ナタリー PowerPush - 虹色オーケストラ

40mPとたくさんの仲間が作り上げた感動の一夜

顔合わせしたのが本番前日だった

──事務員さんがMCに対して譲れないこだわりを持っていたのと同じように、40mPさんの中にも何かそういうこだわりはありましたか?

40mP 「ほころび」を合唱することですね。これは東京公演が終わった直後くらいに「次の虹オケで絶対やりたい。あの舞台で合唱したら感動してもらえる」って思いながら作ってた曲なんです。「ほころび」は最後のクライマックスに合唱することありきで作ったので、まず最初にそれを伝えて手配してもらいました。

──コーラス隊をバックに迎えるので、練習などいろいろ大変なことも多そうですね。

「虹色オーケストラ」兵庫・神戸文化ホール 大ホール公演の模様。

事務員G 人数も多いし東京から呼ぶわけにはいかないので、コーラス隊もストリングスもブラスもほぼ関西でメンバーを集めて、東京でやったときの指揮者が関西に出張して教えに行くという形式を取りました。

40mP だから初めて顔合わせしたのが本番前日だったんですよ。

事務員G でも指揮者の松田怜くんが「大丈夫です」って言ってたから安心だろう、と(笑)。

40mP 2人の信頼関係が厚いので、そこに関してはお任せしました。

事務員G 松田くんは僕とピアノの先生が一緒で、弟弟子にあたる人なんですよ。虹オケ以前に私が別のコンサートを企画してるときに、ストリングスが欲しかったんだけどツテがないので、昔のピアノの先生に誰か紹介してくれって言ったら、松田くんを紹介してくれて。

──奏者や歌い手に対して、演奏面でのディレクションはしたんですか?

40mP 意外と何もしてないんですよね。「もし間違えてもヘラヘラしたり『間違えちゃった!』とか言ってごまかさないでほしい」みたいなことを事務員さんが事前に伝えてて、しっかり気持ちを持っていただきたいとは言ったんですけど。それ以外は本当に自由に歌ってもらってました。むしろ歌い手さんの提案から生まれた部分もいくつかあるんです。「ドレミファロンド」のダンスは、歌い手さんが踊りたいって言って振り付けを考えて、自分たちで練習してできたものなんで、みんなで一緒に作っていった感じです。

事務員G メンバーに恵まれましたね。

40mP うん。統率が取れずバラバラになる可能性も全然あったのに。

事務員G 千穂(えいちぴよこ)さんとΦ串Φさんは、会った初日に超仲良くなってましたからね。あと、シャノさんとぴよこさんも、2人で歌う曲があったからずっと一緒に練習してたり。僕らは歌い手さんに「もっと練習しなさい」とか言うような立場でもないと思ってるので、自発的に皆さんが練習してくれたのは助かりました。

2人だけでできる曲を1曲入れたかった

──神戸公演はとてもコンセプチュアルな構成でしたが、この公演を通して観客に伝えたいことはなんだったのか教えてください。

事務員G

40mP 1曲目に伊東歌詞太郎さんに歌ってもらった「夢地図」は自分にとってもすごく大事な曲なんです。いろいろな問題があった、自分にとって一番つらかった時期に、それを乗り越えるために作った曲で。「壁にぶち当たったときに、自分を信じてそれを乗り越えていく」みたいな、すごくわかりやすいテーマなんですけど、そのメッセージを物語風にして発信しようと思ったのが今回の公演だったんです。わかりやすい物語でお客さんに共感してもらうというのを、ぜひやりたいなと思ってて。

──「夢地図」は全体を通してのテーマだったんですね。

事務員G そうです。だから僕はオープニングテーマって呼んでました。物語の本編がここから始まる、ってイメージで。同じ意味で「ドレミファロンド」は、全部が終わったあとに流れるエンディングテーマですね。

──今回「はじめての涙」だけは40mPさんが自分で歌ってましたよね。

事務員G アコースティックの演奏を1曲入れたいという話を40mPさんがしてて。メリハリを付けたかったので、ちょうどひと段落したあたりでそれをやろうと思ったんです。照明とかも落とし気味にして、少し気分を変えるような感じで。

「はじめての涙」を歌う40mP。

40mP 虹色オーケストラはすごくたくさんの人と一緒にやってるんですけど、根本の部分は僕と事務員Gさんで作ってるので、2人だけでできる曲を1曲入れたかったんですよ。だからこの曲はギターの弾き語りと事務員Gさんのピアノをメインに。「はじめての涙」は自分に子供が生まれたときに作った曲で、この日は家族も来てたので、ぜひ聴いてほしいなと思って僭越ながら1曲歌わせていただきました(笑)。

──いい歌声だったと思うんですが、全曲自分で歌うことには興味ないですか?

40mP それは今のところないですね。自分はあくまでもコンポーザーであって、プレイヤーではないと思っているので。まあ、ああいう場に立たせていただいておきながら、そんな意識じゃダメだと思うんですけど(笑)。ボカロもそうなんですけど、僕は誰かに曲を提供することに楽しみを感じているので、そっちをメインにやっていきたいです。

40mP×事務員G「虹色オーケストラ」/ 2012年12月31日発売 / 1800円 / 40メートル走 / 40M-001
CD収録曲
  1. 夢地図(vocal:伊東歌詞太郎)
  2. トリノコシティ(Vocal:ENE)
  3. キミボシ(vocal:新社会人)
  4. Melody in the sky(vocal:レミュー)
  5. ジェンガ(vocal:ちびた)
  6. からくりピエロ(vocal:that)
  7. 春に一番近い街(vocal:シャノ)
  8. ドレミファロンド(vocal:ALL)

虹色オーケストラ大宮公演

2013年12月29日(日)
埼玉県 大宮ソニックシティ 大ホール
SS席 5800円 / S席 4800円 / A席 3800円 / 学生席 3000円(入場の際に学生証が必要です)
先行予約 7月上旬予定 / 一般発売 8月上旬予定
<出演者>
40mP / 事務員G / 天月 / 伊東歌詞太郎 / 千穂(えいちぴよこ) / Φ串Φ / clear /  that / シャノ / and more

好評だった神戸公演のスタイルを踏襲し、曲目・演出等を一部変更した形式で実施。全来場者に入場時に頒布される絵本は、大宮公演用に一部が改定される。

40mP(よんじゅうめーとるぴー)

ボーカロイドを使用したオリジナル曲を動画サイトで発表するボカロP。2008年からニコニコ動画にオリジナル曲の投稿を開始し、同年公開された2作目「Melody in the sky」で早くもネットユーザーから多くの注目を集める。アーティスト名は「Melody in the sky」の動画で使用された初音ミクのイラストが、周囲の建物と比較して巨大に見えると視聴者に指摘されたことが由来。その後も「からくりピエロ」「トリノコシティ」「妄想スケッチ」などの多彩な表情を持つポップソングで人気を確かなものにした。2011年にはテレビ東京系アニメ「FAIRY TAIL」のオープニングテーマ「Evidence」でDaisy×Daisyとコラボレートしている。

事務員G(じむいんじー)

ニコニコ動画の「演奏してみた」カテゴリで活躍する演奏者。ピアノをメインにさまざまな楽器を同時に演奏する動画がネット上で大きな反響を呼んだ。2008年よりニコニコ動画でのパフォーマーを集めたイベントを企画し始め、2010年からは台湾・香港を始め海外でのイベント制作も精力的に行う。2012年にはボーカロイド楽曲214曲をつなげて弾いた映像がニコニコ動画「動画アワード」の「演奏してみた」カテゴリでMVDを受賞。2013年6月にはH ZETT M、紅い流星、まらしぃとともに4台のピアノでアニメソングをカバーするアルバム「4D-PIANO ANIME Theater!」に参加する。