ラップを家庭に浸透させることができるやりがい

──ラップに関しては何かこだわりはありますか？

KMC　T-Pistonzに入る前に比べると、そんなに韻を気にしなくなりましたね。韻を踏むことだけがラップではない気もするし、そこばかり気にしすぎるとやっぱり固くなるっていうか、素直に言葉が吐けなくなってくるから。なので、ナチュラルな普段のしゃべり言葉を使ってラップを作るようにしてます。アニメも素直だし、この人（トン・ニーノ）の歌も素直すぎるから（笑）、俺が作り込んでもしょうがねぇかなって。でも、リズムの取り方だけはしっかりやるというかね、簡単には歌わせないぞっていうのは常々思いつつ書いてます。

トン・ニーノ　でも子供は大合唱だけどね（笑）。ラップの大合唱って、なかなかないじゃないですか。KMCのラップがすごいのは、そういうところだと思うんですよ。子供でも大人でもちゃんと歌詞が聴きとれて、一緒に歌うことまでできちゃうっていう。愛知のコンサートにひとりで観にきてくれるおばあちゃんがいるんですけど、歌詞がいいって言ってくれましたからね。わ、ちゃんとラップが聴こえてるんだって思って。

KMC　アニメやゲームの曲をやらせていただくことで、ラップっていうものを家庭に浸透させることができるのも、すごくやりがいのあることだと思うんですよね。ちっちゃい子が僕を入り口にして、KREVAとかSEEDAを知ることもあるだろうし。いろんな可能性がそこから出てきますもんね。

アルバムではまっさらな状態でいろんな曲が作れる

──そして待望の1stアルバムですが。ここにはこれまでの「イナズマイレブン」とのコラボだけでは見えてこなかったT-Pistonz+KMCの魅力もきっちり詰め込まれていますね。

トン・ニーノ　アニメやゲームのオープニングテーマっていうのは、どうしてもアップテンポな曲になってしまうんですよね。でもアルバムでは、まっさらな状態でいろんな曲が作れるというか。どうせまた速い曲ばっかりなんだろって思われてると思うんですけど（笑）、バラードとかミディアムテンポも作ったりできるんですよっていう。

──4曲目のバラード「小さな恋の物語」、いいですよねぇ。

KMC　これはアニメのオープニングじゃ絶対やれない曲（笑）。

トン・ニーノ　これは僕の弟（ヒロシ・ドット）が作曲したんですけど、そこに僕とKMCと弟の3人で歌詞をつけて、それぞれがボーカルをとってるんですよ。こういうことができちゃうのも、このユニットの面白いところじゃないかなぁって思いますね。

──KMCさんのソロ曲「DASH!!!!」も収録されていますね。

KMC　これは「イナズマイレブン」とはまったく関係なく、僕のことが好きなお姉さんたちに向けた曲です（笑）。アルバムの仕上がりに関しては本当にもう、正直文句ないですね。捨て曲ないし。ただ、1枚目でこれだけのものができちゃうと、2枚目が怖いっすね。もう先のことまで考えちゃってますけど。

トン・ニーノ　できあがったときに聴いたら、どれもシングルカットできるんじゃないかなって思えたんですよね。で、そういうアルバムに「がんばリーヨ！」っていうタイトルをつけて良かったなとも思えて。結局、僕らの音楽っていうのは、悩んだり苦しんだりストレス抱えたりしてる人たちにとって、そういう気持ちを少しでも発散できて、明日はがんばろうって思える原動力になれたらいいなって思うんですよ。そういう気持ちがちゃんとつながったアルバムになったんじゃないかなって。

こいつら「イナズマイレブン」が終わったらどうなるんだろう

──曲名や曲中にたくさん登場してくる「リーヨ」というワードにもこだわりはあるんですか？

トン・ニーノ　標準語で「がんばれよ」って言うのを、博多では「がんばリーヨ」って言うんですよ。僕はその「リーヨ」っていう言葉の響きがすごくいいなと思っていて。たまに実家に帰ると母親が「がんばリーヨ！」って言ってポンと背中を押してくれるんですけど、そのときにカーンと魂に気合いが入るというか、がんばろうってものすごく思えるんですよね。それは「がんばれよ」よりも「がんばリーヨ」って言われたほうが効くというか。リオのカーニバルの「リオ」にも響き的にかかってはいるんですけど（笑）、「ファイト」に替わる新しい応援の言葉としていいんじゃないかなと思って、使うようになったんですよね。

──なるほど。そこにもT-Pistonz+KMCが伝えたいテーマが込められているわけですね。「イナズマイレブン」のファン以外にも響いてほしいアルバムだと思います。

トン・ニーノ　ですね。僕らのことを応援してくれてる人って、「こいつら『イナズマイレブン』が終わったらどうなるんだろう」って思ってるんじゃないかと（笑）。でも、これを聴いたらちょっと安心してくれるかなって。

──もしかすると、「イナズマイレブン」の人気に乗っかってるだけじゃないかってイジワルな見方をしてる人もいるかもしれませんよね。

トン・ニーノ　いるんですよ、やっぱり！ だからこそ、そういう人たちの見方を覆したいっていう気持ちもありましたね。

KMC　そういう意味でも名刺代わりの1枚になったと思います。

トン・ニーノ　これで僕らのことを知ってくださいっていう。今年は初めてツアーもできたし、アルバムも作れたので、来年は全国ツアーをやって2枚目のアルバムも出したいですね。

KMC　（小声で）紅白も、紅白も。

トン・ニーノ　声ちっちゃ！（笑）

KMC　紅白も出たいですし！

トン・ニーノ　あとはT-PistonzとKMCそれぞれの活動もやれたらいいなと思ってます。で、また合体したらレベルアップしてとんでもないものができそうだしね。

──個人的にはガッツリとヒップホップマナーにのっかったKMCさんも見たいですね。

トン・ニーノ　夜のKMCですよね（笑）。これがまたかっこいいんですよ！

KMC　夜のKMCは、ここではちょっと言えないような感じですので（笑）。