コミックナタリー PowerPush - 文豪ストレイドッグス
太宰治、芥川龍之介、中島敦 イケメン文豪バトルアクション!
朝霧カフカ&春河35インタビュー
文豪をイケメンに擬人化した作品をやろう
──朝霧さん、春河さんのおふたりが組むことになった経緯からお伺いできますでしょうか。
朝霧カフカ そもそも僕は某自動車会社に勤めるサラリーマンだったんですが、シナリオ関係の仕事をしたくて、見切り発車で会社を辞めてしまったんです。それでまず最初は無料で見てもらえるものを作ってみようと思って、ニコニコ動画にシナリオ系の動画をいくつかアップしてみたんですね。
──それが人気動画になった「ゆっくり妖夢と本当はこわいクトゥルフ神話」。
朝霧 そうですそうです。それをアップしてしばらくしたときに、角川さんから「ちょっと話をしませんか」というメールをいただいたんです。なんの話をするのかと思っていたら「企画を3つくらい持ってきて下さい」と持ちかけられまして、打ち合わせするうちに「文豪をイケメンに擬人化した作品をやろう」という話になったんです。で、作画担当の春河さんと引き合わせてもらい……。
春河35 同じく私もある日いきなりメールが来まして。実は私、元々マンガは趣味程度にしか描いていなかったので、連載することになってからいろいろと道具を集めましたよ。コミスタやら何やら。
──それでいきなり連載というのもすごいですね。
春河 もう必死です。(脚本に)虎とか書いてあるけど、そんなの描いたことないよーって。
主人公の中島敦は無個性な人間に
──文豪をテーマに据えたのは、どういう理由からなんでしょう。
朝霧 文豪の人たちって、ものすごくキャラが立ってるんですよ。太宰治なんて、借金を返せと言われたら、お金を取りに帰るからと友達を人質に預けて帰り、そのままバックレるような人間だったり。「走れメロス」という感動的なお話を書いた人とは思えないエピソード(笑)。小説はもとより、書いてる本人も面白いというパターンが多いんですよね。あとは、先ほども少し話しましたが擬人化をやろう、と。
──文豪は元々実在する人物なのに、擬人化。
朝霧 まあ「キャラクター化する」という感覚ですかね。
──キャラクターデザインはどう進めていったんでしょうか。
朝霧 僕が4行くらいのキャラ設定を書いて、メールで春河さんに投げるんです。そしたら、(中島敦の設定画を指差し)こんな設定画が上がってくる。
春河 これ、いちばん最初に送ったものですね。
朝霧 もう「すげえ」って担当さんと2人で騒ぎました。
春河 いやいや……。マンガ的な見栄えを重視してと言われたので、元の人物よりは、朝霧さんの設定を重視して描きました。たぶん本物の中島敦をよくわかってる人からしたら「ふざけんな」って怒られると思います。
──まあそこは擬人化ですから。ただ中島敦が主人公というのは意外でした。「山月記」は有名な小説ですが、一般的には太宰や芥川に比べるとそこまで馴染みがないのでは、と。
朝霧 それはですね、主人公はあえて無個性な人間にしようと思ったんです。そのほうが個性的なまわりのキャラクターと絡みやすくなるので。
敦が勇者だとしたら、太宰はそれに対する賢者の役
──中島敦は受動的キャラという位置付けなんですね。そんな彼が武装探偵社に入社するきっかけとなる人物が太宰治です。
朝霧 太宰はですね、元の太宰治のイメージに負けない、ものすごく変な人にしようとしました。自殺マニアで何考えてるか分からなくてめちゃくちゃなんだけど、そういう人がものすごく頭がよかったら面白いのではと。
──太宰の能力「人間失格」は相手の能力を無効化するというものですが、これはどう決めていったんでしょうか。
朝霧 能力無効化能力というのは、最強キャラによくあるタイプですよね。これはもう「人間失格」という能力を考えたときに、パッと頭に浮かびました。何もかもダメにしてしまう、という。
春河 元の太宰って、周りの人もダメにしていっちゃうイメージですよね。
朝霧 周りもダメになるし、本人もダメになるし。太宰を読んでるとどんどん生きていく理由がなくなっていくんですよね。すべて吸い取ってしまうというか。なのでアンチバトル能力という意味で、能力無効化能力にしました。
──主人公を補佐する最強の能力ですね。
朝霧 役割で言うと、敦が勇者だとしたら、太宰はそれに対する賢者の役なんです。アーサー王に対するマーリン役のような。
作品紹介
孤児院を追われた青年・中島敦は、とある自殺志願の男を助ける。男の名は太宰治……。太宰は国木田、与謝野らと共に異能力集団「武装探偵社」に所属し、「人食い虎事件」を調査していて……!? 新感覚横浜文豪異能力アクション!
朝霧カフカ(あさぎりかふか)
シナリオライター。テーブルトークRPGのリプレイ風動画をWEBで発表したことで人気を博し、「文豪ストレイドッグス」で商業デビュー。
春河35(はるかわさんご)
ヤングエース2013年1月号(角川書店)にてスタートした「文豪ストレイドッグス」の作画担当としてマンガ家デビュー。イラストレーターとしても活動しており、代表作に「ソラの星」(アスキー・メディアワークス)など。