又吉「カリカ時代からの活動がにじみ出てる」マンボウやしろ初小説を大いに褒める

マンボウやしろこと家城啓之の小説「あの頃な」（角川春樹事務所）が2月15日に発売されるのは既報の通り。本日2月4日にオンラインで開催された出版記念イベントでは、やしろが芸人時代からの後輩であるピース又吉を迎えてトークを展開した。

舞台やテレビドラマの脚本、演出を手がけるほか、長年ラジオパーソナリティを務めてきたやしろの初小説。ラジオの現場で新型コロナウイルスに関するさまざまなリスナーの声を聞き、またワイドショーでの報道を観て感じたことを物語にした25本のコンセプト短編集だ。出版社から声がかかり、いざ書いてみようと筆を執った矢先に“コロナ禍”というものが日本にも降り掛かった。「コロナのことしか考えられなくなるが、それでもいいか」と担当者に尋ねたところ了承を得、「コロナ流行下の人々の生活」がこの本のテーマになった。「あの頃な」というタイトルについても、やしろは「ダジャレです」と述べている。

将来、コロナ禍という情勢を振り返ったときにどんな感想を持つのかわからないが、収束したあとではなく今、この本を発表するのが命題だったとやしろ。だからこそ自分の思想は極力排除し、「報告書」のようなイメージで客観的に書くことを心がけた。又吉はそんなやしろの表現方法を「カメラの台数が多い」と例え、「いろんな視点があって、立体的にコロナをめぐる物語を捉えようとしたんだなと思いました」とコメント。また、「カリカの時代のやしろさんがやっていたコントとか、やしろさんが演劇でやってきたことと近い感じもした。いきなり『マンボウやしろが小説を書いた』というよりは、これまでの活動がにじみ出てる」と感想を語った。

自身を「会話劇を書くのは好きだけど、語彙力がないし描写が得意じゃない」と分析し、「学生時代に小説も読んでこなかった」と明かすやしろは、芥川賞作家である又吉に対し「賞を獲ったのは又吉の悪いところ。怒ってるんだよ？」と恨み節。小説に手を出せばどうしても世間からは又吉と比べられてしまうと考えていたことから、「小説界の入り口には又吉の銅像が立っている」とその恐怖を表現した。小説というジャンルを猛勉強し、偉大な小説家たちと同じフィールドで戦わなければ、と考えていたとも。しかし本好きの俳優・山崎樹範の助言もあり、「今持っているものだけで小説のワールドは受け入れてくれるし、好きに書いていいんだよって感じだった」とチャレンジしてみると意外な手応えがあったという。

重版を期待するやしろは「本当ね、絶賛してほしい。又吉には。ゴリゴリの先輩後輩としてやってほしい。『あの又吉直樹がここまで褒めるか！』っていうネットニュースまでいきたい」と願望を隠さず、又吉が「本当に面白かったです」と褒めても「今の言い方は軽い」とダメ出し。そんなやり取りも挟みつつ、又吉は「やしろさんが何か作品を発表するときはいつも期待して見ているんです。今回も楽しみにして読んだんですが、しっかり期待に応えてくださいました」と変に気遣いすることなく話していた。

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