ナタリー PowerPush - 清竜人

無骨なポップ職人の緻密な“仕事”

清竜人の通算6枚目となるアルバム「WORK」が完成した。全曲異なるアレンジャーとエンジニアを迎えて制作した4thアルバム「MUSIC」、にぎやかなサウンドから一転してシンプルな弾き語りのみを収めた5thアルバム「KIYOSHI RYUJIN」と、振り幅の大きい作品を立て続けに発表した彼が次に着手したのは、自らの手により緻密に作り上げた極上のポップアルバムだった。

ナタリーではこのアルバムの核心に迫るべくインタビューを実施。無骨なビジュアルからは想像もつかない緻密な“WORK”=仕事ぶり、音楽制作へのこだわりと心境の変化がうかがえる内容となった。

取材・文 / 臼杵成晃 撮影 / 佐藤類

 
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「どこまで1人で緻密に作り込めるか」が今回のテーマ

清竜人

──ナタリーのインタビューは前々作「MUSIC」発売時以来ですけど(参照:清竜人「MUSIC」インタビュー)、あのとき清さんは最後に「しばらくはプラプラしたい。(音楽を)辞められるものなら辞めてしまいたい」っておっしゃってたんですよ。

ああ、そうですね。

──あながち冗談ではないんじゃないかという心配もあって(笑)。本当に辞めるという選択肢もあった?

はい。とは言っても一応ぼんやりと次のアイデアはあって。

──結果、半年ちょっとというスパンでツアーと連動したアルバム「KIYOSHI RYUJIN」が発表されました。ただあの作品は、アニメソング系のクリエイターなど曲ごとに異なるアレンジャーを招いた「MUSIC」とは真逆で、1人だけで作り上げた全編弾き語りのアルバムという非常に閉じた内容でしたよね。どういう心境で作った作品だったんでしょうか。

あれもずっと前からやりたかったアイデアの1つなんですよ。自分の名前をタイトルにして、普段使えないような言葉だったり、今まで否定されてきた曲だったりを集めて1枚にするっていう。

──「ソープランド」や「アルツハイマー」といった単語が踊るアルバムに自分の名を冠したのはなぜ?

限りなく実話に近いものを、限りなくストレートな歌詞で歌いたいという気持ちがあったので。ただなかなか形にするのが難しい作品だったので、あのタイミングでああいう形で出させてもらったんです。

──「MUSIC」も一見突発的なアイデアのようでいて、実際は1st、2ndアルバムの段階でイメージは持っていたとおっしゃってましたよね。となると、今回の「WORK」も前々から何かしらの構想を蓄えていたのでしょうか?

はい。前作と同時進行で作っていた曲もありますし、全体のイメージもしたためていたものではありますね。

──「MUSIC」には全曲異なるアレンジャー&エンジニアで制作する、「KIYOSHI RYUJIN」には楽器1つでストレートに伝えるというはっきりしたコンセプトがありましたが、今作は?

「WORK」というタイトル通り、コーラスや楽器のアレンジまで全部自分の仕事というか、今までの経験を経てどこまで1人で緻密に作り込めるかというのが自分の中のテーマだったんです。

自然と出てくるメロディやコード進行が昔とは違う

──「MUSIC」と「KIYOSHI RYUJIN」もおよそ真逆と言える内容でしたが、今作もまた大きく転換しましたよね。生々しい言葉がこれでもかというぐらい刺さってくる「KIYOSHI RYUJIN」に対して、「WORK」は英語と日本語のブレンドでいわゆるJ-POP的な英語使いではないし、聴き取られることを避けるためにこうしたのかなとすら思ったんですよ(笑)。

清竜人

ふふ(笑)。歌詞に関しては今回、こういうものにしようというテーマは制作当初からまったくなくて。とにかくメロディラインを大切にしたかったので、それを崩さない言葉選びをした結果こういう歌詞になったっていう。歌詞を読んでもまったく意味がわかんない曲もあると思うんですけど(笑)、なんとなくのストーリーとテーマだけは用意してます。あとはこのメロディにこの言葉が乗ったら面白いんじゃないかとか、その組み合わせですね。

──演奏メンバーをASA-CHANG(Dr)、TOKIE(B)、山本タカシ(G)というライブでおなじみのお三方で固めたのは、1人で作り込んだアレンジをよりしっかりと具現化するために?

はい。今までは生音を録るときは外国の方にお願いすることが多かったんですけど、今回は全部日本人で作りたくて、結果的にいつもライブで演奏してもらっているメンバーにお願いしました。

──複雑なメロディや展開を1曲にまとめ上げる手腕が「MUSIC」以降飛躍的に伸びているように感じるのですが、清さん自身はその自覚はありますか?

どれだけ自分の音楽的素養を生かしてポップなものが作れるか……というのは今回自分に課したテーマでもあったので。尺の短い曲も多いし、アレンジもメロディも含めてけっこう洗練されたものができたんじゃないかなという自負はあります。今回は割と短期間でガツッと作れた印象があるので、エンジンのかかりがよかったかもしれないです。

──この洗練された楽曲を、難なくポンポンと生み出すことができているんじゃないかという印象すらあるんですよ。急に補助輪外した自転車に乗れるような感覚で、曲作りに対して何かを掴んだんじゃないかと。

どうですかね。難しいところなんですけど、自分の中から自然と出てくるメロディやコード進行が、昔とは違うものになってきていて。それはいいことなんだけど、昔から持っていたものをちょっとずつ失くしている感じもあるんです。

ニューアルバム「WORK」/ 2013年10月23日発売 / 2800円 / EMI Records Japan / TYCT-60003
収録曲
  1. Zipangu
  2. Katie
  3. All My Life
  4. LOVE & PEACE
  5. UNDER
  6. The Movement
  7. Microphone is…
  8. Championship
  9. Disclosure
  10. I Don't Understand
清 竜人 "WORK" TOUR
  • 2013年12月2日(月)大阪府 大阪BIG CAT
  • 2013年12月4日(水)愛知県 名古屋BOTTOM LINE
  • 2013年12月6日(金)東京都 SHIBUYA-AX

OPEN 18:00 / START 19:00
チケット前売価格:5000円(税込)
チケット一般発売:10月26日(土)10:00~

※開場・開演時刻、チケット前売価格、発売日ともに全公演共通となります。

清竜人(きよしりゅうじん)
清竜人

1989年生まれ、大阪府出身の男性シンガーソングライター。15歳でギターを手にし、作曲を始める。16歳のときには早くも自主制作盤を発表。そのクオリティの高さが音楽関係者の間で話題となる。2006年には「TEENS ROCK IN HITACHINAKA 2006」でグランプリを受賞し、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2006」に出演を果たす。映画「僕の彼女はサイボーグ」への挿入歌提供を経て、2009年3月にシングル「Morning Sun」でメジャーデビュー。同月発売の1stアルバム「PHILOSOPHY」では、自身の持つ音楽性の幅広さを証明した。その後もシングル、アルバムを精力的にリリースし、2012年5月には曲ごとに異なるアレンジャーとエンジニアを招いた4thアルバム「MUSIC」、2013年2月には自宅録音による弾き語り楽曲のみを収めた5thアルバム「KIYOSHI RYUJIN」をツアーとの連動作品として発表した。同年10月には6thアルバム「WORK」がリリース。12月には東名阪3都市で「清 竜人 "WORK" TOUR」を行う。