爆笑問題のDVD「爆笑問題のツーショット 2018 結成30周年記念Edition ~爆笑問題が選ぶBest Selection~」が12月19日に発売された。
芸能ネタや世の中を騒然とさせた事件、混乱を生んだ政治など、あらゆる出来事を漫才で笑いに変えてきた爆笑問題。このたび彼らが世に放ったのは、コンビ結成20周年記念の年にリリースしたDVD「2008 漫才 爆笑問題のツーショット」から「2017年度版 漫才 爆笑問題のツーショット」まで、9タイトルの中からベストネタを収録した2枚組だ。結成30周年を記念してリリースしたこの作品への思いを2人に聞いた。
取材・文 / 成田邦洋 撮影 / 小坂茂雄
しくじった人が好き
──今回発売されるDVDを一足先に拝見しました。印象的だったのは、松島トモ子、ケーシー高峰、谷亮子、若人あきらといった方々の名前が複数のネタに登場していることです。
田中裕二 船場吉兆は複数じゃなかった?
──序盤に出てきて、その1回だけだったと思います。
田中 それは意外ですね。このDVDには選抜されてないだけで、実は他のネタでやってたのかもしれないけど。
──お気に入りであろう人物やテーマが繰り返し登場するのも爆笑問題のネタの特色だと感じました。ご本人としては、どうお考えになっているでしょうか?
田中 基本的に“茶化す”という感じは、ずっと変わっていないと思います。
太田光 しくじった人が好きなんだよね(笑)。
田中 そう。ただ、しくじってる人の傷口に塩を塗ってやろうというつもりはなくて、どちらかというと「笑って楽しもう」みたいな姿勢なんですけど。松島トモ子さん、面白いですからね。ライオンに噛まれるってまずないことだし、そのすぐあとに今度はヒョウに噛まれるって、そんな人間は地球上にいない!
太田 あれはたしかに超えられないよ。
田中 船場吉兆も、全員が聞こえている会見で女将と息子の2人だけが気づかずにやってる。その滑稽さ。本人たちは大変なのかもしれないけど。
太田 そういうのが面白いんだよね。必死になってるのが。
田中 たとえば「転ぶ」ということ1つ取っても、ただの雑踏の中で転ぶのと、真面目にしていなきゃいけない葬式の席で転ぶのとでは面白さが全然違う。そういった面白さについて「笑うなよ」って文句を言う人が世間に増えてきている気はします。
太田 まあ、でもそれはネット上のことであって。“炎上”やなんかというのには、みんな慣れてきて。ちょっと炎上したくらいでは、たいしたことなくなってきてるんじゃないかな。
談志師匠に田中が言われた「お前が逆にやり返せ」
──ときおりお二人が見せるアドリブのような掛け合いもファンにはうれしいのではないかと思います。
太田 「ツーショット」の収録は、最初のうちはわりとかっちりやっていたんだけど、最近はどっちかというとフリートークっぽい気分で軽くやったほうがいいな、と思うようになりました。たとえばテレビでやる漫才は何分何秒って時間が決まってることが多いから「これとこれとこのネタをやんなきゃ」となってアドリブは入れられない。「ツーショット」はそういった状況とは違って、もうちょっとゆったりした感じです。
──そんな中でつい出てしまう田中さんの言葉が笑いにつながることもあって。
太田 30年もやってると「コイツ(=田中)のほうがヤバいだろ」っていうことをみんなに知ってもらえて、それで幅ができた感じはあるよね。ラジオのトークがベースだと思うんだけど。
田中 そういうことはあるのかもしれないです。生前の立川談志師匠にずっと言われていたのが「1回、お前が逆にやり返せ。そうするとお前らはもっと面白くなる」って。「いや、できません」と返したんですけど(笑)。
太田 それが談志師匠が言うところのイリュージョンなんだけどね。よく思うのが、やすきよ(=横山やすし・西川きよし)の漫才がわりとそんな感じなんですよ。ボケがどんどん入れ替わって、お互い勝手にやってる。あれをあの若さでできたやすきよってのはすごいんだなと。俺らはまだそれをやる度胸がないもんな。
──ラジオのトークでは、お菓子の話などで田中さんが突っ走って、太田さんが引くようなこともありますが。
田中 “素”の人間としては俺はツッコミでもないし、太田もボケというほどのボケでもないから、フリートークであればそういうこともあるんでしょうけど。漫才だと、そういった部分をネタとして作るというのが想像しづらいです。
太田 やすきよの時代は演芸作家が書いたざっくりとした叩き台みたいな本があって、それを2人がどう料理していくかってことだったと思う。それをやろうとすると当たり外れがあって、常に調子よくは行かないだろうな、というのがあるから難しいよね。
──太田さんが1人芝居を始める場面も増えてきました。
太田 毎回1時間以上も漫才をやるわけだから、淡々と時事ネタをやるよりは、ああやってぶっ飛んじゃったほうがいい。客が温まって、それが許されるような空気になってからできることです。
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時事漫才からは流行語が生まれにくい