ウエストランド井口と作家飯塚の「今月のお笑い」。

今月のお笑い 30本目 [バックナンバー]

ウエストランド井口と作家飯塚とキングオブコント王者ラブレターズが語る「2024年10月のお笑い」

まさかまさかのKOC優勝!、審査員の好み、優勝後スベった番組、口笛なるおブレイク?、芸歴20年の赤ちゃん

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ウエストランド井口と構成作家・飯塚大悟が毎月のお笑い界の出来事を勝手に振り返る連載「今月のお笑い」。今回は、「キングオブコント2024」で優勝を果たしたラブレターズを迎え、 井口も飯塚もラブレターズ本人も「優勝するとは思わなかった」という大会をまるっとおさらい! 大会後に多くの意見が飛び交っていた「審査員の好み」とは何か、ラブレターズが優勝後にやってしまった失敗談、もしかしたら今後ドッキリスターになるかもしれない口笛なるおの話も。後日、動画版も公開する予定なのでお楽しみに。

構成 / 狩野有理 ヘッダーイラスト / 清野とおる

※取材は10月24日に実施。

むしろ去年優勝する気でした

──ラブレターズのお二人、「キングオブコント2024」優勝おめでとうございます!

ラブレターズ ありがとうございます!

ラブレターズをケーキでお祝い

ラブレターズをケーキでお祝い

──編集部からお祝いのケーキと、井口さん飯塚さんからプレゼントがあります。

塚本溜口 おおー!

──ビルケンシュトックのサンダルです。

飯塚 いつもシークレットシューズ履いてるから、「ごまかすな!」「地に足つけろ!」という意味で(笑)。どんぐりを入れるポーチとかも井口くんに探してもらったんだよね?

井口 もしくは、ジュビロ磐田のユニフォームを買おうとしてました。今後何かと使いそうだし(笑)。よくよく考えたら、なんで同期にプレゼント買わなきゃいけないんだよ?と思い始めて。大変だったんだから。なかなかサイズもなくて片方ちょっと高いやつになっちゃったし……。

塚本 なんで愚痴が始まるんだよ(笑)。

溜口 気持ちよく買ってほしいけどなあ(笑)。

井口 プレゼント探し歩いて、めっちゃ汗だくになったよ。狩野さん(この連載の担当編集者)と渋谷を歩き回って、道行く人に「あ、井口だ!」とか指差されるし。しまいには、原宿のところで元アントワネットの王子(現デンコーセッカ・生田いく)に会って、「お、おはようございます……!」ってよそよそしく挨拶されて。たぶん、デートだと思われてるんだよ! 最悪だよ。あいつが変な噂流す可能性もあるんだから。

──最悪というのは私に失礼では……?

溜口 いやいや、悪かったね。本当ありがとう! 我々は井口くんをここまでさせる仲ですから。ほかのチャンピオンにはやらないでしょ。

井口 絶対あげないよ。(事務所の後輩の)シティホテル3号室が優勝しててもあげない。途中、原宿の竹下通りも歩いてきたけど、何年か前につかっちゃん(塚本)と2人で歩いて、「誰からも声かけられねえな」って言ってたのを思い出したよ。

塚本 2人でクレープ食べてね(笑)。

溜口 どういう会だよ(笑)。

井口 「『笑っていいとも!』出てます」とか「オールナイトニッポンやってます」とか言いながらね。

塚本 で、誰にも気づかれない。

井口 それが今や、デートしてると思われるくらい気づかれて。

──ビッグになりましたね。ではケーキを食べながら「今月のお笑い」をみなさんで話していければと思います。

溜口 うまい! 最高。うれしいなあ。

塚本 優勝祝いのケーキ食べながら取材してもらえるなんてね。

井口 で、「キングオブコント」はどうでした? 飯塚さん。

飯塚 本当に失礼なんだけど、絶対優勝しないと思った(笑)。

溜口 会う人会う人に言われます、いろんな現場で(笑)。

飯塚 去年のほうが、「もしかしたら優勝するかも」と思ってた。準決勝の感じを見て、「これ、ラブレターズあるぞ」「優勝しますよ、今年」とかいろんな人に言っちゃったりして、浮かれてた。

塚本 僕ら的にもそうなんですよ。去年優勝する気でした。

飯塚 準決勝でネタを見ているから、今回のこの2本では厳しいかなって思ってた(笑)。

溜口 いや、僕らもそう思ってました。今年はあの2本だったから、「決勝で2本やれたらいいよね」くらいの気持ちでした。ウエストランドは「M-1」で2回決勝行ってるけど、最初の年ってどうだった? うちら、去年はすごいかかってたのよ。「絶対優勝するぞ」って。

井口 2020年に初めて決勝行ったときは、確かに「これで優勝して人生変わるぞ」みたいな感じだったけど、2022年の優勝した年は何も思ってなかった。「2本できればいいや」くらいの気持ちで。

塚本 ああー、うちらと同じだね。

井口 結局そういう人が勝つんだよね。ただ、その状態になるのがムズい。初めて決勝行った奴がそのマインドになるのは無理じゃん。何回か決勝に行っているとか、自分たちにはほかのことがあるからいいや、くらいの気持ちの人じゃないとそうは思えない。「M-1」は特に、ここ近年そういう人しか勝ってない気がする。錦鯉ももう忙しくなってたし、令和ロマンも別に「優勝して人生変えよう」ということではなかったと思うし。

──ラブレターズは昨年同様、今年もファーストステージ10番手でした。どういう気持ちで出番を待っていたんですか?

塚本 もう「落ち着いてやろうね」しかなかったです(笑)。

井口 去年は直前でサルゴリラさんが大爆発だったからね。

溜口 爆風受けて、幕が開いたら何も残ってなくて、焼け野原だった(笑)。今回は自分たちの結果が出る前に3組(ファイヤーサンダーロングコートダディや団)が暫定席にいるのを見て、「あー、しっくり来る3組だな」ってちょっと思いましたね。ここに自分たちが入る想像はできなかった。それ以上に、2人とも「今年は優勝ないよ」っていうのを言い聞かせてたんですよ。かかりすぎないように。これは大竹まことさんが言ってくれていたんですけど。

井口 ネタをやっているときはどうだったの? 「これ、行くんじゃないか?」とか思った?

塚本 いや、ほかの人の出番を見ていなかったから、どのくらいウケればどのくらいの点数が入るのかも全然わからなかったんだよ。審査待ちでCMに入ったときに、浜田さんが「まあなあ、今年はトップがなあ(点数が高い)」と言い出したから、「あ、ないんだ」と思って(笑)。そっからマジで気楽だった。無理っぽいなーと思いながら結果を待ってたから、ファイナル決まりましたってなったときになんなら浜田さんのほうが喜んでくれて。

溜口 何点あれば行けるっていうのも気にしてなくて、「へーこの点数か。え、行った!?」っていう(笑)。

飯塚 9組目まで見たときに、ラブレターズがの今回のネタって全然ほかと被っていないから、そこにドンと行くかもな、とは思ったんだよね。

塚本 じゃあ流れがよかったのもあるんですかね。

飯塚 どんぐりのコント(1本目の「光」)はちょっと異質じゃん。

井口 ルシファーさんも言ってましたけど、笑い以外のほかの感情を揺さぶるところがあるから。

溜口 確かに「泣いた」っていう感想ももらいました。

井口 だって、赤ちゃん(※)も泣いてたよ。

塚本 赤ちゃん泣いてた?(笑)

※編集部注:ネコニスズ舘野のこと。

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飯塚 コントの内容で?

井口 「泣きそう……」って言ってた。みんな無視はしてたけど(笑)。でもまあその感じもわかるというか。エモーショナルな部分もあるから。

飯塚 25歳とかではできないネタ。ちっちゃいけど、ラブレターズってちゃんと歳を重ねて、おじさんなんだよね。その感じがちゃんと出てた。

溜口 そうですね(笑)。年相応のネタができてよかったです。でも、それによって、いい人っていうイメージがつくのがちょっと苦しいなと思って。本当に性格がよくて、ハートフルで、しかも事務所はASH&D。絶対この人たち信用できるじゃん!みたいな。

井口 速攻またエロ番組とかに出て、大暴れしたほうがいいよ。

塚本 すでに控えてる。セクシー女優さんとユニットコントの仕事が(笑)。

溜口 本来ああいうネタばっかりじゃないからね。

井口 1回ふるいにかけて、ファンを減らしていかないと。僕らの場合は「あんなネタをやるなんて本当に嫌な奴」からのスタートだったけど。

飯塚 そういう意味では2本目はあれでよかったんじゃない? 2本目もハートフルだったら、ハートフルコントのラブレターズになっちゃうから。

塚本 そうですね。2本目が摩訶不思議だったからよかった。

溜口 あれで突き放したもんね。1本目のネタでファンになった人が、2本目見て離れていったから(笑)。

2本目のネタで時空が歪んだ

──ファイナルステージ進出が決まったときはどんな心境でしたか?

溜口 「あー、あのネタが残ってんか」と思って。どう考えても優勝するタイプのネタではないじゃないですか。

塚本 ネタ合わせする時間もまったくなくて。

井口 そういうときって、「2本やれればいい」って感じになるよね。

溜口 うん。マジで無欲だった。で、ネタやって審査員さんにもダメ出しされて(笑)。

井口 あそこで「ないな」って思ったよ。

溜口 “負けムーブ”やって、なんとかそこで爪痕残せたかな、くらいの気持ちだった。

飯塚 ただ、あれによってあとの2組のハードルが上がったと思うんだよ。ラブレターズがダメ出しされて、「ラブレターズはもうないだろうから、ほかの2組がいいネタ決めて優勝してくれ」みたいな空気になった。みんな前のめりになって、「もうちょっとハネろ、ハネろ」って期待しながら見ていたと思う。

井口 2本目がバチッと決まることって実はないんですよね。そりゃあみんな、1本目に強いネタをやるんだから当たり前で。そう考えると(ウエストランドが優勝した)2022年の「M-1」は改めてすごかったなと思いますよ! みんなめちゃくちゃウケて、その中でさらに爆発して僕らが優勝したわけだから。

溜口 あはははは!(笑) それはそうね。

井口 あんな決まることってないんだなって、ラブレターズを見て思った(笑)。

飯塚 緊張感もあれで1回解けたと思う。それがよかったというか、あとの2組に悪影響を与えたというか(笑)。急に賞レースの雰囲気じゃなくなって、バラエティ番組みたいになった。

井口 この連載でも言ってますけど、全賞レース、その場を掌握した人が勝つんですよね。

井口 「M-1」はその場を掌握した人が勝つじゃないですか。2022年の決勝を観返したときに、最後のほうでロングコートダディの堂前さんが「人前でこんなに悪口言う人初めて見ました」と言っていて、僕の話になっていたんですよ。その段階で“勝ち確”というか。みんなが「井口って奴はなんなんだ」という話をしてしまっている。今回はちょこちょこ令和ロマンの話題になってたんですよね。(司会の)今田耕司さんの「令和ロマンとは全然ちゃうな」とか。

飯塚 トップバッターの令和ロマンのことを最後まで忘れなかったよね。2本目のネタは以前見たことがあったんだけど、最後に吉本興業のくだりを足していたんだよ。あれがめっちゃよかったし、ウエストランドイズムを感じた。今まで架空の話だったのが、急に現実になって、吉本の審査員や今田さんも反応せざるを得なくなる。ウエストランドが優勝したときに爆笑問題・太田さんが言っていた「みんなを巻き込んじゃった」感じに近いなと思った。

【参照】「今月のお笑い」2023年12月号より、「“勝ち確”のサイン」

溜口 2本目のネタが変すぎて時空がぐわんって歪んだんだ(笑)。

塚本 そう思うと(ファイナルステージの)トップでやれてよかった。

飯塚 でも、審査員全員がラブレターズを知ってるから言えたことではあるよね。例えば初登場のcacaoにはダメ出しとかは言えないと思う。ラブレターズには言っても大丈夫ってわかってもらえているからああいう場面が生まれて、それが変な空気を生んだと思う。

井口 2番手のロングコートダディのネタはどういう気持ちで見てたの?

溜口 予選でネタは知っていたから「これ絶対ウケるやつじゃん」と思っていて、案の定ウケてたから「ここまでだったね」と塚本さんと話してた。ただ、(暫定ボックス中継担当の)シソンヌの長谷川さんは「全然あるぞ、あるぞ」と励ましてくれて。

塚本 長谷川さんだけが優勝を信じてくれてたね(笑)。

溜口 「てめえが負けムーブやったせいで優勝なくなるかもしれねんだぞ、こっからは前向きにやれ」と。で、ロングコートダディさんの点数を見たら、「え?」って。

井口 僕らも、3番手のファイヤーサンダーもあんまり伸びずだったから「あれ? ラブレターズじゃない?」みたいな感じにだんだんなって。みんな、ラブレターズって優勝しないと思ってたから(笑)。

溜口 いや、わかるわかる(笑)。報われない芸人みたいなね。

井口 面白いけど、優勝はしないっていう。だから、優勝が決まって「やったー」というより「え、マジ!?」みたいな感じだった。勝つことあんの!?っていう。

溜口 まったく同じ気持ちだったよ、うちらも。

塚本 「は?」っていう。

井口 飯塚さんはどうでした?

飯塚 同じ同じ。優勝する人たちだったんだ?って思った。

井口 僕らのときもそうだったからね。だから、あのへんから時空が歪み始めてるのかもしれない。優勝しなさそうなやつが優勝するようになっちゃった。

ラブレターズを囲む、ウエストランド井口と飯塚大悟

ラブレターズを囲む、ウエストランド井口と飯塚大悟

ファイヤーサンダー﨑山の無機質キャラ

──ほかのコンビのことも含めて全体的な感想もお願いします。

井口 シティホテル3号室、や団、ファイヤーサンダーもいたから、「こいつらが残るということは、あいつらが落ちるのか」という感じで、大変でしたよ、こっちは。みんなで応援上映してたので。

──モグライダーともしげさん、ジグザグジギー池田さん、浜村凡平太さん、ネコニスズ舘野さんなどとテレビ観戦していたんですよね。

飯塚 ウエストランド優勝のときは、僕と塚本くんと元ゾフィー上田くん、おせつときょうた・きょうたで応援上映してからね。

塚本 そうだ、そうだ。こっちだって「うわ、また10番手だ!」ってドキドキしながら観てたんだから。

【画像】そのときの様子。

井口 そもそも「お笑いの日」だったから、ギリギリまでTBSにいなきゃいけなかったんだよ。「出会い頭-1グランプリ」もわけわかんないし(※)。

塚本 いいよ、その話は。散々聞いたよ(笑)。

井口 なんにもやることねえじゃねえか! なめられたもんだよ、何がツッコミ凄腕5人衆だよ!? 普段やっているものを大掛かりでやって失敗した典型的な例! 二度とやらないよ! 「ベストワン」も全然ネタ合わせする時間ないし。ネタ合わせさせてくれよ!

※編集部注:井口はランジャタイ国崎と即興漫才をすることになったが、国崎が暴れ回ってまったく漫才にならなかった。

──文句はさて置き、「キングオブコント」はどうでした?

飯塚 僕は、決勝の前まではロングコートダディが優勝すると思ってた。ロングコートダディがウケたらロングコートダディが優勝して、ロングコートダディがウケなかったらcacaoが優勝するんじゃないかという気がしていて。新しい人を求める空気になって、ハナコが優勝した年みたいにドンと行く可能性もあるなと。

塚本 cacaoのネタは、本当、音どうなってるんだろう?

溜口 自分だったら嫌だよね、怖くてやりたくないよあんなネタ(笑)。

井口 みんな若くて運動神経もいいからあんなにうまくできるけど。

飯塚 トリオって大ボケ、小ボケとか、どうしても3人の個性が注目されがちだけど、そういうのなしで、誰が誰だかわからなくても面白いっていうのは新しいよね。登場人物A、B、Cみたいな。

塚本 それがマジですごいよなあ。

飯塚 もう1本も面白かったから、これからどんどん出てきそう。

溜口 でもよかったです、cacaoが決勝常連になる前に勝てたので。絶対いずれは優勝できそうなトリオですもんね。

井口 いや、でも解散するかもしれないから。

溜口 なんてこと言うんだよ!

飯塚 ゼンモンキーパターン?

井口 ゼンモンキーみたいに、ファイナリストになった翌年解散することも全然あるから。何があるかわかんない。僕は若い奴は信用ならないと思ってるので、cacaoはまだ認めるわけにはいかないです。

溜口 「認める」ってなんだよ(笑)。

──タイタンの後輩のシティホテル3号室はどうご覧になりましたか?

井口 僕や舘野さんは、知っているだけに冷静には見れませんでしたね。でもほかのみんなが「めっちゃいいよ!」って言ってて、そうか、と思っていたら上位に入った。

飯塚 松本(人志)さんが不在だからなのかはわからないけど、なんとなく(東京03)飯塚さんの空気があったよね。審査員長ではないけど、いいコントを評価しようみたいな空気感。

──飯塚さんはファイヤーサンダーの1本目に一番高い点数をつけていました。

飯塚 人間やキャラクターじゃない、設定の妙で勝った歴史があまりない中で、あのネタでファーストラウンド1位通過っていうのは画期的ではありました。ただ、本人的には「この設定すごい」「構成すごい」というよりも、手放しで「おもろー!」って言わせたかった部分もあるんじゃないかと思います。

塚本 芸人がうなっちゃうタイプのネタですもんね。

飯塚 ファイヤーサンダーがネタで爆発的にハネたのって、﨑山くんがメガネでシャツ着てる人物のときなんだよ。今回の1本目「毒舌散歩」の刑事とか、「無人島」のサラリーマンとか。「クプクドゥブフ」も刑事だし。

井口 前回の「日本代表メンバー発表」のスーツの監督とかですね。

飯塚 メガネでシャツとかスーツを着ている、一見無機質だけどなんか引っかかりのあることを言うみたいなキャラが﨑山くんに合ってる気がする。2本目のコントはネタとしてめっちゃいいけど、もしかしたら別の人がやっても面白くなるネタ。いろんなタイプのネタが作れるからすごいんだけどね。

「審査員の好み」とは?

井口 コットンはどうでした?

飯塚 カメラがあんなに人形に寄らなくてもよかったかなとは思った。人形そのものに意味はないから、もう少し全体を見たかった気はする。でも会場のウケや審査にはあまり影響なかったと思う。

溜口 ああいうのって誰が指示するんですか? 過去にもゾフィーの腹話術のネタで、(カメラワークが)点数に影響しちゃったりしましたよね。テレビの特番として放送するのか、賞レースとしてなのか。賞レースだったら、言ってしまえば定点でいいわけじゃないですか。

飯塚 「キングオブコント」はテレビコントと舞台コントの中間だから難しいよね。寄らないと「もっと寄ってくれよ!」と視聴者は感じるだろうし。ライブはお客さんが各々、舞台上の好きなところを見られるからね。

塚本 芸人側はカメラワークとかは知らないから、任せるしかない。

井口 漫才と比べてコントはなんでもありだから、今回見てても線引がムズいと思いました。どこまで小道具を使っていいのか、とか。究極言えば、おもしろ装置を作っちゃえばいいわけじゃないですか。そのへんのルールを決めないと評価のしようがない気はしましたね。

飯塚 「好みの問題」と言われているけど、その美学は絶対に人それぞれ違うからね。

井口 それが一番思いましたね。あれはニッポンの社長・辻くんがボケというか笑わせるために「好みですもんね」と言ったまでで、それに便乗してごちゃごちゃみんな言ってるけど、「M-1」のときのウエストランドのネタを考えてみろよ! 誰も好みじゃないだろ! それでも勝ったんだから、勝った奴が偉いんだよ!

溜口 あんな悪口言ってる漫才な(笑)。

井口 好みだったの? ウエストランドのネタが? そんなわけないだろ! あんなもん誰が好みなんだよ!? とにかく勝ったやつが偉いし、好みじゃない奴でも勝てるんだから。

飯塚 漫才はセンターマイクがあって、「動きすぎ」とかはあるにせよ、2人がしゃべっているという形は決まってるからね。一方、“コントの美学”みたいなものは一般の人に伝わりづらい。

溜口 素舞台にこだわってるとか。

飯塚 小道具に頼りすぎはよくない、とかね。伝わりにくい部分だとは思うし、漫才師の人とコント師の人でも違うし、西と東でも違うだろうから、難しい。ニッポンの社長って個人的にだけど、「ごっつええ感じ」のコントみたいな松本さん的な笑いの雰囲気を感じる。だから舞台コントよりテレビコントに近いのかな。

溜口 発想が全然違う感じがしますね。憧れる人はいっぱいいると思う。

飯塚 なんとなく西のコント師の源流は「ごっつ」のテレビコントから来てる気がする。東のコント師の源流は「シティボーイズ」「バナナマン」「ラーメンズ」とか、舞台のコントがベースにあるのかな。だから、評価が分かれるのはしょうがない。

井口 「テレビコントとしてはめちゃくちゃいいけど」と言われていましたけど、それもやっぱりルールがないからどうしようもないところですよね。

飯塚 小道具がダメなんじゃなくて、小道具をめっちゃ使うコントと小道具なしのコントが同じ面白さだったら小道具に頼ってないのほうがカッコいいってことだよね。

溜口 ケンカと一緒か。

井口 だからもう、やりたいことやるしかないよ。で、そのやってることをファンは応援するしかないんだから。ごちゃごちゃ言ったってしょうがない。

飯塚 準決勝のあとに、サスペンダーズと春とヒコーキが「よしもとの道具力がやばい」って言ってて。準決勝の春とヒコーキのセットがすごい手作り感満載だった。

井口 いろんな言い分があると思いますけど、僕はアンチよしもとなので、普通に「ズルいよ!」とは思います。

溜口 はっきり言うんだ(笑)。でも、それもわかってて事務所を選んでいるんだから、だったらみんなよしもとに入ればいい。逆に、道具を使わない、想像力を膨らませるようなネタを作ればいいわけだし。

塚本 今年の準決勝で、や団さんが学習机2個並べて「ここは居酒屋です」って顔してやってたのはめっちゃカッコよかった!(笑)

溜口 それも美学だよね。

飯塚 そのカッコよさがどこまで伝わるかっていう。

井口 それぞれだからね。もうやめたほうがいいかもしれない。「キングオブコント」で競うのなんて無理だよ!(笑)

溜口 だから本当に、「TVチャンピオン」(テレビ東京)じゃないけど、使える予算はこれだけってしたほうがいいかもね。

井口 まあ、僕はアンチよしもとだから見やすいけどね。その軸があるから。

塚本 なんだよ、その見方(笑)。

井口 「はい、小道具作った!」「はい、1人しか出てない!」とかできるから。

溜口 嫌な見方!(笑)

井口 全員のダメなところを無理やり見つけて言えるから僕は見やすいけど、ルールがない中で審査するのは難しいですよ。

飯塚 「化学調味料使ってません」みたいなラーメン屋がたまにあるけど、客は「なんでもいいよ、うまけりゃ」と思うわけで。ラーメン屋としては化学調味料を使うのは邪道だっていう思いがあるのかもしれないけど。そういうレベルのこだわりだよね。

塚本 まあ、よしもと以外の芸人はそもそも道具使うことを考えから外しちゃってますからね。

飯塚 巨大道具コントをまず書かない。

溜口 「再現できないからこのネタはやめよう」とか。

塚本 去年の壁叩くネタ(コント「義母と隣人の間に」)なんて、2人でレンタカー借りて壁運んでやってたんだから。

溜口 おじさん2人で、レンタカー借りて幕張まで行き来して。みっともないよ(笑)。

飯塚 ちなみに、どんぐりのネタ(コント「光」)の壁は去年の壁叩くネタから流用してるの?

溜口 あれは違うやつです(笑)。

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