ナタリー PowerPush - LITE
誰もいない境地へ 武田&楠本の10周年談義
豊かなイマジネーションと高いスキルで、スリリングなサウンドを創出するインストゥルメンタルロックバンドLITE。国内では「FUJI ROCK FESTIVAL」「TAICOCLUB」「COUNTDOWN JAPAN」などさまざまなフェスに出演し、00年代前半から海外でもツアーを行うなどワールドワイドに活動している。
そんな独自のスタンスを確立し、活動してきた彼らも今年で結成10周年。10月5日には10周年を記念して、初の投げ銭制のライブを東京・ラフォーレミュージアム六本木で開催する。この機会に改めてLITEの足跡をたどるとともに、投げ銭制ライブ開催の理由を武田信幸(G)と楠本構造(G, Syn)に聞いた。
取材・文 / 石角友香
「誰もやってないことをやろうよ、面白いから」
──LITEってもともとどんな目的で始まったバンドなんですか?
武田信幸(G) 初めはざっくりと「誰もやってないことをやろうよ、面白いから」っていう感じでしたね。それで人力で4つ打ちのダンスミュージックをやってみようってなって。初期は歌も入ってたりして。
楠本構造(G, Syn) 当時は音楽に対する知識があんまりなかったんですよ。知らなすぎて「どんなバンドになりたい」っていうのもなかったし、「誰もやってない音楽をやろう」っていう方向になったのかも。そもそも「誰もやってない音楽」なんて、この時代には本当はないかもしれないけど(笑)。
武田 10代の頃は「日本のインストバンドはT-SQUAREとカシオペアと、ま、俺らだな」って。
楠本 「3組しかいねえよ、ヤバくね?」みたいな(笑)。
──てっきり今のLITEから想像するに、マスロックやポストロックに影響されたんだろうと思ってました。
武田 ライブで競演したバンドとのつながりで、ポストハードコアを聴いてはいたんですけど、「カッコいいけど、これじゃないなあ」とか常に思ってましたね。
楠本 常に自分たちの中でやってないことだったり、新しかったり、組み合わせが新鮮なものを求めてましたね。
──とはいっても、ほかのアーティストからの影響も多少はあったのでは?
武田 フェスの影響はあるかもしれないですね。2002年に初めて「フジロック」に行って、こんなにマイナーそうなジャンルにこんなにお客さんが集まるんだ、とかいろいろ刺激がありましたね。そこで興味を持ったジャンルの音楽を聴いてみたり、ライブハウスで対バンするバンドからも影響を受けたし。結成当時はインストバンド自体すごく少なかったんで、いろんなジャンルのバンドと対バンしてたんですけど、Dachamboとかと競演したことがきっかけでジャム系のバンドを聴いてみたり。フェスや対バンとか、実体験を通して新しい音楽を聴いて、バンドに還元していくことが多かったですね。
楠本 僕も「フジロック」には2003年に初めて行ったんですけど、武田と同じで音楽は体験してみないとわからないと思いましたね。音源だけだと、伝わるものは半分だけって感じで。
マジでやれば日本も海外も関係ない
──LITEは結成後のかなり早い時期から海外に出てますが、そもそも行き始めたきっかけはなんだったんですか?
武田 東京のライブにあるアイルランド人の男がやってきて「お前らカッコいいな。とりあえず飲みに行こう」って。何回か会ってるうちに「実はUKでレーベルをやろうと思ってるんだけど、お前らを第1弾で出したい」って言われたんです。俺らは以前から海外で活動したくて、ようやく来た話だったからぜひやろうと。で、彼が本当にCDを出してくれたんです。そのあとにヨーロッパツアーをすることになって。アイルランド人の彼がマイク・ワット(※アメリカのパンクバンドMinutemenのベーシスト)の大ファンで昔からの知り合いだったんですけど、ツアー中のマイクに俺たちの音源を渡して「お前らマイクと一緒に音源出せ」って話をつけてくれて(笑)。
楠本 あとマイク・ワットから「来日するからサポートしてくれる?」って言われて競演したら、「次はお前らがアメリカに来い」ってことになり。それでアメリカツアーに行ったり。
──海外での活動を見据える動機はあったんですか?
武田 初期は日本で受け入れられる自信があんまりなかったんですよね。「君たち歌ないけど、いつ歌を入れんの?」とか言われたり。
楠本 その一方で「フジロック」とかに行って、海外アーティストのライブを観て「やっぱすげえな、世界って。俺らも行ってみたい」と思ったところもありました。
──海外に行き始めてから8年ぐらい経ちますが、日本と海外の差はありますか?
武田 前はありましたけど、最近その差が埋まってきたんですよ。
楠本 そう。海外に行き始めた当初は、ネットで知ってる人がちらほらいる程度でほとんど知られてなくて。でもライブをすれば、向こうの人は意味わかんないくらい盛り上がる状況でしたね(笑)。それが徐々に日本でも海外でも、俺らのことを知ってて、かつ盛り上がってくれる感じになっていって。今はライブをやる上で、あんまり差を感じないですね。
──なぜ海外でも受け入れられたんだと思いますか?
武田 ライブパフォーマンスの熱さですかね。ライブって魂振り絞ってやるところがあるんですけど、日本も海外も関係なくオーディエンスって「マジでやってんな」ってところに反応するんですよね。そこが受け入れられた理由じゃないかと思います。
──海外での活動はLITEにとってどういう位置付けになっていますか?
武田 ライブはもちろんなんですけど、作品を出す場合でも日本だけで売れればいいやっていう考えは前からなくて。日本独特の売れ線みたいなものってあると思うんですよね。でも、そういうところだけ目指せばいいや、じゃなくて「海外でこの曲をライブでやったら盛り上がるだろうな」って想像することで自分たちの音楽のビジョンが見えてくるし、曲作りにも反映される。当たり前の活動の1つになってますね。
- LITE ワンマンライブ「LITE 10TH」
- 2013年10月5日(土)
東京都 ラフォーレミュージアム六本木 - OPEN 17:00 / START 18:00
料金:投げ銭制(ドリンク代別) - ライブ音源USB付入場整理券(2000円)は下記プレイガイドにて発売
チケットぴあ(Pコード:210-152)
ローソンチケット(Lコード:73105)
イープラス
- LITE ワンマンライブ
- 2013年10月18日(金)
北海道 札幌BESSIE HALL - OPEN 18:30 / START 19:00
前売り券:3000円 / 当日券:未定
※学生割引あり(18歳以下の方は、当日受付で学生証を提示で1500円キャッシュバック) - チケットぴあ(Pコード:210-152)
ローソンチケット(Lコード:73105)
イープラス
- アルバム「Installation」/ 2013年6月5日発売 / 2300円 / I Want The Moon / IWTM-1005
- [CD] / IWTM-1005
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収録曲
- Starry Morning
- Echolocation
- Hunger
- Alter Ego
- Between Us
- Starry Night
- Bond
- Fog Up
- Subaru
- Nomad
LITE(らいと)
武田信幸(G)、楠本構造(G, Syn)、井澤惇(B)、山本晃紀(Dr)によって、2003年に結成されたインストゥルメンタルバンド。2005年にミニアルバム「LITE」を発表し、本作の発売に伴う全国ツアーを開催したことで知名度を高めていく。2007年には1stフルアルバム「filmlets」がヨーロッパでリリースされたほか、初の海外ツアーも敢行。日本のみならず海外でも注目を集めるようになる。ツインギターのスリリングな掛け合い、聴き手のイマジネーションを刺激するドラマ性の高いサウンドが持ち味。2009年10月に自主レーベルI Want The Moonから発表した「Turns Red EP」ではニューウェーブやエレクトロニカの要素を導入し、新境地を開拓した。2013年に結成10周年を迎え、6月にアルバム「Installation」を発表。10月5日に東京・ラフォーレミュージアム六本木にて投げ銭制のアニバーサリーライブ「LITE 10th」を行う。