強すぎるというか、言いたいことがありすぎるなーと思ったので、「ピカピカ」ってバカみたいにしてみました。

──ネタ自体もピカピカな感じになりそうですか？

やつい　なるんじゃないですかね。やっぱりそこから発想していますから。

片桐　「イエス」と言っておきましょう、そこは。

──音楽はまた馬喰町バンドが手がけるんですよね。

やつい　はい。今回もいいですよ。歌詞は僕が書いています。これを聴きながら、写真を見ながら、ネタを考え中です。

バレンタインの最悪な思い出

──ここから話をガラッと変えて、せっかくチョコを用意したことですし、バレンタインデーにまつわる思い出をお聞きしたいなと。ちなみにバレンタインといえば「エレ片のコント太郎」（TBSラジオ）で唱えていた「チョコ好きなんだけどっ」（※バレンタインの数日前からチョコレート好きをアピールして女子からチョコをゲットするやつい考案の方法）から10年以上経っていますね。

片桐　あれって確か2008年の放送でしたよね。もう11年かあ。

やつい　（唐突に）僕は昔、チョコ200個もらってましたからね！

（沈黙）

やつい　……え？

一同　あはははは！（笑）

今立　自分でイベントやってたからでしょ？ でもそれが一番のもらえる方法かもしれないですね。「自分で自分のイベントを打つ」っていう。

──学生時代のバレンタインの思い出は何かありますか？

今立　（片桐に向かって）あれあれ。

片桐　ないないない！

やつい　キング・クリムゾンのCD貸したやつ？

片桐　それはまた別の話。バレンタインじゃない。

今立　高校だっけ？ 中学？

片桐　高校はないですよ。

今立　中学のときか。片桐さん、女子からチョコもらったんですよ。下駄箱に入ってて。ね？

片桐　いやいやいや……。そんなにこの話聞きたい？

今立　聞きたい。

──ぜひお願いします。

片桐　朝学校に行ったら僕の下駄箱に不二家のハート型のでっかいチョコが入ってたんです。でも、バキバキに踏んだ跡があって。

やつい・今立　あはははは！（笑）

片桐　それを取ろうとしたときに友達が「おー！ 仁チョコもらったの？」って声をかけてきたんですけど、「バカ、言うな！ 片桐の反応見てるんだから！」ってロッカーの陰から女3人が覗いていたんです。僕はチョコをしまうこともできないし、置いていくこともできないし、どうしたかはもう覚えてない。

今立　つらすぎて記憶が途切れてる（笑）。

片桐　最悪ですよ。

やつい　イジられ役になれば観察実験的にチョコをもらえるっていうことかもしれないですね。

今立　バキバキのチョコを？

片桐　欲しい奴いないだろ！