なくなることのない探究心にリスペクトを

──そんな楽曲も収録されたアルバム「THE DREAM QUEST」ですが、三浦さんはひと足先に全曲をお聴きになられたそうですね。どうでしたか、今作は？

「ここまで音楽的に昇りつめているのか！」というのが正直な感想です。すでにオリジナルとして成り立っていて、ほかに変わる存在なんていない状況になっているにもかかわらず、まだ新しい音楽を探求されているんだという衝撃を受けましたね。これをドリカムのお二人にやられてしまったら、そのあとの世代である僕たちなんて太刀打ちできません（笑）。またデビュー以来、常にジャンルの枠を超えて“DREAMS COME TRUEの音楽”を作り続けていらっしゃいますが、それでもまだたどり着けていない場所があるんだなって。そういう探究心を持ち続けているからこそ、どの時代でも僕らの耳に残る名曲をたくさん作り続けていられるんだと感じることができました。

──ドリカムのお二人から、今回のアルバムについて話をお伺いすることはありましたか？

きっとアルバムの制作期間中に僕とライブのリハーサルとかでお会いしているとは思うのですが、そういったことは一切口に出していらっしゃいませんでしたね。と言うか、お二人とあまり音楽の話を深くしたことがないのかも。気さくに話しかけてくださるんですけど、音楽以外のことがほとんどで。きっとお二人はそういった他愛のない話にもアンテナを張り巡らせていて、そこからいろんな人の気持ちに瞬時に気付いて、楽曲を作られているのかなって思いました。

──ドリカムのお二人のどんなところに、観察眼の鋭さを見抜きましたか？

鋭さじゃないかもしれないですが、器の広さを感じました。「ドリウタフェス」のときに、吉田さんが「大知くんって目が離れているから、私は他人とは思えないんだよね」と言ってくださったんですよね。それがすごくうれしくて、自分もドリカムファミリーの仲間入りをした気分になれて、緊張がほぐれました（笑）。どんな人も迎え入れて、その人が表現しやすい環境作りをしてくださるところが素晴らしいなって思いました。

──アルバムにもどんな音でも柔軟に受け入れてそれを独自のカラーに染めてしまうようなマジックがあるように思いました。

その通りだと思います。ドリカムのお二人は作品を発表するごとに常にプラスαの世界を作り上げているんじゃないかって。

ドリカムと三浦大知の共通点

──今回のアルバムで特に印象に残った楽曲はありますか？

どれも素晴らしい楽曲なのですが、特に印象に残ったのは「KNOCKKNOCK！ - TDQ VERSION -」ですね。おそらく皆さんがイメージするドリカム音楽のど真ん中を行くような楽曲だと思います。ストレートなディスコダンスミュージックという感じ。また照明が消えてライブがスタートする瞬間の高揚感が、すぐにイメージできる仕上がりでもある。タイトル通り「DREAMS COME TRUEの扉が開いた！」ということを感じさせる楽曲だと思いましたね。

──なるほど。

また「堕ちちゃえ」も印象的でした。ドリカムさんの音楽は幸福感にあふれ、聴く人の心を温かくする印象の楽曲が多い中、これはそのイメージに逆行するようなもの。ドキッとしたと言うか、心に突き刺さるものがありましたね。

──確かに。ダークな表現が目立ちますよね。

「堕ちる」という漢字を使うのも面白いなって。でも、この楽曲にはこの表現しかないと思わせる力がある。ダークサイドなドリカムはいちファンとして純粋にカッコいいなと思いました。

──アルバム全体を通して同じミュージシャンとして刺激を受ける部分はありましたか？ もしくは「こんなことが表現できるなんて！」と嫉妬した部分はありますか？

嫉妬だなんて……僕がドリカムさんに敵うところはないので（笑）。吉田さんが歌えばほかには替えがないドリカムの世界が広がる。それを音楽的な大冒険をしながら表現した作品に仕上がっているのかなと思います。

──中村さんのアレンジに関してはいかがですか？ 今回はディスコポップなものから、最新のEDMやR&Bを意識したものまで幅広いトラックが楽しめますが。

聴いた人の心を高揚させるようなダンスミュージックが多い印象でしたね。その反面メロディアスな楽曲も魅力的でしたし。幅広いジャンルのサウンドを最終的にドリカムテイストに変えてしまえるところは、さすがだなって思います。僕はマイケル・ジャクソンのパフォーマンスを見て「この人は何をやってもマイケルなんだ」と感じたんですけど、ドリカムさんも同様に、どんなジャンルの音楽を取り入れようが、お二人がパフォーマンスすることによって、自然に“DREAMS COME TRUEの音楽”になっている。僕もそういうほかにはない“三浦大知の音楽”を作ることを目指して活動しているので、改めてその目標を叶えたいと強く思えるようになったアルバムでもあります。

──ミュージシャンとして、学ぶ部分が多かったということですね。

そうですね。また最近の音楽ってピッチに合わせて、ボーカルを配置していくような機械的な方法で楽曲を完成させるものが多い中、お二人はそこをあまり重要視していない気がしました。心の底から歌っている様子や曲のよさが純粋に伝われば正確さにこだわる必要はないと言うか、歌の本質をきちんと理解したうえで制作されているんだなというところが伝わってきて、そこも見習うべきだなと思いましたね。

──またパフォーマーとしても、ダンサーを迎え入れるスタイルは三浦さんに通じる部分がありますしね。

お二人は音楽やダンスなどを通じて遊園地的なエンタテインメント空間をずっと作り続けていますよね。そういう部分は僕も表現したいところではあるので、刺激になります。

──ダンスに関して、お二人とお話ししたことは？

特にはなかったですね。この間のライブで共演させていただいたときに「私たちのダンスは大知くんにとっては簡単な部類に入るものだと思うから、好きなように踊って」と言っていただいて、わりと自由にやらせていただいた部分はありました。でもリハーサル中にダンサーの方々とお二人が綿密に打ち合わせをされていたので、そういう部分も大切にされているんだなという姿を感じることができましたね。

──そうなると、このアルバムを携えたライブも楽しみになってきますよね。

そうですね。ジャケットにはいろんなモンスターたちが登場していて、ブックレットを開くとそのキャラクターの説明がされているんです。それが本当に面白くて。個人的には「バックパク」というキャラクターがお気に入りです。きっと次のライブでは収録曲はもちろん、これらキャラクターを駆使して、何か面白いことが起こるのではないかな？と思っていて、今から行きたくてウズウズしています（笑）。

以前のことを知らなくても楽しめる寛容な作品

──今回の一連のドリカムとのコラボレーション、そしてアルバム「THE DREAM QUEST」を通じて、三浦さん自身の今後につながるアイデアも浮かんだのでは？

今回お二人と共演させていただき、そしてアルバムの収録曲を聴かせていただいたことを通じ、ジャンルにとらわれずに活動して、それが今ではDREAMS COME TRUEというひとつのジャンルになっているということを肌で感じました。それによって自分も同じような姿勢や目標を持ってこれまで活動してきたことが決して間違いじゃなかったということに気付くことができましたし、今後もお二人のように探究心を失うことなく活動をしなくてはと、襟を正されたような気分にもなりましたね。

──次にドリカムのお二人と共演される機会があれば、どんなことをしてみたいですか？

今回はお二人から提供していただいた側だったので、次の機会をいただけるのであれば僕が振付を担当したいですね。それをライブで披露していただけたらこんなに幸せなことはないと思います！

──それはすぐにでも実現しそうな気がします。ダンスの具体案はありますか？

ドリカムさんの楽曲は全体にソウル感がある。今の自分のダンススタイルに通じる部分があるので、そこをミックスさせたら面白いものが見せられるのでは？と思います。

──実現する日を楽しみにしています！ 最後に、ドリカムと言うとキャリアも長いし、何をどう聴けばいいのかわからず敷居の高さを感じているリスナーもいると思うので、そういう人に向けて今回の「THE DREAM QUEST」の魅力を教えていただけますか。

映画やドラマのシリーズものだと、それまでのストーリーの流れを知っていないと楽しめない作品が多いような気がしますが、ドリカムさんの音楽は常に新しい発見を与える楽曲ばかりが収録されているので、以前のことを知らなくても楽しめるものなんです。もちろん過去の楽曲を知っていたら、さらに楽しめるとは思うのですが、その都度で満喫できるものをちゃんと提示してくださっている。説明する必要のないくらい名曲をたくさん作り出しているのにも関わらず、敷居が低いんですよね。誰をも笑顔で迎え入れてくれる寛容さが、このアルバムにはあります。また事前情報に左右されず、心赴くままに楽しんでいただくことを、お二人も望んでいらっしゃるのかなとも思いますよ。