橋本裕太×KSUKE|“とろけ声”の注目新人、憧れの人に会う

ある朝、携帯に見たことない数の通知が(橋本)

橋本 KSUKEさんはパフォーマンスの前はどうやって過ごすんですか? これまで大きなステージにも立たれてますよね?

KSUKE 最近はリラックスできるようになったけど、昔は顔が引きつるくらい緊張してましたよ。プレイが終わるまで不安でしょうがなかった。でもDJってみんなを楽しませる仕事だから、まず自分が一番楽しんでる状態でいることが大事なんです。だから今はプレイのときにいい感じになれるように、出番前は落ち着くことを意識してますね。ただ正直な話、緊張はどこでもしますよ(笑)。

左から橋本裕太、KSUKE。

橋本 KSUKEさんですらDJの前は緊張するんですね……ちょっとホッとするな。人を楽しませるために自分が楽しまなくてはいけないっていうのは勉強になります。そのためにリラックスするという。

KSUKE 真面目だなあ(笑)。僕も裕太くんに聞きたいことがあって。YouTubeやMixChannelのようなSNS上で自分の歌を発表するってどういう感じなの?

橋本 シンガーになろうと思ってとりあえず上京して、何をしていいかわからなかったから、まずSNSに歌の動画をアップし始めたんですよ。で、ある日の夜にオルゴールアレンジにカバーした動画を上げたら、翌朝SNSから携帯に見たことない数のすごい通知が来てて。それまでそんなこと一度もなかったから、携帯を見たときは鳥肌立ちましたね。

KSUKE そのエピソードはリアルだなあ。

橋本 正直僕自身もそのスピード感に付いていけてないです。たぶんこの1年半で、僕の歌を聴いてくれてる人は1万倍くらい増えました。でもなかなか実感できなかったですね。今こうしてメジャーデビューするという段階になってようやく「ああ、みんな聴いてくれてるからデビューできるんだ」って思えるようになった。

KSUKE 僕はクラブという現場で活動してきたけど、今はSNSが現場なんですね。

橋本 まさに! 歌い手の方もネット上でいろいろ活動されてますし。

KSUKE 昔で言う路上ライブが、SNSへ動画をアップロードすることになってたりするんですね。すごい時代だな(笑)。

橋本 若いアーティストの活動のメインフィールドが変わりつつあるのは事実だと思います。

僕は自分の歌を誰かに好きになってもらいたい(橋本)

──裕太さんの資料のプロフィール欄に記載されている「13人ものレーベルスタッフから獲得の手が上がり、本人はすぐにデビュー出来るものだと勝手に妄想していたがそんな話にはまったくならず、2015年、不安になり思いきって上京。時を経てようやく担当ディレクターと出会うが、人生を完全否定されるほどのダメ出しを食らう」という一文がすごく気になったんですが……。

橋本 そうなんです。自分の世界の狭さを思いっきり指摘されました(笑)。それまで自分がよしとしてきたことが全然通用しない感覚……大人の世界と言うか、社会の厳しさと言うか。

橋本裕太

KSUKE 確かにその指摘はキツいけど、逆に幸せなこととも言えるよ。若いうちはなかなか気付けないことだから。僕も名古屋から東京に出てきたときや、日本から海外に行ったときにそういうことがあったし。世界が広がると、それまでの自分では想像できない経験をすることがある。僕なんかは「こういう意見を言う人がいるんだ……」みたいに思うようにしてる。もちろん自分の中で全部消化できるわけじゃないから、少しずつ受け入れていくって感じだけど。これはどこで活動していようと、常にあることだから一生ダメ出しされながら成長していくしかないと思っています。

橋本 すごいですね……。

KSUKE いやいや。でもヘコんだ顔してDJブースに立ちたくないんですよ。そういうときにいいモチベーションを作るのは大変だけど。裕太くんはどうしてるの?

橋本 僕は応援してくれる人のコメントや、たまにいただくお手紙の感想を思い出します。自分がなぜ歌っているのか、改めて気付かされるんです。僕は自分の歌を誰かに好きになってもらいたい。だから今後は“伝える”ってことにこだわりたいんです。

KSUKE それは大事だと思う。例えば、僕が高校生の頃に聴いてたアーティストを今たまに聴いたりすると、当時のことを思い出したりするじゃないですか。それって音楽がその人の生活の一部になってるからだと思うんです。それもある意味“伝える”ということで。僕は自分の音楽がみんなの生活の一部になれたらいいと思ってるんです。

KSUKE

橋本 僕もSNSのコメントとかで「明日からテストなんだけど、裕太くんの歌を聴いてがんばるね」とか「今日友達と喧嘩してイライラしてたけどちょっと穏やかな気持ちになれたよ」とか言ってもらえたときはうれしいですね。

KSUKE 本当にそれが一番大事。そのファンの子が10年後に裕太くんの歌を聴いたら、きっとテストのことや喧嘩のことを思い出すと思うんですよ。そういう人たちを1人でも多く作るために、いい曲作ったり、いいDJしたりしたい。そのためにはモチベーションを維持してないといけない。だから極端な話ですけど、「今歌いたくない」と思ったら歌わなくていいと思う。

橋本 それはどういうことですか?

KSUKE やりたくないことを無理してやっても自分のためにならないから。でも、僕らは音楽が仕事だから歌わない状況なんてありえない。だからそうならないように、常にいいモチベーションを保っていく必要があるんです。裕太くんはこれから音楽でいろんな人とつながっていくと思うから、出会った人たちといろんな話をすればいいよ。僕も悩んだらすぐに先輩に相談するし(笑)。1人でスキルを磨くことも大切だけど、こうやって人と目標について話したりしてパッションを高めていくことも同じくらい大事だと思うし。

橋本 僕はまだそこまで考えがおよばないんですよ。自分の技術を高めることや、できることにしか目がいかなくて。だから今日はすごい勉強になりました。15歳から目標にしていたメジャーデビューという夢が叶ったんで、次はUSENとかで流れている僕の曲を聴いた人に「この声、橋本裕太だ」と思ってもらえるようになりたいですね。

左から橋本裕太、KSUKE。