音楽ナタリー Power Push - 林原めぐみ
過去と未来、私の思いと誰かの思い すべて詰め込む「タイムカプセル」
今年アーティストデビュー25周年を迎えた林原めぐみがベストアルバム「タイムカプセル」をリリースする。
「タイムカプセル」は林原の初期楽曲集。レコード会社13社の協力のもと、声優デビュー間もない彼女がさまざまなアニメ作品で歌ったキャラクターソング26曲と、1990年に東芝EMI(当時)からリリースした1stミニアルバム「PULSE」の全4曲、さらに「PULSE」のリレコーディングバージョンを加えた34曲を3枚のCDに収めた大ボリュームの1作となっている。
音楽ナタリーではアルバムリリースとデビュー25周年を記念して林原のインタビューを実施。“歌う声優”のパイオニアはなぜアニバーサリーイヤーにキャラクターソング集をリリースするのか?に迫るとともに、1990年代当時の自身のありようや、25年間ともに歩んできたファンへの思いなどを大いに語ってもらった。
取材・文 / 成松哲 撮影 / 小坂茂雄
「じゃあ過去をひっくり返してみようかな」
──まずはアーティストデビュー25周年おめでとうございます!
ありがとうございます。
──で、記念のベスト盤がリリースされますというニュース(参照:林原めぐみ25周年企画始動!第1弾は幻の34曲集めた3枚組初期ベスト)を音楽ナタリーで出したら、本当に多くのアクセスを集めたので「林原めぐみってやっぱスゲーなあ」と思ったんですけど……。
なんだろう……。「林原めぐみってやっぱスゲー」って(笑)。
──いや、ホントに「スゲー」と再認識するに足る数字だったんですよ。ただその半面「“アーティスト”デビュー25周年なのになんで初期キャラクターソング集、“声優”仕事にフォーカスした1枚なんだ?」って不思議でもあったんです。
声優として活動しているうちに歌の世界とのご縁ができた身である以上、林原めぐみの音楽からキャラクターソングは切り離せないですから。スターチャイルドで最初に出したアルバムは「Half and, Half」(1991年)。タイトルに「自分半分、キャラ半分のアルバムにしよう」という思いを込めていたりしますし。
──でも1990年代後半には「Give a reason」「don't be discouraged」「Just be conscious」と個人名義でビッグヒットを飛ばしてますよね。
だから「自分の中では」ではあるんですけどね。もう3年ほどシングルを出してないこともあって、最近ラジオ(TBSラジオ「林原めぐみのTokyo Boogie Night」)にも「CDは出さないんですか?」という質問をよくいただきますし。で、そういう声に押されて今回立ち上がってみたんですけど「あれっ!? 新曲を準備しているわけでもないし、特にお出しするものがないな」って気付いちゃって(笑)。「じゃあ過去をひっくり返してみようかな」って作り始めたのが「タイムカプセル」なんです。
ファンの記憶と青春を引き受ける
──「デビュー25周年だ!」と気張ってリリースしたわけではない?
ただ過去のキャラクターソングをひっくり返しながら思ったことはあって。去年の紅白で、松田聖子さんや中森明菜さんの歌を聴いて、お2人を観ていたら「聖子さんや明菜さんのファンの方は今何を聴いてるんだろう?」ってふと気になったんです。もちろん今の聖子さんや明菜さんの歌も聴いているんでしょうけど、やっぱり「青い珊瑚礁」や「少女A」も聴きたいんじゃないかな?って。そうしたら今度は「かつての林原めぐみのファンは今、何を聴いてるんだろう?」っていうことが気になりまして……。ラジオには、7年ぶりやら、14年ぶりやらに(番組を)聞きました、なんてハガキも舞い込みますし。
──いや、今も林原めぐみ楽曲を聴いてるんだと思いますよ。
確かに今も過去の曲を聴いてくれているんですよね。これは誇張でもなんでもなく、30歳のときに作詞した「Thirty」という曲(1997年のアルバム「Iravati」収録)について「当時小学生だったんだけど、30歳になってやっとあの歌詞の意味がわかりました」っていうハガキも、今も毎週のようにラジオに届くんですよ。それを読んでいるうちに「25周年っていうのもいい機会だし、かつての少年少女、今の“アラフィフ少年”や“アラサー少女”が一瞬でもいいから当時に帰れるような作品があってもいいかな」と思うようになりました。
──しかも「タイムカプセル」関連のナタリーの記事に言及するツイートの中には「『らんま1/2』の『November Rain』が入ってるなら買おう!」と曲名にアニメのタイトルを書き添えられたものがけっこうあって。つまり皆さん、当時の林原さんに対してはもちろん、出演作品にも並々ならぬ思い入れを持ってますよね。ただアニメやキャラクターのことまで1人でまとめて引き受けるのって大変なんじゃないかなって気もするんですけど……。
全然全然(笑)。私も「(「魔神英雄伝ワタル」の忍部)ヒミコにまた会える!」「(「らんま1/2」の早乙女)乱馬に会える!」って感じで楽しくてしょうがなかったですね。今までハードディスクの奥のほうに眠っていたキャラクターたちがデスクトップに飛び出してきてくれた感じというか。しかもクリックしてみたら、みんな元気よく起動してくれたのが本当にうれしかったし、CDを楽しみにしているみんなもきっと同じ気持ちなんじゃないかなあ。
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DISC 1 収録曲
- COME TRUE…(アルバム「PULSE」より)
- Follow you, Follow me(アルバム「PULSE」より)
- Go ALONG ! GO AROUND!!(アルバム「PULSE」より)
- 夢を追いかけて(アルバム「PULSE」より)
- 星の涙ポ・ロ・ロ・ン(「宇宙英雄物語」より)
- Dear Friends(「ぽっぷるメイルパラダイス」より)
- Kaleido scope(「WILDCD」より)
- おカネがいちばん(「ルナ・ソングス2」より)
- ALCHEMY OF LOVE~愛の錬金術~(「天地無用 in LOVE」より)
- 虹色れんあい♡(「星くずパラダイス」より)
- 約束だよ(KWAK'S SONG)(「あひるのクワック」より)
- ハッピー・ハッピー(ALFRED'S WALK)(「あひるのクワック」より)
- クローバーイノセンス(「MIYUKI WORLD」より)
- ぴょこLOVE注意報(「デジキャラットにょ」より)
- Grow up~明日があるぴょ~(「デジキャラットにょ」より)
DISC 2 収録曲
- 夢のBalloon(「らんま1/2」より)
- 未確認Girl(「エリアル」より)
- 好きと言いなさい(「忍空2」より)
- 花言葉にゆれて(「絶対無敵ライジンオー」より)
- ぶらんこの歌(「七つの海のティコ」より)
- プラスα~Album Version~(「瑠璃丸伝」より)
- 騒擾楽園(パラリラパラダイス)(「魔神英雄伝ワタル3」より)
- にんじんとグリグリ(「魔道王グランゾート」より)
- シンデレラなんかになりたくない(「チンプイ」より)
- いつまでもwith you(「七つの海のティコ」より)
- あなたの風になりたい(「BAD BOYS 2」より)
- あこがれ(「ルパン三世 炎の記憶」より)
- November Rain(「らんま1/2」より)
- JUSTIS~ダンガン×ヒーローより~(「MIYUKI WORLD」より)
- HI・MI・KO(台詞入り)(「魔神英雄伝ワタル2」より)
DISC 3 収録曲
- COME TRUE…(アルバム「PULSE」より(セルフカバー))
- Follow you, Follow me(アルバム「PULSE」より(セルフカバー))
- Go ALONG!GO AROUND!!(アルバム「PULSE」より(セルフカバー))
- 夢を追いかけて(アルバム「PULSE」より(セルフカバー))
- 林原めぐみ「タイムカプセル」発売記念イベント
- 2015年7月5日(日)東京都 某所
林原めぐみ(ハヤシバラメグミ)
東京都出身の声優、アーティスト。高校卒業後、看護学校に通いながら声優養成所に入所。養成所在籍中となる1986年にアニメ「めぞん一刻」で声優デビューを果たし、以来「魔神英雄伝ワタル」の忍部ヒミコ、「らんま1/2」の早乙女乱馬、「新世紀エヴァンゲリオン」シリーズの綾波レイ、「スレイヤーズ」シリーズのリナ=インバース、「名探偵コナン」の灰原哀、「ポケットモンスター」シリーズのムサシなど人気作の主要キャラクターを歴任する。また1989年発表の「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」のイメージソング「夜明けのShooting Star」が話題を集め、“声優アーティスト”の先駆け的存在に。1990年には個人名義で1stミニアルバム「PULSE」をリリースし、1990年代後半には「Give a reason」「Just be conscious」「don't be discouraged」などオリコン週間シングルランキングトップ10ヒットを記録した楽曲群を発表する。その後もコンスタントにリリースを重ね、これまでに38枚のシングル、13枚のオリジナルアルバム、3枚のベストアルバムを発表。そしてアーティストデビュー25周年を迎えた2015年6月、活動初期のキャラクターソングと「PULSE」収録曲をパッケージしたベスト盤「タイムカプセル」をリリースする。