「ピーチボーイリバーサイド」|ファンタジーとして現代によみがえった「桃太郎」を3つのポイントで紐解く 白石晴香(サリー役)と東山奈央(ミコト役)が選ぶベストエピソード&コメントも

7月1日から9月16日までTOKYO MX、BS日テレほかにて放送されたアニメ「ピーチボーイリバーサイド」。誰もが知る“あの童話”をもとに、ある国のお姫様にして“桃の力”を持つサリーの旅や、人々を脅かす“鬼”との戦いを描くファンタジーだ。テレビ放送では物語の時系列がシャッフルされた“オンエア版”、dアニメストアでは同バージョンに加えて“時系列版”が配信されるという、珍しい放送・配信形式が採用された。

コミックナタリーでは「ピーチボーイリバーサイド」のBlu-ray BOXが発売されたことを記念して特集を実施。同作のポイントを3つにまとめて紹介するほか、サリー役の白石晴香、ミコト役の東山奈央に全12話の中からベストエピソードを挙げてもらった。オンエア時に観なかったという人には「ピーチボーイリバーサイド」の魅力を知るきっかけに、視聴していたという人には改めて作品を振り返ってもらう機会になれば幸いだ。

構成・文 / 齋藤高廣

「ピーチボーイリバーサイド」を3つのポイントで解説

1 アニメ化作品多数のヒットメーカー・クール教信者の原点

アニメ「ピーチボーイリバーサイド」の原作は、クール教信者とヨハネが少年マガジンR(講談社)とマガジンポケットで連載している同名マンガ。さらに同作も、もともとはクール教信者がデビュー以前から描き続けてきたWebマンガをリメイクしたものだ。このWebマンガはアクセス数750万を超えた人気作品で、今でも投稿サイト・新都社で読むことができる。

クール教信者といえば「ピーチボーイリバーサイド」と同時期にオンエアされた「平穏世代の韋駄天達」「小林さんちのメイドラゴンS」をはじめ、「小森さんは断れない!」「旦那が何を言っているかわからない件」と数々のアニメの原作マンガを手がけたことで有名。そんなヒットメーカーの原点の1つとも言える作品を映像化したのが、アニメ「ピーチボーイリバーサイド」だ。

2 誰もが知る童話「桃太郎」を大胆にアレンジ!“桃の力”を持つ2人が辿る、異なる旅路

アニメ「ピーチボーイリバーサイド」を語るうえで欠かせないのは、誰もが知る童話「桃太郎」をモチーフにしているということ。「もし流れてきた大きな桃が1つではないとしたら」「日本に流れてきた桃が複数あるうちの1つに過ぎないとしたら」というif設定のもと、鬼に対抗できる“桃の力”を持った2人のキャラクターの旅路が描かれる。

そのうちの1人はアルダレイクという小国の姫・サリー。彼女は、同じく“桃の力”を持つ少年・ミコトとの出会いと別れをきっかけに、国を出て世界を旅することになる。サリーはその道中で鬼とも人間とも異なる亜人のフラウ、もとは鬼だった少女・キャロット、人間の剣士・ホーソンといったさまざまな種族・境遇のキャラクターと仲間に。旅の経験を通して人、鬼、亜人をお互いに「妥協させたい」と考えるようになっていく。

一方のミコトは、とある過去の出来事がきっかけで鬼への憎しみに取り憑かれてしまった、この作品における“桃太郎”。鬼を皆殺しにするためだけに各地を巡り、いつしか“魔物狩り”と呼ばれるようになった。同じ“桃の力”を持ちながらも、その在り方は大きく異なるサリーとミコト。そんな2人の旅の果てにあるのは対立か、それとも……。

3 人と鬼は共存できるのか?サリーが目指す理想と現実の衝突が生み出すドラマ

“桃の力”を持つ者の1人であるサリーの目的は、険悪な仲の異種族同士を「妥協させる」こと──つまり鬼や亜人たちと共存することだ。しかしその道のりは決して易しいものではない。サリーと同じ力を持つミコトは鬼への憎しみゆえ、共存を望まない。また人間たちはその多くが鬼や亜人を恐れ、忌み嫌っている。

そして鬼の側にも、サリーが戦った樹鬼をはじめ、人を憎む者は多数。中には“共存派”も存在するが、その筆頭である皇鬼は一見サリーの考えに共感を示しつつも、裏で何かを企んでいるようだ。

前途多難なサリーだが、そんな彼女だからこそ救うことができたキャラクターもいる。その1人が、もともと“眼鬼”という強力な鬼だったキャロット。彼女はミコトに角を折られて力を失ってから、同族である鬼からも嫌悪されるようになってしまうが、サリーが旅の仲間に受け入れたことで、新たな居場所を得ることになる。このように種族や境遇、価値観の異なるキャラクターたちが時にぶつかり、時に和解することで生まれるドラマは、「ピーチボーイリバーサイド」の大きな魅力の1つだ。

メインキャスト2人に聞いたベストエピソード

ここではサリー役の白石晴香、ミコト役の東山奈央が選んだベストエピソードを紹介。2人からは選出理由や見どころについて語ってもらったコメントも到着している。

TVアニメ「ピーチボーイリバーサイド」第12話より。 TVアニメ「ピーチボーイリバーサイド」第12話より。

白石晴香(サリー役)が選んだ
ベストエピソード

第12話(時系列版6話)「決意と別れ」

あらすじ

樹鬼との戦いで“種族”という名の壁を目の当たりにしたサリーは「この場にいる全員、和解しよう!」と訴えかける。しかしそんなサリーの提案を一蹴した樹鬼は、人と鬼が和解できない理由を語り出すのだった。一方その頃、ミコトと対峙した皇鬼も鬼と人が共存する道を説くのだが……。

このエピソードを選んだ理由と見どころ

白石晴香

好きなシーンがいっぱいあるので、一つに絞るのが難しいですが…強いて言うなら!最終話の「爬人と人間とエルフがお喋りしているところ」です。
このシーンは、サリーが旅をしてきた意味が詰まっていると思います。
大きな戦いを経験したことにより、サリーもまた一つ成長し、自分の見たかった景色を見ることができた。
「妥協させたい」という目標を掲げてひたすら前に進み続けて来たサリーが報われた瞬間を見ることができ、演じさせていただいた私としても、とても幸せでした。

白石晴香(シライシハルカ)
4月8日生まれ、東京都出身。トイズファクトリー所属。主な出演作に「ゴールデンカムイ」(アシㇼパ役)、「ヒーリングっど♥プリキュア」(ラテ役)、「終末のハーレム」(周防美来役)、「86―エイティシックス―」(カイエ・タニヤ役)、「ぼくたちは勉強ができない」(古橋文乃役)ほか多数。
TVアニメ「ピーチボーイリバーサイド」第9話より。 TVアニメ「ピーチボーイリバーサイド」第9話より。

東山奈央(ミコト役)が選んだ
ベストエピソード

第9話(時系列版12話)「ミコトとミコト」

あらすじ

桃から生まれた桃太郎こと吉備津彦命。彼はお供の犬を引き連れて鬼ヶ島に乗り込むと、鬼の大将を見事に討ち果たした。戦いを終えた吉備津彦命はある日、特殊な生い立ちの少年と出会って……。

このエピソードを選んだ理由と見どころ

東山奈央

ミコトはどうして鬼を憎んでいるのか。彼が旅に出るまでの、いわゆる“前日譚”となっています。
台本を読んで、原作を読んで、あれだけ分かっていたはずのストーリーなのに、オンエアを観てまた泣いてしまいました。
彼は愛情を知っているから、憎くて憎くて仕方がないんですよね。
私も全力で心を張り裂けさせ、ミコトとシンクロして嘆き叫ぶために、今の自分にある全てでぶつかっていきました。
このエピソードに触れていただくことでより作品を深くお楽しみいただけると思います。

東山奈央(トウヤマナオ)
3月11日生まれ、東京都出身。インテンション所属。2010年に声優デビューし、同年にアニメ「神のみぞ知るセカイ」の中川かのん役に選ばれる。主な出演作に「きんいろモザイク」(九条カレン役)、「ニセコイ」(桐崎千棘役)、「マクロスΔ」(レイナ・プラウラー役)、「ゆるキャン△」(志摩リン役)ほか多数。