音楽ナタリー Power Push - The Beatles「ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル」特集

THE BAWDIESが語るライブバンド・The Beatlesの素晴らしさ

1977年にアナログ盤でリリースされた「ザ・ビートルズ・スーパー・ライヴ!」は、The Beatlesが残した唯一の公式ライブアルバム。このライブアルバムには1964年8月23日、1965年8月29日と30日にアメリカ・ロサンゼルスにある野外音楽会場・Hollywood Bowlにて行われた3公演の生演奏音源が全13曲収められている。そしてこのたび、9月22日に公開されるThe Beatlesの46年ぶりとなる公式ドキュメンタリー映画「ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK ‐ The Touring Years」と連動して、「ザ・ビートルズ・スーパー・ライヴ!」に新たにボーナストラックを4曲追加し、ジャイルズ・マーティンがイギリスのAbbey Road Studiosでリミックスとリマスタリングを施した「ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル」が9月9日にCDでリリースされ、11月18日にアナログ盤で発売される。

音楽ナタリーでは「ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル」のリリースを記念して、THE BAWDIESがThe Beatlesと今作の魅力を紐解くインタビュー企画を実施。当時のThe Beatlesがいかにロックンロールバンドでありライブバンドとして優れていたか、THE BAWDIESの視点から語ってもらった。

取材・文 / 三宅正一(ONBU) 撮影 / moco.(kilioffice)

リスナーはThe Beatlesに2回出会う

──THE BAWDIESがThe Beatlesを語るときにいろんなポイントがあると思うんですけど。ルーツ的な話でいうとアメリカのガレージバンドを掘っていく中で、初期のThe Beatlesにもリンクしたという感じですか?

THE BAWDIES

ROY(Vo, B) そうですね。もともと僕らはThe Sonicsをはじめ1960年代中期のアメリカのガレージバンドに魅了されたところから始まって。彼らのルーツをたどっていく中でアメリカのリズム&ブルースやソウルに出会ったんですね。それと同時にアメリカの白人のバンドがどのような解釈でリズム&ブルースを昇華していったのかもわかったんです。その段階で「イギリスはどうなんだろう?」と思ったときに代表的な存在としてThe BeatlesやThe Rolling Stonesがいて。アメリカとイギリスのバンドではリズム&ブルースの解釈が違うことがわかってすごく勉強になったんですよ。その中でもThe Beatlesはオリジナリティという意味でも頭1つどころか2つも3つも抜きん出ていたから。その衝撃はすごかったですね。でも僕らはThe Beatlesに直接的な影響を受けて組んだバンドではなくて。THE BAWDIESの原点もThe Beatlesと同じようにブラックミュージックでありリズム&ブルースにあるんですけどね。

──そこは重要なポイントですよね。

ROY はい。もちろんThe Beatlesは神様的な存在なんだけど、ロックンロールを表現する解釈が似ている大先輩であり同志という気持ちがありますね。僕らがメジャーデビューしたのは2009年なんですけど、当時、自分たちの音楽性を伝えるにあたって日本の若いリスナーに「もともと60年代のリズム&ブルースやソウルが好きで、それを自分たちなりに昇華したロックンロールを鳴らしてます」と言っても「?」という感じだったんです。「リズム&ブルース=R&B=クラブで流れてる音楽?」みたいな(笑)。やっぱりなかなか伝えづらいなと思ったんですけど、こうやってスーツを着て60年代のビートバンドを思わせるスタイルという意味で一番伝わりやすいのが初期のThe Beatlesなんですよね。

──The Beatlesの作品は学生時代にメンバー全員で共有していたんですか?

ROY(Vo, B)

ROY そうですね。ただ、The Beatlesには多くのリスナーが2回出会うと思うんですよ。

──わかります。最初は親が家で聴いていて、2回目は自ら能動的に聴くという。

ROY そうそう。最初は物心ついたときから聴いていて、高校の終わりくらいにしっかりもう一度聴き直しました。

本名が卓だし……TAXMANでいいか

──TAXMANというアーティスト名はThe Beatlesの「Taxman」(1966年発売の7thアルバム「Revolver」収録曲)に由来しているのかという質問は今までも散々されたと思うんですけど。

TAXMAN(G, Vo)

TAXMAN(G, Vo) 一応っていったらアレですけど(笑)、由来はそうなんですよ。THE BAWDIESというバンド名で活動していくとなったときにメンバーの個人名も外国人みたいにしたいよねという話になって。

ROY まあ、その考え方がダサいですよね(笑)。

一同 (笑)。

TAXMAN そうなったときにもちろんThe Beatlesのことは知ってましたし、好きだったんですけど、当時は1stアルバムの「Please Please Me」と2ndアルバムの「With The Beatles」ばかり聴いていて。「Taxman」が収録されている「Revolver」もすげえアルバムということはわかるんですけど、当時はオーセンティックなロックンロールばかり聴いていた時期だったから、「Taxman」がめちゃくちゃ好きでTAXMANという名前にしたわけではなくて。正直、「本名が卓だし……TAXMANでいいか」くらいの感じだったんですよ(笑)。

──メンバーも「あ、TAXMANにするんだ」くらいの感じ?(笑)

ROY それぞれ自分で名前を持ち寄るので反対しづらいですし……「JIM」にいたっては提案されたとき一度僕が持ち帰りましたから。それでも彼は「JIM」を推してきたので、そこは尊重して(笑)。

リンゴのセッティングをマネした

──話を戻すと、The Beatlesのアルバムでは1stと2ndを濃く聴いたという感じですか?

ROY そうですね。The Beatlesのアルバムの中でも特にルーツに根ざしているというのもあるし、カバー曲も多いじゃないですか。自分たちでオリジナル曲を作るようになってからはよりThe Beatlesのオリジナル曲のすごさにも気付いていって。それこそメジャーデビュー以降は勉強になった部分が多いですね。いつ聴いても古くならない曲のクオリティもそうだし、個人的には3rdアルバムの「A Hard Day's Night」は初期のThe Beatlesが自分たちのオリジナリティを見つけた瞬間のひらめきでありキラキラ感がすごくあると思っていて。もちろん、中期や後期の作品も素晴らしいんですけど。

──MARCYさんはどうですか?

MARCY(Dr) やっぱり初期のほうが好きですね。個人的には2ndを一番よく聴きました。

──ドラマーとしてリンゴ・スターに学んだ面もあるんじゃないですか?

MARCY ある?

ROY いや、あるでしょ! かなり影響されてるじゃん!

左からJIM(G)、MARCY(Dr)。

MARCY ドラムを始めた当初は有名なドラマーってリンゴしか知らなかったというのもあるんですけど。映像もいっぱい残ってるし、初心者としてコピーしやすかったんですよね。最初はドラムの叩き方自体が全然わからなかったので、それでリンゴのセッティングをマネてみたりして。リンゴのドラムセットがLudwigだったから、僕もLudwigにしたし。そこからどんどん自分なりのスタイルを加えていった感じですね。

──JIMさんはどうでしょう?

JIM(G) ROYくんが言うように、僕もThe Beatlesに2回出会っていて。リスナーとして意識するようになって聴き始めてからは「ホワイト・アルバム」(9thアルバム「The Beatles」)が一番好きですね。それでもTHE BAWDIESというロックンロールバンドとして聴く上で重要だと思うのは初期になるんですよね。あと、BBCのライブ盤(1994年発売の「Live at the BBC」)もすごく聴きました。主にカバー曲を中心に聴き込みましたね。「高い熱量のある原曲をどういうふうに料理してるんだろう?」という視点で勉強にもなったし。

The Beatles ライブアルバム「ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル」 / 2016年9月9日発売 / UNIVERSAL MUSIC
「ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル」
[SHM-CD] 2808円 / UICY-15566
[アナログ] 4536円 / UIJY-75067 / 2016年11月18日発売
iTunes Store
収録曲
  1. Twist & Shout / ツイスト・アンド・シャウト(1965年8月30日)
  2. She's A Woman / シーズ・ア・ウーマン(1965年8月30日)
  3. Dizzy Miss Lizzy / ディジー・ミス・リジー(1965年8月30日 / 1965年8月29日──1曲にエディット)
  4. Ticket To Ride / 涙の乗車券(ティケット・トゥ・ライド)(1965年8月29日)
  5. Can't Buy Me Love / キャント・バイ・ミー・ラヴ(1965年8月30日)
  6. Things We Said Today / 今日の誓い(1964年8月23日)
  7. Roll Over Beethoven / ロール・オーバー・ベートーヴェン(1964年8月23日)
  8. Boys / ボーイズ(1964年8月23日)
  9. A Hard Day's Night / ア・ハード・デイズ・ナイト(1965年8月30日)
  10. Help! / ヘルプ!(1965年8月29日)
  11. All My Loving / オール・マイ・ラヴィング(1964年8月23日)
  12. She Loves You / シー・ラヴズ・ユー(1964年8月23日)
  13. Long Tall Sally / ロング・トール・サリー(1964年8月23日)
  14. You Can't Do That / ユー・キャント・ドゥ・ザット(1964年8月23日──未発表)
  15. I Want To Hold Your Hand / 抱きしめたい(1964年8月23日──未発表)
  16. Everybody's Trying To Be My Baby / みんないい娘(1965年8月30日──未発表)
  17. Baby's In Black / ベイビーズ・イン・ブラック(1965年8月30日──未発表)
映画「ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK‐ The Touring Years」2016年9月22日全国公開
The Beatlesの全盛期を多数のライブ映像で描く本作には、イギリス・リバプール時代や、1966年にアメリカ・サンフランシスコのCandlestick Parkで行われた観客の前でのラストライブの模様などを収録。また1963年から66年にかけて15カ国90都市で計166公演行われたライブツアーでの彼らの様子やメンバーの関係性を、各国のファンやメディアから集めた100時間以上の貴重な未公開映像、ポール・マッカートニーとリンゴ・スターや関係者へのインタビューにより紐解く。さらに何気ない会話やアウトテイクシーンを取り入れたイギリス・Abbey Road Studiosでの制作シーンなども楽しめる。監督は「アポロ13」「ダ・ヴィンチ・コード」「ビューティフル・マインド」などで知られるロン・ハワードが担当。高解像度のリマスター映像と5.1chサラウンド化された音声によって当時の熱狂と興奮が蘇る。
The Beatles(ビートルズ)
The Beatles

イギリス・リバプール出身のジョン・レノン(G, Vo)、ポール・マッカートニー(B, Vo)、ジョージ・ハリスン(G, Vo)、リンゴ・スター(Dr, Vo)による4人組バンド。1962年にシングル「Love Me Do」でデビューした。彼らが行うコンサートの会場の内外では、ファンがヒステリックに金切り声を上げる現象が起こり、その熱狂ぶりを表す「ビートルマニア」という言葉が誕生。The Beatlesは社会現象として捉えられた。64年にはアメリカに初上陸。同年に主演映画「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!」が各国で公開されると、その人気は世界中に広がっていった。その後、The Beatlesは1966年にアメリカ・サンフランシスコのCandlestick Parkにて観客を前にした最後のライブを開催し、68年頃からメンバーはソロとしての活動に移行。69年に12thアルバム「Abbey Road」を制作したのち、70年に解散した。彼らが活動期間中に発表した12作のオリジナルアルバムのうち11作が、22作のシングルのうち17作が全英ヒットチャートで1位を獲得している。

THE BAWDIES(ボウディーズ)
THE BAWDIES

ROY(Vo, B)、TAXMAN(G, Vo)、JIM(G)、MARCY(Dr)によって2004年1月1日に結成。リズム&ブルースやロックンロールをルーツにした楽曲、熱いライブパフォーマンスが各地で噂を呼ぶ。2009年4月に発表したメジャー1stアルバム「THIS IS MY STORY」は「第2回CDショップ大賞」を受賞。2013年1月に4thアルバム「1-2-3」をリリースし、同年2月より横浜アリーナ、大阪城ホール公演を含む59公演の全都道府県ツアーを開催した。2014年1月に結成10周年を迎え、同年3月にカバーアルバム「GOING BACK HOME」を発表。12月にはニューアルバム「Boys!」を発表し、2015年3月には2度目の日本武道館公演を成功に収めた。10月にペトロールズの長岡亮介をプロデューサーに迎えたニューシングル「SUNSHINE」を発表。2016年7月にはgo!go!vanillasとのスプリットシングル「Rockin' Zombies」をリリースし、東京・代々木公園イベント広場野外ステージにてフリーライブを行った。10月には2組による全国ツアー「Rockin' Zombies Tour 2016」が実施される。

THE BAWDIES × go!go!vanillas
「Rockin' Zombies」
2016年7月20日発売 / Victor Entertainment
「Rockin' Zombies」期間限定盤

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