「サイハテ」をフルカワミキが“歌ってみた”

──まず「サイハテ」という曲との出会いについて教えていただけますか？

以前から動画サイトを個人的に楽しむことはあったんですが、ボーカロイドの曲についてはそんなに積極的に観てたわけじゃないんです。でもあるとき、ボーカロイドを使った自作曲でクオリティが高いものもいっぱいあるよ、と知り合いに教えてもらったのをきっかけに、改めていろんな曲の動画を観てみて。その中でも「人が歌ってみたらどうなんだろうな」って強く思ったのが、この曲だったんです。

──普段から動画サイトはよく観られるんですか？

観ますね。ボーカロイドだけじゃなくて、他のアーティストのライブ映像とか、動物の動画とか（笑）。

──メジャーレーベルに所属されてるアーティストが動画サイト発の楽曲を自分の音源としてリリースするのは珍しいことだと思うんですが、今回音源を作ろうと思ったのは、単純に歌ってみたい、作ってみたいという気持ちから？

歌ってみたかったし、すごく面白いシーンだと思ったっていうこともあるし。動画サイトにアップされている曲を、あえて音楽を職業にしてる人間が持つノウハウや感覚で音を再構築したら、また違う解釈が生まれるのかなって思ったんです。解釈っていうか……どうなるんだろうなって。そうしたら、もしこれを人が歌うんだったらこうしてみたいっていうアイデアが自然と浮かんできたんです。あとは、動画サイトにはいろんな人たちが参加してるけど、視聴者を意識してアップしていますよね。職業音楽家だけじゃなくて、いろんな職業の人達がそれを普通に観てるんだよって言いたかったという気持ちもあります。

──他の人が作った楽曲を歌うという意味では、人から楽曲を提供されるのと似ているのかと思いますが。

うーん、提供とはやっぱり違うかな。カバーですよね。この曲はもう既に人から愛されてたものだから、このバージョンは私の名前で出すけど、私の曲っていうふうには全然捉えてないんです。だからこれは、“「サイハテ」っていう曲を人間が歌ってみたバージョンです”っていう感覚。なのでカップリングに自分の曲を入れたりもしてないし。

──なるほど、じゃあ“○○が歌ってみた”っていう動画と同じで、これは“フルカワミキが歌ってみた”バージョンってことなんですかね？

そうですね（笑）。

──そう言っていただくと、すごく親しみを感じるユーザーが増えそうですね。

はい、そう思っていただけるとうれしいです（笑）。

オニキスくんとは感性が近いと思えた

──「サイハテ」を作った小林オニキスさんには、ミキさんからご連絡を取られたそうですが、先方は最初びっくりされたんじゃないですか？

びっくりしたみたいですね（笑）。「サイハテ」っていう曲を聴いたときに、この作者の人は私がやってきたことと感覚や好きなものがなんとなく近いのかなって感じて、それをきっかけにすごく興味がわいたんです。実際、オニキスくんに会って話してみたら、私の前のバンドとかその近辺の音楽をすごく聴いてたって言ってくれて。「サイハテ」は、彼にとって初めて四つ打ちを用いた曲だったらしいんですけど、（スーパーカーの）「Strobolights」とかの影響を受けてると思うとも言ってくれたんです。そういう、感性を共有してるって私が嗅ぎ取ったのかな。つながれるっていうか。

──その共有できるって考えは、会う前から持っていたんでしょうか。

もちろん最初は確信が持てなかったんですけど、なんとなく感覚で「もしかして近い感性を持ってるんじゃないかな」って思ってました。その後、実際にコミュニケーションをとって「あっ、やっぱり私の音楽を知っててくれたんだ」ってわかったんです。オニキスくんはオニキスくんで、初対面のときに「本当に観てたんですか!?」って言ってたし（笑）。いろんな人が自分の曲の動画を観てるって実感を、彼はやっとそこで持てたみたい。なので、そこでお互い両思いだって確信できて。