時事漫才からは流行語が生まれにくい
──太田さんは「流行語を作りたい」と常々おっしゃっています。漫才の中から流行語が生まれるケースも多々あると思うのですが、爆笑問題の漫才からは出てこない?
太田 出てこない! ギャグってのがないからね。
田中 スピードワゴンには「甘ーい!」、我が家には「言わせねーよ!」といったお決まりのフレーズがある。でも僕らのネタは言ってしまえば使い捨てのようなもので、基本的に1回しかやらないじゃないですか。
──時事漫才というものが最初からそういう性質ということですね。
田中 だから可能性があるとすれば、「そういえば田中ってこのツッコミばっかりしてるな」みたいなものがあって、それがうまくハマることなんだけど。ネタによって太田のボケは毎回違うから、なかなか定着しない。
太田 ツービートの「コマネチ」は、ネタの中にちゃんとあったもんね。
田中 あれは漫才ブームの頃に同じネタを何度もやるから。正月三が日なんて同じネタを10回くらい観る。それくらい並外れた普及力がある中でコマネチコマネチ言われたら流行しますよ。
太田 そういえば、ダチョウ倶楽部は会議でギャグを決めてたよ。
田中 「聞いてないよー」を突発的に言ったのが流行ったから、そのあとの「つかみはOK!」とかは意識してやってた。
太田 「ムッシュムラムラ」とかね。
田中 おでん芸にしても「訴えてやる!」も「クルリンパ」も、その数の多さで言ったら誰も敵わない。時代が経っても面白いし、全員が言いたくなるセリフでわかりやすい。流行語に関してダチョウ倶楽部はすごいですよ。
スーツで漫才をする理由
──このDVDでお2人は最初だけカジュアルな衣装を着ていて、途中からラストまでスーツ姿です。現在漫才をする爆笑問題はスーツのイメージ。これには何か理由があるのでしょうか?
太田 漫才ブームのときの話をすると、揃いのスーツでやっていた漫才師がいる中、B&Bがトレーナーで出てきたんです。
田中 Gパン履いて。
太田 そのとき、うんとカジュアルになったのが新しかった。そこから我々の世代に移るとDCブランドが流行った。俺らが漫才を初めた頃は、漫才をやる人が周りにあんまりいなくて。ウッチャンナンチャンがDCブランドのスーツでショートコントをやるような時代。みんな肩パットが入ったようなスーツを着てやってた。
田中 ちょっとバブルっぽい感じになってくるんだよね。
太田 そもそも漫才に古くさいイメージが当時はあって。衣装もないし、スーツで漫才をやると古くさく見えるからカジュアルにやろうと思って、俺らは私服でやってました。そうすると、さんざん服装のことをツッコまれて。コント赤信号のナベさん(=渡辺正行)からも「ネタはいいけど、服をどうにかしろ」と。「GAHAHAキング」で勝ち抜いているときも審査員にダメ出しされるのは服のことなんだよね。
──そこが唯一のウィークポイントだったと。
太田 だけど年齢を重ねるにつれて、逆に今度はスーツでやったほうが、むしろ昔風でいいかなと。年齢にも合っているし。で、あるときからスーツに変えたんです。
──時代の流れと年齢を重ねたことによる選択だったんですね。そんなお2人の変化も楽しめるDVDについて、最後に一言いただければと思います。
田中 僕らの同世代の人は「こんな事件あったね」って楽しめると思うし、20代くらいの人が観ても、変な面白さがあるかもしれない。「(DVDジャケットで爆笑問題が扮装している)ビリーズブートキャンプって何?」っていう人もいると思う。自分が20歳くらいのときにツービートが同じようなDVDを出していたら、どんな感じなんだろう? そう考えると若い人にも観てほしいです。
太田 俺らの漫才ってモザイクというか切り貼りした寄せ集めのようなものなので、どこからでも入れると思うんです。「さあ観るぞ」というのではなく、何かしながらとか「家が賑やかなほうがいいな」っていうときに、気合を入れずにBGM的に観てくれるのが一番いいかな。