2人の思うわびさび

──ここからはSurvive Said The Prophetのアルバム「WABI SABI」の話を聞かせてください。「WABI SABI」はどのようなコンセプトで作られたものなんですか？

Yosh　2020年の“NEO TOKYO”に向かっていく今の東京と、その中にある“わびさび”です。昔ながらの文化をどれだけ守れるかという意味ではなくて「今まで受け継いできた文化をどれくらいモダン化できるか」っていうアイデアを音楽に落とし込んでいった感じです。このテーマをKoieに話したら、「やっぱNEO TOKYOやんな！」って言ってくれたんで「見てる方向は同じなんだな」って思ってうれしかったですね。そういう意味で「Lost in Time」の制作もすごくスムーズだったし。

Koie　2020年が本当に近付いてきてるからこそ、みんな自然に“NEO TOKYO”に意識が向いてるんやと思う。実際に俺らの新曲（「Freedom」）もそういうテーマで作ってるし。だからYoshと話してても「やっぱそこ見てるんやな」って思いましたね。

Yosh　僕は「日本人なのに日本人じゃない」「お前はなんなんだ」って言われることがとても多くて。けど今って街を歩いていてもいろいろな人種の人がいるし、駅とか空港に行けば3カ国語くらいアナウンスが流れる。そういう時代の変化をどう思うのか、どう思うべきなのかということを考えたらわびさびにたどり着いたんですよね。日本語がうまくしゃべれない、言いたいことがうまく日本語で説明できないという自分は、日本人らしさを欲してるんだなと。「じゃあ僕が感じるわびさびってなんだろう」っていうことを音楽にしてみようと思いついた。

──わびさびというのは日本の美意識の1つだと思うのですが、お二人が思う日本のよさや美しさってどういうところだと思いますか？

Yosh　僕は自分と他人とのバランスがいいなと。それによってマナーとか思いやりとかそういうものが文化の一部になってることですね。3.11のときに、なぜ日本でライオットが起こらなかったかって、他人とのバランス感をずっとキープできる国民だからだろうなと思ったんです。「俺がナンバー1」じゃなくて、他人と支え合える。僕、日本人のちゃんとマナーを守れる感じが大好きで。本当にこの国っていいなと思います。

Koie　音楽の話で言うと、いい意味でルーツがないなと思うんです。例えばヒップホップのバックグラウンドみたいなものもないし、ロックも輸入してきたもので。だから模倣から始まってると思うんですけど、日本人ならではの繊細さで、きれいにミックスして成形して、オリジナルなものとして出せる。それが日本のよさだと思ってます。だからこそいろんなものを合体して試すこともできるし、自分たち流に変えることに対しても恐れがないと言うか。だから面白い出し方になって、海外でも注目されるのかなと。

Yosh　あと食が胃に優しいね。

一同　あははは（笑）。

Koie　アメリカとか行ってメシ食ったらずっと下痢なんちゃう？

Yosh　そうそう。僕みたいに胃が弱いやつは、海外行くと毎朝毎夜……（笑）。

Yoshオススメの日本のバンド

Koie　最近、カッコいいと思った日本のバンドを教えてほしい。

Yosh　Survive Said The Prophetだね。

Koie　それ以外で！（笑）

Yosh　Stormymonday。仙台のバンドなんだけど、モンスターだね。日本のデイヴ・グロール（Foo Fightersのギターボーカル。元Nirvanaのドラマー）。ボーカルのUSKと俺が同じようにインターナショナルスクール出身ということもあって意気投合して。ライブを観たら超アメリカンロックンロールでめちゃくちゃカッコよかった。これからさらに化けてくるんじゃないかな。

Koie　おお、チェックしてみる。

Yosh　あ、あとSilently Shooting Traitors。発音もめちゃくちゃいいし、リリックもすごい。めっちゃくちゃカッコいいっす。

Koie　最近、新しいバンドとライブハウスで出会う機会が減ってきていて。ツアーするときも対バン相手は自分たちで選んでるから、これを機会にちょっといろいろチェックしてみます。海外に行ったからこそ、最近は日本のロックシーンに興味が出て。実際にずっと憧れてた海外のバンドのライブを観て「やっぱカッコいいな」ももちろんあったけど、「あれ？ これやったら日本のバンドのほうがカッコいいわ」というのもあって。日本でもネイティブレベルで英語が歌える人どんどん増えてるので、日本の音楽シーンがこれから変わるんじゃないかなっていう期待感もありますね。