「Coming Next Artists」#13 イトヲカシ|奇をてらわない王道へのこだわり

須賀健太

パーソナリティ
須賀健太

堂々と歌える自分を誇らしく思う

──イトヲカシさん曲はすごくシンプルだなと感じていて。これにエッジを効かせようと思えばいくらでもできるのに、音も歌声もすごくストレートですよね。

宮田 ミニマムにしようと意識してるんです。それが一番歌の伝わる作り方なんじゃないかと思っていて。僕らの曲にあるようなストイックなバラードって、歌える人も限られてくるんじゃないかな。

伊東 ほかの取材で「歌うのに勇気がいるんじゃないの?」と言われたことがあって。「なんでだろう」と思って話を聞いたら、「ここまで音数が少なくて、ストレートな歌詞で、メロディラインがキャッチーなバラードを歌うのは難しいと思うから」と。意識したことはなかったんだけど、堂々と歌うことができる自分をちょっと誇らしく思いましたね。

宮田 役者さんも同じようなことがあるんじゃないですか?

イトヲカシと須賀健太。

──まっすぐな言葉を発するほうが難しいですよね、やっぱり。「あなたが好き」とか「僕はこう思っている」とか。現実味がないと言うか、嘘くさく見えがちで。

伊東 すごくわかる。ストレートなセリフこそ嘘くさくなるよね。

宮田 しかも、自分の中にないことも言わないといけないじゃないですか。俳優さんってすごいなと思う。

伊東 例えば吸血鬼とか魔法使いとか殺人犯の役もやんなきゃいけないでしょ。何かになりきって歌うミュージシャンもいるけど、我々は無理なんですよ。全部本当のことしか言えないタイプだから。

──でも役者にもめちゃめちゃ役作りをする人と、ニュアンスで演技する人がいて。僕はわりとニュアンスでやるほうだと自分のことを思っているんです。

伊東 あっ、グルーヴタイプなんだ。

──台本を読み込むことももちろん大切なんですけど、演技って1人でやるわけじゃないですから。「相手はこういう感じで台詞を言うだろうな」と思ってても、まったく違う感じで芝居をされることもあって。それで対応できないと面白みがどんどん減っていってしまうので、瞬間瞬間のセッション的な部分を大切にしたいんです。

伊東 ちょっとわかるかも。

──「ここでこういう表情して、こうやって動こう」って自分で勝手に決めて行くよりも、セリフだけ覚えて行ってその場で人と芝居を作ったほうがよいものができたり。

伊東 そこは音楽も演技も同じなのかな。

宮田 ライブってそういうことだもんね。

相手の感性を許容することが大事

──作詞作曲はお二人で?

伊東 どっちかがメインを担当している曲もありますが、基本的にはそうですね。

──作ってきた曲を見せ合うところから始まるんですか?

伊東 最初は2人で話し合いながらメロディラインなどを詰めます。そこから「じゃあこんな感じの編曲をしよう」「僕はこういう歌詞を書いてこよう」ってお互いの作業に入って、「ああ、こういう感じの編曲になるのか。自分の歌詞と合うかな。大丈夫かな」と思いつつも、どっかで「絶対大丈夫だろう」みたいな気持ちもあって。

──今のお話を聞いて、すごい信頼関係だなと思いました。モノ作りって「俺はこうやりたいんだよ」と自分のやりたいことを相手に押し付けしてしまいがちだと思うんですよ。でも、お二人には「こいつとならどこか合わさるだろう」という感覚があるんですね。

伊東 お互いのクリエイトを尊敬し合ってる部分もあるので。でも、お互いに「ちょっと違うな」と感じることはけっこうあるんですよ。そのときは「そっちが正しいから合わせよう」とはならなくて。2人共なんとなくでモノを作ってないし、絶対両方に意図があるから。今のところ、いい意味でぶつかって新しいものを生めていると思います。

左から宮田“レフティ”リョウ、須賀健太。

宮田 2人でやってる意味を考えると、相手の感性を許容することが大事と言うか。もちろん、お互いをいいと思って許容するということです。例えば編曲しているときは「こういう感じの歌詞が来るんじゃないかな」「このメロディラインだったらこういう言葉が乗って来るんじゃないかな」と考えるんですけど、「うおお、全然違う言葉が乗ってきた」「そういう角度で来るんだ」みたいなのが楽しくて。その中で「でも、俺はこう思うよ」ってぶつけ合って、出てきたA案とB案でもないC案を作っていくんです。たぶん、映画を撮るときとかも一緒だよね。

──そうですね。

伊東 互いの意図がぶつかったときに、腹が立つこともあるかもしれない。でも「それはいいね」「確かにそうだけど、俺にはこういう意図がある」というようにブラッシュアップしながら作品を作ってます。その場で生み出されていく何かが大事なんですよね。

リハーサル通りにいったら、もやっとする

宮田 レコーディングをするときに、僕らデモを作るんですよ。かなり明確な形のものを作るんだけど、めちゃめちゃ練習して「このラインで行こう」と事前に決めるような準備は絶対にしたくないんです。イメージがまだふんわりした状態でドラマーやギタリストの方と一緒に演奏したときの「ここ行っちゃった!」みたいな感覚を大事にしたくて。

──セッション感を大事にしてるんですね。

伊東 ライブでもリハーサルを入念にやるんだけど、頭の片隅には「どうせ本番は全然違うだろうな」という思いがあるんですよね。まったく同じ歌を歌ったことや、同じライブになったことがないから。そこにはグルーヴ感やアドリブ感があって。

宮田 「リハーサル通りにできた! うれしいな!」と思ったこと1回もないし(笑)。って言うか、そもそもリハーサル通りにいくことがないし。

伊東 仮にリハーサル通りにいっちゃったら、もやっとすると思う。「今日いいライブだったのかな?」って。

──「超えてねえな」とか、「リハーサルをなぞっちゃったな」みたいな。

イトヲカシと須賀健太。

宮田 あと、リハーサルでちょっとしたマジックが起きると「ああ……本番の楽しみが1個減っちゃったな」って。

──すごいわかる! 「うわっ、今出ちゃったよ」と思いますよね。

宮田 改めて同じことをやるのはちょっと違うしね。

──僕は今出させてもらっている「ハイキュー!!」という舞台では、役者が考えなきゃいけないことがすごく多くて。だからグルーヴ感というものが、よくわかります。

伊東 レコーディングがドラマの撮影だとしたら、ライブは舞台なのかな。お客さんも目の前にいるし、ミュージシャンと俳優は感覚が近いのかもしれない。

──お客さんが目の前にいるときって、ちょっと言い表せないゾーンに入るじゃないですか。

伊東 そうなんだよね。「リハーサルでもどんな状況でも100点満点を出さなきゃプロじゃない」という言葉に対して、僕は状況が違うのに同じことができるほうが不自然だなと思うんです。

──こんなに「わかる」って思うインタビュー、ほかにないです。

伊東 あはは(笑)。ホントに?

宮田 やっぱり、表現というフィールドの中で音楽と演技はつながってるんですよね。

──だから、稽古帰りにイトヲカシさんの曲を聴いて泣きそうになったのかな。まっすぐなことをやってるときほど、まっすぐな歌が響くと言うか。つらいときに音楽が沁みる感覚があって。

伊東 音楽に救われるよね。

──すごく救われます。1カ月間撮影が続くときは、ずっと同じ曲ばっかり聴くこともあるし。今まではミュージシャンの方はどこか別世界の人たちで、「曲を作るって、頭の中どうなってるのかな」と思ってたんですよ。でも今のお話を聞くと、やっぱりモノ作りに対する根本の部分は同じなんだなと感じました。

伊東 「表現する」という意味で、1本の芯が通ってる同じ芸術なんだよね。

イトヲカシ「アイオライト / 蒼い炎」
2017年11月3日発売 / avex trax
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CD収録曲
  1. アイオライト
  2. 蒼い炎
  3. アイオライト(Instrumental)
  4. 蒼い炎(Instrumental)
DVD収録内容
  • 「アイオライト」Music Video