ナタリー PowerPush - ジミーサムP

「Reboot」で告げる復活の狼煙

ジミーサムPが約1年間の休止期間を経て、自身3枚目のアルバムとなる「Reboot」をリリースした。

2008年9月、動画共有サイトに投稿された初音ミクオリジナル曲の「Four Signals」がデビュー作となるジミーサムPは、その後も2週間に6曲と矢継ぎ早に楽曲を投稿。その圧倒的な作曲スピードとクオリティから「早撃ちジミー」とのニックネームが付けられた。その後も 「from Y to Y」「Calc.」という2曲のミリオン再生楽曲を世に送り出し、現在まで30曲を超える楽曲を投稿している。

ナタリー初登場となる今回は、音楽との出会いから作曲法、彼が操る初音ミク・巡音ルカといったボーカロイドへの思い、そして最近のライブ活動についてまでたっぷりと語ってもらった。

取材・文 / 田口こくまろ 撮影 / 上山陽介

コンセプトは「再起動」「復活」そして「再生」

──ナタリー初登場ということで、まずは自己紹介をお願いします。

ジミーサムP

動画共有サイトで主にボーカロイド曲を作って発表してるジミーサムPと申します。過去にも何枚かCDを出しているんですが、5月15日に2年ぶりとなる新作「Reboot」を出すことになりました。

──ジミーサムという名前の由来は?

動画共有サイトに曲を投稿するとき、ほとんどのボカロPはPVなどを付けるんですが、僕はそのへんにこだわりがなかったのと、曲に集中してもらいたいという思いもあったので、あえてモチーフとなる静止画を1枚ポンと乗っけて曲をただ流すだけというスタイルだったんです。で、「ジミなサムネイル」ということでファンの方が「ジミーサムP」って呼び出して、それが気に入ったので以後使わせてもらっています。

──活動休止期間を経て去年の12月に復帰作「Reboot」を動画共有サイトに投稿されました。この曲はアルバムタイトルにもなっていますがその意味は?

「復活」「再起動」という意味で付けました。

──この曲には、デビュー4年目にして初めてPVが付けられましたね。

アルバムのリード曲ですし、復活第1作ということで派手にやろうと思いまして、JETさんに依頼させてもらいました。

──最初にPVを観たときの感想は?

もちろんJETさんの過去の作品は観させてもらっていたのですが、できあがってきたものは想像をはるかに超えたクオリティでして、もうびっくりしちゃいましたね。あとPVのストーリーにも驚きました。というのも僕からは曲と歌詞をポンと渡しただけで、「こういう内容、ストーリーにしてくれ」というのは一切言ってなかったんです。そしたらJETさんのほうであのストーリーを全部作ってくれて、あんなすごい展開になるとは。本当にびっくりしました。

──ミクとルカのほかにもう1人キャラクターが登場していますが。

あのキャラクターは、この曲のボーカリストの1人“寒音ジミ”をモチーフにしたJETさんのオリジナルじゃないでしょうかね。

──曲に集中してもらいたいからPVは作らないとおっしゃってましたが、今回はなぜ?

聴く人がPVのストーリーに引っ張られすぎるのはどうかなと思ってたんですが、あれはJETさんの1つの想像の結果であると思うんです。誰もあの曲を聴いてあんな話を考えないですよね。なので単純に楽しかったです。また、今回動きがあることによって、曲のほうもより引き立つというのがわかりましたし、お願いしてよかったと思っています。

“後半の爆発”を意識している

──「Reboot」の次に動画共有サイトで発表されたのが、巡音ルカがボーカルの「Afterglow」。ジミーさんのトレードマークとも言える後半の爆発が見事に決まった曲ですが、曲の展開についてはどのように考えてますか?

ジミーサムP

そうですね、歌詞についてはあえて抽象的にして、曲のほうはできるだけストーリー性を持たせるようにしています。途中でガッとドラマチックに変化するというのが好きなので、後半の爆発っていう手法はしょっちゅう使いますね。意識してそういうふうにしてますし。

──次の「おやすみのうた」は初の日本語タイトルとなりますが、今まではすべて英語でしたよね。

そうですね。最初の何作品かがずっと英語だったので、じゃあもうずっと英語でいってみようかなって思ったんです。特に意味はないんですが、そういう変なところにこだわるんですよね。で、今はもうこだわりもなくなったので日本語でもいいかな、と。

──4月には初音ミクによるストレートなロックナンバー「PYX」が公開されました。タイトルの意味は?

キリスト教用語の「聖櫃」ですね。救世主イエスが復活するのに備えて、その肉体を納めた棺です。「復活」という言葉が今回のアルバムのコンセプトに合ってるので、これをモチーフにして作ってみました。

──そして、いよいよ復活後の4曲も収録された16曲入りのアルバム「Reboot」の発表になるわけですが、ほかの曲は全部新作ですか?

そうですね。「Starduster」のオーケストラバージョンを除けばすべて新作です。

──アルバムを通して大きな流れのようなものを感じるんですが、全体のコンセプトは?

いつもアルバムのコンセプトはあまり細かく決めず、大きいテーマをドンと決めて、あとはそれぞれの曲ごとに変えていくんです。今回のコンセプトはタイトルの通り「再起動」「復活」そして「再生」です。

ジミーサムP feat. 初音ミク、巡音ルカ「Reboot」/ 2013年5月15日発売 / 2000円 / EXIT TUNES / QWCE-00278
収録曲
  1. (第一日目の扉)
  2. 新世界セッション / ジミーサムP feat. 初音ミク
  3. Reboot / ジミーサムP feat. 初音ミク・巡音ルカ・寒音ジミ
  4. PYX / ジミーサムP feat. 初音ミク
  5. サンセット / ジミーサムP feat. 初音ミク
  6. Lunarian (Instrumental)
  7. 夢幻放射 / ジミーサムP feat. 寒音ジミ
  8. Crossroad / ジミーサムP feat. 初音ミク
  9. Joker / ジミーサムP feat. 巡音ルカ
  10. Infinite Color / ジミーサムP feat. 初音ミク
  11. おやすみのうた / ジミーサムP feat. 寒音ジミ
  12. Dreamscape / ジミーサムP feat. 巡音ルカ
  13. 水槽脳 / ジミーサムP feat. 巡音ルカ
  14. Mantra (Instrumental)
  15. Afterglow / ジミーサムP feat. 巡音ルカ
  16. Starduster (Orchestral ver.)/ ジミーサムP feat. 初音ミク
ジミーサムP(じみーさむぴー)

1985年生まれのボーカロイドプロデューサー。使用ボーカロイドは初音ミクと巡音ルカ。さらに “寒音ジミ”と呼ばれる歌声も使用し、幅広いテイストの楽曲を作り出している。そのハイペースな制作スタイルから「早撃ちジミー」の異名で知られるほか、過去には「OneRoom」名義でも作品を発表。2009年7月に「OneRoom feat. 初音ミク」名義で1stアルバム「Toy Box」をリリースしている。その後ジミーサムPとして2ndアルバム「Unplugged Stray」を制作し、約1年間の活動休止を経て、2012年12月に活動再開。2013年5月に3rdアルバム「Reboot」をリリースした。