音楽ナタリー Power Push - nowisee
現代のいびつな音楽市場にアプリで勝負を挑むプロジェクト
首謀者・Minimum Root メールインタビュー
──nowiseeの結成、始動に至った経緯を教えてください。
出会いはもうずいぶん前なのですが、会わなかった期間もかなり長かったんです。それぞれが、夢を持ったあの頃のひたむきさを失いかけて、ある意味で“無”に近い状態になっていたというか……。それが昨年初頭、感性が惹かれ合うというか、インフレーションが起きたんです。まずUnisonの「バンドやってみたくない?」という軽い誘いから始まり、今ならずっと温めていたことができるかもしれない……そう感じたんです。それからの膨張するエネルギーはすごかったですね。まさに生命そのものの力強さがありました。僕たちがリスナーに「生きる意味」を問う、ではなく、僕ら自身に対しても「生きる意味」を問う。そんな気持ちで始動しました。
──活動を行うにあたり、どのような基準でこのメンバー構成になったのでしょうか。
メンバー構成を考えるにあたってもルールはなかったです。普通なら曲を作って(なんなら作家さんが曲を書いて)、アレンジャーさん(プロデューサー)に頼んで編曲して、エンジニアさんに録音してもらい、ミックスエンジニアさんにミックスしてもらう。そして、MV監督さんにMVを撮ってもらう。その過程において行われる伝言ゲームや、誰かの常識に塗りつぶされるのが嫌だったんです。これはこういうものなんだよって。僕らにとってはそんなもの関係なくて。伝えたいこと、それが伝えられる最高の形に、決してルールなど存在しないので。以前、BOOM BOOM SATELLITESのアーティストミックスを聴いたとき、本当に素晴らしいと思ったんです。鳥肌が立った。彼らはバンドという形の中に存在する無数の可能性を示していました。そしてそれを意識して脳内でひたすら描いたんです。「伝えたいことがある」それをどうすれば伝えられるか? とすれば、どんな人間が必要か……。そう考えているうちに、惹かれ合うパズルが集まってできた集合体、それがnowiseeです。
──各メンバーの印象、特徴を教えてください。
名は体を表す。そのままです(笑)。
──全24編の物語「52Hz」のアイデアはどのような発想から生まれたのでしょうか。
物語の最後に語りたく思います。
──物語の展開は#24まですべてできあがっている?
あります。
──作品発表の場に独自のアプリを選んだ理由は?
今ある形。定額音楽配信サービス、CD。僕たちが伝えたいことを限定したくない。アプリには無限大の可能性があります。今、ほとんどの人がスマートフォンを持っています。そして、アプリはそのすべての人たちとつながることができる。「手のひらの中に広がる世界。」それが1つのテーマでした。
──楽曲の制作方法は? 作詞、作曲、編曲の過程を教えてください。
nowiseeはtoneを除く全員が曲を書きます。Octaveが持ってきて編曲されていくこともあるし、Addがトラックを持ってきてメロディが乗ることもある。メンバー同士の共作もあれば、誰かが作った土台をもとに、編曲過程でのキャッチボールで完成していくこともある。歌詞は歌う人間から出てくる言葉のほうが説得力がでるのでOctaveが書いています。彼女は負けん気も強いので、これだというものになるまでひたすらトライしてますね。とはいえこれといったルールもないです。そこもnowiseeを表現する上で重要な要素です。
──MVを制作する上でこだわっているポイントは?
物語性を持ちつつも「MVであること」。これはtoneが常にこだわっているポイントです。楽曲や歌詞とのリンク、MVとしていかに視覚的に楽しめるか。彼の映像作品は、狂気と美が入り混じっていて、いつも興奮します。
──現在の音楽シーンについて思うところ、その音楽シーンにおけるnowiseeのスタンスを教えてください。
現在の音楽シーンは“客観性”の部分が大きく、偏りがあります。音楽業界全体が元気がないので、どうしても売れているものを追うという流れになってしまってる。その中で僕らは「主観的であること」を武器にしています。「流行っているから真似る」ではなく、流行や偏見さえ砕く雷撃で、人の心に届けたい。
──nowiseeを通してもっとも伝えたいメッセージはなんですか?
-生きる意味を問う-
nowiseeに触れる皆さんに、そして僕らに。novelの最終章を楽しみにしていてください。
──24編を発表したあとのnowiseeの展開は考えている?
考えてあります。
──今後どのような形かでライブを行う可能性は?
今は考えていませんが、そのときがくれば……あるかもしれないし、まったくないかもしれません。