ナタリー PowerPush - GARNET CROW
新たな魅力を引き出す“もうひとつの世界”アルバム「parallel universe」
今年3月にデビュー10周年を迎えたGARNET CROWがニューアルバム「parallel universe」を完成させた。切なさや儚さを内包した世界を一貫して描き出してきた唯一無二のバンドが本作で手に入れたのは、カラフルで開けた新たな楽園。それは、これまでの活動で築き上げてきたイメージを大きく超越した内容であり、長年のファンはもちろん、新規リスナーを招き入れる確かなきっかけになるであろう仕上がりだ。
ナタリー初登場となる今回は、ボーカルの中村由利とギターの岡本仁志にインタビューを敢行。シリアスなアーティストイメージとは対照的に、非常にポップな空気感をまとった2人に、新作のことはもちろん、バンドのアイデンティティに迫る様々な質問をぶつけてみた。
ちなみに、岡本仁志が6年ぶりのソロ作品「Now Printing...」をSUPER LIGHT名義で同日にリリースすることも決定。こちらでは、GARNET CROWとはひと味違う、洋楽的センスを炸裂させた極上のポップミュージックが鳴らされている。随所に詰め込まれた職人的こだわりを堪能してほしい。
取材・文/もりひでゆき
10年間続けられた理由は制作とライブのちょうどいいバランス
──デビュー記念日からはしばらく経ちましたが、まずは改めて10周年を振り返っていただければ。
中村由利(Vo) 感覚的には短かったですね。デビューして2年ぐらいは制作だけでライブはやってなかったんですけど、それ以降、ライブをやりだしてからは早かったなぁって。アルバムを作って、その楽曲をライブで披露して、また制作するっていう、そういう規則正しいペースが守れてるからこそ、ここまでストレスなく続いたような気もしますし。
──そういうサイクルがGARNET CROWには合っていたと。
岡本仁志(G) そうですね。落ち着いて、そのサイクルを全うできるっていうスタイルが自分たちに合ってたんだと思います。
中村 どちらかというとじっくり楽曲を作っていたいタイプではあるんですけど、ダイレクトにファンのみなさんと触れ合える快感を知ってしまったら、どうしてもまたライブがやりたくなるし。制作がしたい、ライブがしたいっていうスイッチが、活動のペースとちょうどいい具合に合ってる感じなんでしょうね、歯車のように。
──岡本さんはこの10年、いかがでしたか?
岡本 10年経っても、思ったより人間は成長しないなっていう。もちろん知識とかスキルはそれなりにしっかりつくし、それも成長だとは思うんですけど、自分の胸に手をあてて大きくなったかなって考えると、そうでもないなぁって。
──それは人としてってことですか?
岡本 そうそう。音楽とは関係ないところですけど、人間的に大きくなれたのかなって。例えば、何かの過ちに対して寛容になれてるかなぁ、なれてないよなぁ、みたいな(笑)。
あまりアーティスト然とした人がいないバンド
中村 あははは(笑)。みんな変わらないよね、そういうキャラクターみたいな部分は。
岡本 そうだよね。より際立って、わかりやすい人間になってます。
中村 それが面白いんですよ。長く一緒にいることで、どういう人間かっていうのがよりわかってくるから、それを楽しむ余裕も出てきてて。今日いないメンバーとかは特に面白い。そんな中、私は一番まともですけどね。常識人ですから。普通にOLできると思ってますから。他のメンバーは絶対無理ね。
岡本 確かに時間にはキッチリしてるけど、OLは無理だと思うなぁ(笑)。
──岡本さんは、バンド内ではどんなキャラなんですか?
岡本 僕はクッションですかね。一番、地に足がついてるので、自由奔放に発言してる3人をまぁまぁまぁってつなぎ合わせるというか。僕がいなかったら大変なことになると思いますよ、たぶん。
──過ちに寛容になれないという先程の発言が若干気になりますけど(笑)。
中村 あははは、確かに。クッションとしてダメじゃん(笑)。この人はね、アーティストっていうより職人気質なんですよ。家でろくろ回してる陶芸家みたいな。頑固だしね。まわりがOKって言っても、自分が納得してなかったらバリンって割って、新しいツボ作るみたいな(笑)。
岡本 それ言ってしまえば、みんなそうじゃない? AZUKIさん(Key)もずっとろくろ回してそうだし。
中村 AZUKIさんはね、天才肌っていうか、芸術家寄りなんですよ。で、古井さんはお師匠さんみたいな感じ。
岡本 だいぶルーズだけどね。
中村 で、私だけ常識人。一般ピーポーですね。
──そこだいぶ推しますね(笑)。
中村 あははは。まぁでもそんな感じのバランスで、あんまりアーティスト然とした人がいないんだけど、4人集まるとGARNET CROWっていうアーティストになる。それが不思議ではありますね。
──GARNET CROWから漂うミステリアスなアーティスト性からすると、今回初めてお会いしたお2人から受ける印象はけっこう意外で。こんなに気さくな方々なんだなぁと。
岡本 アー写ではわりと笑わないですからね。シリアスな方向にもっていくので。
中村 それはやっぱり楽曲の世界観からイメージを引き出してるからですよね。あんまりニヤッと笑っててもね、説得力がなくなっちゃうというか。楽曲ありきで活動してるので、自分たちがそんなに主体にならないようにっていう思いもあるし。
──ダークな印象を持つ曲が多いですしね。
中村 こうあるべきっていうものはないんですけど、無意識に自分たちの好きなテイストっていうのは出ますよね。それは儚さとか憂いを含んだものとか、ちょっとダークな曲調のもので、そういう曲を数多く残してきたと思ってます。なので、それが10年間の活動の中で積み上げてきた“GARNETらしさ”だとは思うんですけど。
CD収録曲
- アオゾラ カナタ
- As the Dew~album version~
- Over Drive
- tell me something
- 迷いの森
- 空に花火~orchestra session~
- 渚とシークレットデイズ
- The crack-up
- strangers
- 今日と明日と
GARNET CROW livescope 2010+ ~welcome to the parallel universe!~
- 2010年12月12日(日)
大阪府 グランキューブ大阪 メインホール
OPEN 18:00 / START 19:00
問い合わせ:サウンドクリエーター - 2010年12月24日(金)
愛知県 名古屋市公会堂 大ホール
OPEN 18:30 / START 19:00
問い合わせ:サンデーフォークプロモーション - 2010年12月26日(日)
東京都 東京国際フォーラム ホールA
OPEN 17:00 / START 18:00
問い合わせ:ディスクガレージ
GARNET CROW Special Countdown Live 2009-2010
- 2010年12月31日(金)
大阪府 堂島リバーフォーラム
OPEN 21:45 / START 22:30
問い合わせ:サウンドクリエーター
GARNET CROW(がーねっとくろう)
中村由利(Vo, Songwriting)、AZUKI 七(Lyrics, Key)、古井弘人(Arrange, Key)、岡本仁志(G)からなる音楽クリエイター集団。2000年3月にシングル「Mysterious Eyes」「君の家に着くまでずっと走ってゆく」の2タイトル同時発売でデビュー。全楽曲の作曲を中村が、作詞をAZUKI 七が手がけており、ファンタジックな作風とダークな色合いを持つサウンドスケープで、独特の世界観を確立している。 デビュー直後は制作およびリリースのみに専念していたが、2002年10月に1stツアーを行い、その後活発なライブ活動を開始。2010年にはデビュー10周年を迎え、コンプリートベストアルバム「THE BEST History of GARNET CROW at the crest...」、シングル「Over Drive」を発表。さらに12月に、バンドの新しい一面を提示する最新アルバム「parallel universe」をリリース。