ZEUS|再び動き出した3人、目指すのは「日本と韓国の架け橋」

K-POPはすべてを完璧にしたい韓国人の気質が形になったもの

  • チャンヒョン
  • インソク
  • ミンホ

──皆さんがSHU-Iとしてデビューした2009年は、まだ日本はもちろん世界的にも現在のようなK-POPブームは巻き起こっていませんでした。そんな皆さんは現状をどのように見ているのでしょうか?

インソク K-POPがブームになったのは、まず韓国が国としてK-POPをプッシュしてくれたのが大きい。もう1つは、韓国人の気質が関係していると思うんです。僕らには自分のマイナス面を見せたくないという気持ちが強くあります。とにかく全部完璧にしたい。例えば、背の低い女性はみんなハイヒールを履くし、ダイエットに対しても異常にストイックです。それは音楽も同様です。K-POPはすべてを完璧にしたいという韓国人の気質が形になったもの。だから、世界に通用するエンタテインメントに成長できたんだと思います。

ミンホ 今、韓国では年に200組くらいのグループがデビューしているそうです。若くてカッコいいグループがたくさんいて、正直、僕らも最近のアイドルは全然把握できません。新曲が出るペースも、トレンドが移り変わるスピードもものすごく早くなってる。でも、僕らはそういう勢いに巻き込まれず、自分らしくいたいんですよね。

──韓国で自分らしくいることは難しいと聞きます。

チャンヒョン そうですね。韓国は何かがブームになると、国全体がそれ一色になります。子供の頃からずっとそうでした。みんなで同じ服を着て、同じご飯を食べる。自分らしく、という意識は日本よりも低いと思う。でもそれは良し悪しの問題ではなく、そういう国民性なんですよ。

ミンホ これには僕らの歴史が関係しています。韓国は朝鮮戦争のあと、本当に貧しい国になりました。でもそこから驚異的なスピードで発展しています。それは僕らがみんなで一致団結したから。一丸にならなくては乗り越えられなかったんです。例えば、韓国では1人でご飯を食べないという文化がある。つまりみんなで団結するという意識が、日常生活の無意識レベルにまで刷り込まれているんです。

インソク 僕らは、生きていくため必死で個性について考える余地すらなかったんですよ。日本にも過去にそういう時期があったと思いますが、僕らは今まさに個性について考えられるようになってきたんです。

ミンホ でも韓国も変わってきてますよ。最近は1人でご飯を食べる人も増えてきた。みんな少しずつ多様性や個性というものを意識しはじめているように思えます。

──先日、3年ぶりに韓国に行ったんですが、若い人たちの多様性に驚きました。前回行ったときは、みんな同じファッションで、街ではどこに行っても同じ曲が流れていたのに。今韓国は急速に変化しているんですね。

ミンホ 韓国ってそういう国なんですよ。「빨리 빨리(パリパリ)」って知ってますか? 「早く早く」って意味です。これは韓国を表現した有名な言葉。日本語の「パリパリ」とはちょっとニュアンスが違う。早く結果を出したい。とにかく早く。だからみんな歩くのが速いし、ネットで流れてくるニュースの更新も速いし、トレンドもすぐに変わっていく。

インソク せっかちなんですよ。でもそれは僕らが日本と韓国を行ったり来たりしてるから、そう思えるんだと思う。ちょっと客観的になれるんですよ。僕らは韓国と日本のいい部分を混ぜていきたい。もちろん今はネットの時代だから、日本と韓国の情報をリアルタイムで知ることができるけど、やっぱり実際に体験するのは全然違いますからね。

ミンホ そういう意味では、僕は日本と韓国の感情表現の違いに最初戸惑いましたね。これは体験しないとわからなかった。韓国の人は思ったことをなんでもその場ですぐに言うんですよ。嫌なこともその場で直接伝える。でもそれは、そこで終わり。解決です。言われたほうは「そうか、自分はここがよくないのか。じゃあ、今度からは気を付けよう」と思う。でも日本の人は優しいから、よくないと思っても気を使って直接的な表現は避けますよね? そこはいまだに慣れないんです。自分に悪いところがあるなら、すぐに直したいから早く言ってほしいのに(笑)。

チャンヒョン 僕らは日本の人たちと比べて、過程よりも結果を大事にしてる部分はあるかもね。良し悪しの問題ではなく。やっぱり「빨리 빨리(パリパリ)」が染み付いてるんだと思う。瞬発力と言うか。

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日本と韓国の架け橋になる音楽を表現したい

──では、ZEUSは今後どのように活動していきたいと考えていますか?

インソク 今韓国では、BTS(防弾少年団)みたいな新人グループがたくさん作られています。でもそれはあくまでBTSふうであって、オリジナルではないと思うんですよ。

ミンホ そうだよね。最近の韓国の音楽も、K-POPもゴリゴリのヒップホップばっかり。「彼女を俺のものにしたい」「金が欲しい」みたいな。そういう人たちにとって「Thunder」はちょっと物足りないかもしれない。でも僕らは瞬間的なインパクトより、心に残る曲を作りたい。歌を聴いた人にジワジワと影響を与えるような。

チャンヒョン ZEUSスタイルを作ることが大事。

ミンホ 僕らは日本の昭和のポップスに影響を受けています。当時の音楽は韓国でも特に歌詞が評価されているんです。僕らはそういう歌を歌いたい。歌詞に込められたいろんな経験を伝えられるような。韓国の音楽のいいところと日本の音楽のいいところを、僕らの感覚でミックスしたい。

インソク 僕らが日本と韓国の架け橋になりたいしね。

チャンヒョン うん、僕らは自分たちの信じる音楽を歌い続けたい。そして、いつか僕らのスタイルがK-POPを代表するようになりたいよね。

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