溜口が1人で歌い踊り、自身演出の芝居を上演するエンタテインメントショー「溜口スーパーショー」シリーズの最新公演。2017年10月に第1弾が開催され、当初は東京・LOFT9で“溜口がディナーを楽しむ様子を観客が眺めるイベント“として人気を博したが、芝居パートをメインにした2021年7月の「溜口スーパードリームショー~新・世界で一番熱い夏~」、2023年1月の「溜口スーパー生誕ショー~グチタメ危機一髪~」も溜口が描く奇天烈な世界観で来場者を魅了した。
前回の「生誕ショー」に続き、
人力舎メンバーによる前説のあと、大竹社長による華々しいピアノの音色と共に溜口が登場。生命力あふれる歌声で届けられたのは、株式会社グロップのCMソングだ。溜口は大竹社長とアイコンタクトを取りながら、企業のCMソングとは感じさせない緩急をつけたパフォーマンスで会場のテンションを一気に高めていく。演奏を終えるやいなやすぐさま去っていく社長に溜口は儚さを感じつつ、昼・夜公演とも満席で迎えられたことに感謝。「私が考えたやつなんで、しっかりしてません!」と立派なステージを期待しないよう釘を刺したかと思えば、その分、出演者が豪華であるとアピールし、「なんだかよくわからないけど楽しい気持ちになれると思います!」とショーのスタートを告げた。
「ドリフ大爆笑」のオープニング風に出演者が紹介されると、いよいよ物語へ。「溜口スーパー SPRINGショー」の準備をしていた最中、ザ・ギース尾関が自分より先にケータリングに手を付けたラブレターズ塚本を咎め、不要な緊張感が漂っていた。そこへ、大竹まことが稽古の激励にやって来た。焼き肉に連れて行ってもらおうと、大竹のご機嫌をとる尾関。調子に乗って手に持っていた小道具のピストルを大竹に向けると爆発音が鳴り響き、なんと大竹は絶命してしまう。ショー開催のためにも事件の解決を急ぎたい溜口と人力舎チームの3人は、先に稽古場を出ていった阿佐ヶ谷姉妹やザ・ギースの様子を伺いに行くことに。
すると文化放送「大竹まこと ゴールデンラジオ!」出演中に江里子が毒入りの飴を口にして倒れ、尾関を犯人だと早合点した美穂が尾関を襲撃。勘違いで尾関を殺めてしまったことを悔いた美穂は、自ら高佐を挑発して襲うよう仕向け、報いを受けた。負の連鎖が止まらない一連の事件、仕組んでいたのは塚本だった。ケータリングに仕込まれていた洗脳薬で真の黒幕・大竹まことに操られている塚本が、息絶えたはずの3人を得意のミシンで生き返らせ、実は生きていた大竹まことのしもべのような人間に高佐も含めて作り変えてしまったという。溜口は「お前どこまで腕が上がってるんだよ!」と趣味の域を超えた塚本のミシンの技術に驚きを隠せない。
負傷もあり、大竹まことの手下たちに簡単にやられてしまう溜口。もはやここまでかと思われたが、駆けつけた大竹涼太社長が「みなさんそこまでです! それ以上やると社長権限でマネジメント契約を打ち切りますよ!」と警告し、ピアノの音色で目を覚まさせる。そして人力舎チームが羞恥心の「羞恥心」を頼もしく歌い出すのと同時に溜口は再び奮起し、パワーを溜めて大竹まことに立ち向かった。
しかし大竹まことはとにかく強く、一同はまったく歯が立たない。そこで江里子が塚本のミシンの力で人体改造することを提案。ケチで知られる尾関が常日頃から拾っているガラクタ、もとい“宝の山”を使ってASH&Dメンバーを対大竹まこと仕様に作り変える。チーム人力舎も手と足を高速回転させて自らをドローンにしてしまうという荒業で加勢。ドローンから投げ込む手持ちの武器がなくなってしまったため、ツバを吐きかけるというささやかな攻撃を仕掛けると、意外にも効いた。
各々、武器を体に内蔵したASH&Dメンバーも大竹まことに対抗するが、やはり「強すぎる」。そこへ「みなさん、何を弱気になってるんですか!」とひと目でパワーアップしたことがわかる溜口が現れ、見事な立ち回りを見せて大竹まことを打倒した。激しい戦いののち、「大竹さんを倒したー!」と歓喜する一同だったが、「これで……よかったんだよな?」となぜだか気持ちは晴れていない。本当に「大竹まことに一矢報いる」にはショーを成功させることだと理解し、高佐がハープ、塚本がアサラト、大竹涼太社長がピアノ、阿佐ヶ谷姉妹と尾関、溜口が歌、という構成で玉置浩二の「田園」を披露した。
これを聴いた大竹まことは、どういうわけか脳だけの姿になって「お前たち、よくやった! 褒めてやろう」と語りかけ、この場をあとに。一同は冗談を言い合いながら「溜口スーパー SPRINGショー」に向けて結束をさらに固めていた。
エンディングには溜口がオリジナルソング「渋谷でパーティー」を歌いながら再登場。キャスト全員集合して「もう最初のほうは覚えてない」「やったそばから消去していく」「無駄な記憶」などと内容を振り返る。冒頭の登場人物紹介の場面で塚本がケータリングのお菓子を手に持って立っていた、という伏線も明かされ、溜口は「以上です。まさかの伏線1個」と脚本のシンプルさを強調。昼公演も観に来ている来場者がいたことから、塚本は「観られている気がして、けっこう重圧でした」と犯人役を務めた心境を明かした。
出演者一人ひとりの持ち味が発揮された今回のステージ。江里子はダイナミックな死に様や美しい歌声で客席を魅了し、美穂はザ・ギースの2人とやり合う役どころで、セリフ量も膨大だった。そんな美穂の暗躍ぶりに江里子も感銘。しかしセリフを飛ばしてしまう場面もあり、美穂は「1つセリフ覚えたと思ったら1つ抜けていく(笑)」と苦労を語った。美穂のハプニングをアドリブで笑いに変えていた高佐は、ハープを傷つけられたシーンで見せたすさまじい狂気でも会場を圧倒。尾関がケータリングを根こそぎ持ち帰ること、塚本のミシンやアサラトといった特技など、メンバーの個性や多彩さを際立たせた脚本に来場者は大きな拍手を送る。溜口自身も物語を引っ張るだけでなく歌唱パートでも輝きを放っていた。
最後はTOKIO「花唄」を全員で歌って大団円。溜口が「ダブルアンコールするような舞台じゃない」と言って一度幕が下りるも熱を帯びた客席からの拍手は鳴り止まず、再び幕が上がる。溜口は「イジらないでください!(笑)」と照れながら、「気をつけて帰ってください!」と観客の帰りを促していた。
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阿佐ヶ谷姉妹 ワタナベエリコ @asagayanoane
たくさんの温かく協力的なお客様に見守られ、私が見た夢と貴方の見た夢が一緒だったような謎の仲間意識が生まれる公演に、今年も参加できて幸せでした~
終演後、当日誕生日だったマネジャーさんへのお祝いをと閉店間際の不二家へ駆け込むグチタメ座長の後ろ姿が、小さいのに大きく見えました。 https://t.co/meJmubcVyu