アニメ「魔術士オーフェンはぐれ旅」 PR

「魔術士オーフェンはぐれ旅」特集 buzz★Vibes「Calling U」インタビュー|主題歌に込めた「オーフェン」への強い思い

秋田禎信のライトノベル「魔術士オーフェン」を原作としたテレビアニメ「魔術士オーフェンはぐれ旅」が1月7日より放送されている。

1998年から2000年にかけて放送され、このたび原作1巻刊行25周年という節目に新作テレビアニメが制作された「魔術士オーフェン」シリーズ。これを記念して、コミックナタリーと音楽ナタリーでは、ジャンルをまたいだ連載特集を展開している。最終回となる音楽ナタリーの特集では、オープニング主題歌「Calling U」を担当しているbuzz★Vibesのインタビューを届ける。20年ぶりに再び主人公のオーフェンの声優を務めているボーカル“M.K.B”こと森久保祥太郎(Vo)は、どのような思いを楽曲に込めたのか? このアニメの劇伴も手がけているキーボードで元SOUL'd OUTのトラックメイカーShinnosukeは、どのように「魔術士オーフェンはぐれ旅」という作品に向き合っていったのか? 深くアニメに携わっている2人にたっぷりと語ってもらった。

取材・文 / 杉山仁

「オーフェン」の世界の中で演奏している

──最新シングル「Calling U」は、森久保さんが約20年前にも主演を務められていた「魔術士オーフェン」シリーズの最新テレビアニメ作品ですが、その主題歌をbuzz★Vibesとして担当できるというのは、ものすごい巡り合わせですね。

テレビアニメ「魔術士オーフェンはぐれ旅」ビジュアル

森久保祥太郎(Vo) これはもう、びっくりですね。20年ぶりに「魔術士オーフェン」がアニメ化することも、僕がまたオーフェン役をやらせていただくことも驚きですし、僕はこれまでアニメの主題歌をやってきていないので、それが全部この作品でつながるというのは、このうえない気持ちです。「Calling U」についても僕の思い入れが強くて、Shinnosukeと何度もやり取りをして、トラックを3、4バージョン作ってもらいました。そのときに見えていた景色が、今回のCDジャケットのように、登場人物たちが風を感じながら、荒野キャラバンをしていくイメージだったんです。「そこで聴こえる音ってどんなものだろう?」と考えて、ガットギターのような音色を連想していきました。確か、2019年の春頃の話だと思いますね。

Shinnosuke(Key) そうそう、その頃でした。僕の場合、「魔術士オーフェン」の存在は知っていたものの、前回のテレビアニメシリーズを観ていなかったんですよ。そこで、まずは森久保くんに作品の魅力を教えてもらいました。とはいえ、“オーフェンが歌う曲”にすると、buzz★Vibesの曲ではなくオーフェンのキャラソンになってしまうので、その微妙な距離感の中で、見える世界観や作品の魅力をゼロから教えてもらいつつ音にしています。ファンの方たちには以前のアニメではつんくさんが楽曲を手がけていたイメージもあると思うので、僕らがやらせてもらうにあたってのアイデアを、いろいろと共有しながら考えていきました。

森久保 最終的に完成したものは、第4、5形態くらいのものです。当初はAメロも今のような感じではないバージョンがあって……。

Shinnosuke イントロも全然違っていたんですよ。最初はもっとアニソン寄りの音で、構成もいろいろと違っていたので。

森久保 でも、途中で「アニメの主題歌だからといってアニソンっぽくする必要はない」という話になって、曲調が変わっていきました。その中でShinnosukeから、曲の中で全体的に聞こえてくるピアノのフレーズが「バン!」と出てきて。そのときに、僕ら2人が「魔術士オーフェン」の世界の中で演奏しているような絵が浮かんできたんです。

──音階を上下していくピアノのフレーズは、聴いていてもとても印象的でした。

森久保 歌詞に関しては、アニメの収録が始まる前にAudible(オーディオブック)で原作を朗読する機会があったので、そこで改めて作品に向き合っていて。秋田先生の文章はキャッチーな言葉の連続なのでどこを切り取っても歌詞になるし、buzz★Vibesとして落とし込みたいテーマとのつながりも感じました。20年前にオーフェンを演じた頃は、僕自身若かったこともあって感じるままに演じていたんですけど、改めて原作に向き合ってみると、当時は“気概のあるお兄ちゃん”だったオーフェンのイメージが、“まだ未熟なところもある青年”に変わっていて。そこから、「この先に進むことがあっているかどうか確証はないけれど、進まなきゃいけないときがある」というテーマが出てきました。オーフェンだけでなく、僕ら自身だって、今進んでいる道が正しいかどうかの確証はないわけです。そういう意味でも、作品と僕らの気持ちに共通するテーマが見つかったと思います。

──歌詞の「Remember U」や「We're gonna start again」という言葉からは、オーフェンの気持ちだけでなく、森久保さんとオーフェンとの関係性が想像できるようにも感じました。

森久保 ああ、なるほど。僕が歌詞を書くときは、自分がどう思うか、どうしたいかを大事にしていて。「Remember U」の「U(=You)」は、確かにオーフェンの言葉として捉えるとアザリーたちへの気持ちが想像できると同時に、僕自身としても“まだ見ぬ自分”や“自分の理想”に思いを馳せるような、過去や今の自分を俯瞰で見ているイメージだったんです。僕の歌詞の「You」にはいつもそういう部分があるので、今回はそれを僕のオーフェンへの気持ちと解釈していただいてもいいかもしれないですね。僕自身のこととして捉えてもらってもいいし、聴いてくれた人が自分を重ねてもらってもいいという感覚です。

わからないけど、行くしかない

──Shinnosukeさんは、アレンジ面で今回特にこだわったことはありますか?

Shinnosuke アニメの主題歌は約90秒の中で成立するものにしなければいけないというフォーマットがあるので、それをどう生かすのか、もしくは崩すのかを考えました。曲を作る前にアニメを全部観たほうがいいのか相談したんですけど、今回は今のテイストで新しくアニメ化されるので、「あえて知らないまま作ってもいいんじゃないか?」という意見をもらって。最終的に、「今回はあえてフラットな形で、buzz★Vibesとしていいものを作っていこう」と切り替えていきました。ただ、SOUL'd OUTで主題歌をやらせていただいていたときもそうですけど、「原作に対するリスペクトを持ちたい」「ファンの人たちの作品に対するイメージや、その聖域を汚しちゃいけない」という気持ちもあったので、その部分は「オーフェン役を長年演じ続けてきた森久保くんがOKを出したなら、それはきっと大丈夫だろう」という信頼関係の中で、何度もリテイクをしながら作っていきました。

──制作中、お二人のやり取りの中で印象的なものはありましたか?

森久保 僕はやっぱり、ピアノのフレーズですね。「ほら、あの曲」と話すときに、口ずさめる印象的なものを入れたかったんです。あのピアノって、わりと全編に入っているよね?

Shinnosuke サビにもボリュームを下げて入れていて、サブリミナル効果になってます(笑)。

森久保 なんでそこにこだわったのかは自分でもわからないんですけど、ピアノのフレーズが上がってきたときに、「これだよね! これをリフレインしよう」という話をしたんですよ。「まだ見ぬ先へ進んでいくこと」や「果たしてその先に、自分の求めているものがあるんだろうか?」という、「わからないけど、行くしかない」という決意や、それでも揺らぐ思いをグッと押さえつけるような、そんな感情に合うかどうかを考えて判断していきました。

──お二人のようにキャリアを積まれてきた方が、今も「先の見えない旅を進んでいく」という気持ちでいるのは、とても難しいことなんじゃないでしょうか? もうそういうことを考えないこともできると思うのですが……。

森久保 いえいえ、そんなことは絶対ないですよ。不安しかないですから(笑)。

Shinnosuke そうそう、それは昔も今も変わらないことなので。

森久保 例えば、「自分たちが表現したいことを本当に表現していけるのか?」ということについてもそうですし、プライベートも含めたパーソナルなことについてもそうですし。それに、やっぱり自分の中に、まだまだ「こうなりたい」という理想の姿があるので、この曲ではそれをいっさいがっさい落とし込んでいけたらいいな、と思っていましたね。

大きなテーマが隠れたイントロ

──「Calling U」は、過去のbuzz★Vibesの楽曲とはかなりテイストが違う楽曲ですね。

Shinnosuke そうですね。ガットギターもそうで、やっぱり、荒野の乾いた雰囲気ですよね。今回のレコーディングでは今までの打ち込みのダンスパーティのような楽曲とは違う方向性にしたかったので、生でギターを入れたり、ミックスでもいろいろと工夫をしたりしています。特にギターで参加してくれたおれパラバンドの(鈴木)マサキさんは、昨年12月の「Lantis Presents Original Entertainment Paradise -おれパラ- 2019 ~WA!!!!~」でも一緒に演奏してくださった方で、スパニッシュなギターを入れてくれました。

森久保 今回僕はバンドのレコーディングには立ち会えなかったんですけど、マサキさんはガットギターを含めてギターパートを全部やってくれたんですよね。大変な作業だったと思います。

Shinnosuke 去年おれパラバンドとして先輩方を観ていたので、その方と一緒にやれたことが光栄でした。それから、ベースはVoid_Chordsとしてソロでの活動もしている方なんですけど……。

──高橋諒さんですね。

Shinnosuke そうです。彼はイメージ通りの音をそのまま全部やってくれて、「こんなに再現してくれるベースプレイヤーは初めて」という感覚でした。ベースってそれ次第で楽曲のグルーヴが変わる楽器なので、僕としてもすごくこだわりがある部分なんですよ。それからドラムの鈴木達也さんも大御所の方なので、少し伝えると「ああ、そういう感じね」と言って素晴らしいプレイをしてくださって。そんなふうにミュージシャンのテクニックに浸れる、幸せな時間でした。

──森久保さんは、今回ボーカリストとして意識したことはありますか?

森久保 いつもは曲ができてから、「こういうテーマで歌おう」と歌詞を考えていくんですけど、今回はむしろ「オーフェン」に対する僕の気持ちありきで、そこに楽曲を合わせてもらったので、歌っていてもこれまでとは違う感覚でした。曲を作る前から、歌としても合わせるべき照準がはっきりしていたんです。「-おれパラ- 2019 ~WA!!!!~」で初披露したときも、めちゃくちゃ爽快で気持ちよかったですね。特にサビは、広い空に向かって「自分の願いが届け!」と歌うような感覚で。ミュージックビデオを撮っていても、サビでバッと手を上げたくなる感情が生まれて、実際にそうしたんですけど、ライブで歌っても同じ気持ちになりました。僕はライブではいつもお客さんと向き合うような感覚でいるので、これは新鮮でした。buzz★Vibesの曲も自分のソロ曲も含めて、そういう感覚で歌えたのは初めてかもしれない。慣れ親しんだ「おれパラ」の舞台でも新鮮に感じられたという意味でも、特別な曲になった気がします。

──ちなみに、イントロの部分には語りのようなパートが入っていますよね。これはどんなアイデアから生まれたものだったんですか?

森久保 これは、Shinnosukeが作ってくれたデモの段階からあったんですよ。

Shinnosuke よくヒップホップでラッパーが助走としてイントロにフレーズを入れていくことがありますよね。これまでのbuzz★Vibesの曲でもいろいろと入れていますけど、それと同じように、曲の世界に没頭してもらうための要素として入れています。この部分の歌詞は曲の説明をしてほしいわけではなくて、催眠術のように曲の導入になってほしい、というイメージで。僕の中では、それがあることでアートフォームとして完成する感覚があるんです。

森久保 この部分は歌詞カードには載らないと思うんですけど、実はこのパートで、この曲のテーマが表現されていたりもします。なのでよく聴いていただければ、実はここに楽曲の大きなテーマが隠されていることが伝わると思います。