ナタリー PowerPush - Acid Black Cherry

今しかできないアルバム「『２０１２』」

2012年にしかできないアルバムを作ろう

──今回のアルバムタイトル「『２０１２』」の意味を教えてください。

いろいろ考えた上で、今しかできないアルバムを作ろうっていう結論になったんです。物語の中にも出てくるんですけど、2012年ってマヤ暦で世界が終わる年なんですよ。あと今年の1月に「世界終末時計が残り5分になった」っていうニュースもあって、そういう歴史の類も僕は好きなので、それも踏まえて「『２０１２』」というテーマでストーリーを作ったんですよね。

──その中身は、震災以降の出来事がかなり反映されているように思えました。

もちろんそう捉える人もいると思ったし、そこにはかなりデリケートな問題も含まれているから、細心の注意を払ったつもりです。このアルバムを誰かが手に取ったときの感覚は、人それぞれじゃないですか。良いなと思う人もいれば、不快だと思う人もいる。だからこそ、こちら側はしっかり信念を持ってやらなくちゃいけないと念頭に置いていました。あと「スタイルに見えちゃいけない」っていうのはすごく考えましたね。

──「スタイルに見えちゃいけない」というのは？

「カッコいいでしょ？」と思ってやっているように見えたら良くないな、ということ。人から「どういうこと？」って訊かれたとき、正々堂々とこういう意図でやってますって言えないと。今回の物語は、震災のことだけを反映したリアルな物語ってわけではないけど、ひとつ確実に言えるのは、震災が起きたときに恐怖や不安や、何かを感じて、それを何も言わないのはどうかな？って思ったこと。あの時期、吉井和哉さんが「こういうときに何を歌うかで、アーティストの真価が問われる」とおっしゃっていて、それにはすごく共感できたんですけど、性格がヒネくれてる僕は「俺なんかから『がんばれ』なんて言われたくないやろうな」って思ったんですよ。だから「がんばれ」って言う応援とは違う形で人を勇気付けたいなって。音楽は、聴くと元気になれたり明るい気持ちになれたりする力を持っているから、ABCの音楽もそうありたいなと思うんです。

「その日が来るまで」があったからアルバムができた

──「『２０１２』」の物語の中では、天使が黒く染まってしまい、歌が歌えなくなってしまいますよね。去年以降、同じような気持ちになったアーティストも多いと思うのですが、yasuさんはいかがでしたか？

結局音楽って娯楽だから、なくても大丈夫だけど、あったらあったで良いこともある。それを生業としてやってる以上「何をすべきか？」っていうのは考えました。それぞれに役割は絶対あると思うけど、役割を履き違えてしまうと逆に迷惑がかかるだろうし、やっぱり自分のできることを精一杯やるしかないなって……そう思いましたね。

──ところで、10曲目の「その日が来るまで」はアルバムの軸ともいえる楽曲だと思います。この曲の中でyasuさんは「神様教えて…終わりの時は今すぐじゃないといけませんか？」と歌っていますね。

これは、震災が起きたあと最初にできた曲です。去年の3月って、元々曲作りの期間だったんです。だから、まさにあのときも曲を作らなくちゃいけなかったんだけど、全然作る気になれなくて、ずっと進まなかったんですよね。こんなことやってていいのかな？って自問自答を繰り返して。その後とにかく前に進もうと最初に作ったのがこの曲。

──じゃあ音楽にもう一度向き合うきっかけとなった曲？

そうですね。正直、発表する気もなかったんです。歌詞も当時書いた仮歌詞のまんまだし。元々こういうことを曲にして歌うのって、あんまり好きではないんですよ。だけど、これを受けてスタッフもいろいろと思うところがあったみたいで。結果的にはこの曲があったから「『２０１２』」というアルバムができたんだと思いますね。

CD収録曲

～ until ～
Fallin' Angel
in the Mirror
ピストル
少女の祈りIII ～『２０１２』ver. ～
Re:birth
指輪物語
CRISIS
～ the day ～
その日が来るまで
so…Good night.
doomsday clock
蝶
イエス
シャングリラ
～ comes ～

Acid Black Cherry
（あしっどぶらっくちぇりー）

Janne Da Arcのボーカルyasuによるソロプロジェクト。2007年7月にシングル「SPELL MAGIC」でメジャーデビュー。その直後に東名阪フリーライブを行い、「SUMMER SONIC 07」に出演したほか、秋にBREAKERZらが参加した主催イベントを開催。その後は精力的なリリースとライブ活動を続け、2011年にはデビュー4周年を記念し、「ABC Dream Cup」と題して着うた無料配信、4万人フリーライブなど4つのプレゼントを発表。さらに9月から5カ月連続シングルリリースを行い、話題を振りまく。2012年3月、約2年半ぶりとなる3rdアルバム「『２０１２』」を発売。5月からは全国ツアーを敢行する。

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