「誰かが傷つくんやろうな」って思いながらやりたくない

──最近は偏見の強いネタ、意地悪なネタはやりにくい世の中だと思うのですが、そこはどう対応していますか？

後藤　コントは架空のキャラなので漫才よりはやりやすいとは思いますが、それでも10年前はできたけど今はちょっとやめといたほうがいいかなと考えることは多いですね。

福徳　今回の単独のときも、スタッフ陣から「今のご時世だし、やめときましょう」っていうネタが何個かありました。

こやま　表現が窮屈になっている感じはありますよね。

福徳　やっぱり気にします？

こやま　めちゃめちゃ気にします。昔出した曲でも気にすることあるし。あのときはこういうふうに言ってたけど、今掘り返されたら叩かれるんちゃうかな……とか。

福徳　メンバー内で「それはやめておこう」「いや、行こうぜ」みたいな議論ってあるんですか？

もりもと　めっちゃあります。

こやま　逆に僕が日和ってて……。

福徳　えー、そうなんや。

こやま　「体の相性」っていう言葉を歌詞に入れようか迷っていて。「小さい子も聴いてくれるようになったしなー」みたいな話をしていたら、メンバーが「いや、昔のこやまさんやったら入れてたで」と。

福徳　それは刺激的な一言！

こやま　「は？ ほな入れるし」って逆ギレみたいな感じになって、入れました（笑）。

後藤・福徳　あははははは！（笑）

後藤　でもそこは鈍感よりも敏感になったうえで、みんなで話し合うほうがいいですもんね。

こやま　はい。いろいろ考えたうえで尖った発言もしてるっていうことはわかってほしいです（笑）。

福徳　そうそう。ちゃんと検討してから発信していることは知っておいてほしい！

こやま　人を笑わせるために言っているのにうまく伝わらなくて傷つけてしまうことってあるじゃないですか。そこに葛藤することってありますか？

後藤　うーん。でも、傷つく人がいるっていうことは前よりもウケにくくなってるっていうことだから、やらない理由にはなりますね。「これ言ったら誰かが傷つくんやろうな」って思いながらはやりたくない。

こやま　ああー、わかります。そう思った時点で自分の手が止まるんですよね。さっきの「一人称が『は』の人見たことない」っていう曲のアイデアも、歯医者ってなんであんなに何回も通わせるんやろ、そんなに歯が好きなんやったら歯医者の先生、自分の一人称「は」にしたらええのに……みたいなことを歌詞にしようと思ったんですよ。それをちょっとTwitterで書いたら、「歯医者さんも一生懸命診てくれてるんですよ！」っていうリプライが来まして。

後藤　うわ、そうなんや（笑）。

こやま　でも、確かに歯医者さんからしたらこの歌ムカつくかもしれないなと思ってボツにしたんです。ただ、その一言がこの世から名曲を消してしまったのかもしれない……。

後藤　歌詞に歯医者側の目線も入れたら？

こやま　もちろん曲にするときはそうやって中和させるはずなんですけど、もうパって思いついたときに患者側の意見だけ見せたら「歯医者さんの気持ちも考えてください！」って叱られました。

後藤・福徳　あはははは（笑）。

こやま　僕ら大阪芸術大学出身で、ミルクボーイさんが先輩なんですよ。面識はないんですけど。YouTubeに過去のネタがけっこうアップされていて、めちゃめちゃ尖ったネタなのでいつか叩かれるんちゃうかって勝手に心配しながら見ているんです。

もりもと　けっこう際どいことを言ってますよね。

後藤　よう考えたらミルクボーイも偏見ですもんね。

こやま　「M-1グランプリ」では中和したネタに仕上げていましたけど、劇場で見るとちゃんと尖ってる。

もりもと　めちゃくちゃ面白いですけどね、尖ってるやつ。

しばた　うん、めっちゃ面白い。

108本ネタライブで心からの感謝が出た

──ジャルジャルのお二人には昨年の12月31日に行った108本ネタライブ「大晦日に108回もジャルってんじゃねえよ」のご感想もぜひお聞きしたいです。

こやま　すごいライブですね。どこでやったんですか？

後藤　大阪です。108本やり切るまで8時間45分かかりました。

こやま　8時間!?（笑）

もりもと　うわー。

しばた　すごい！

後藤　予想はしていたんですけど、途中、60本か70本超えたくらいのあたりでウケなくなるゾーンがありました。僕らもですけど、お客さんも相当しんどかったんだと思います（笑）。演出も何もなしに、淡々とネタやってタイトル出して、を繰り返すだけなので。でも80番目くらいになったらゴールが見えてきて、みんな「がんばれ！」っていうふうに盛り上がってくれました。その一体感は新しい発見でしたね。

こやま　年越しもしたんですか？

後藤　いや、してないんです。

こやま　年越ししてない!? そんだけやって？

後藤　午前10時8分からやって、19時ぐらいに終わった。

こやま　年越さないんや……。

後藤　年越さないです。

しばた　108本やるだけですか（笑）。

後藤　やるだけ（笑）。

──ご本人たち的におかしなことになる時間はありませんでしたか？

福徳　普段はあんまりコントで失敗はしないほうなんですけど、このときは大きなミスをしてしまいました。「滑舌悪い」っていうネタなのに、滑舌がよかった。

こやま・しばた・もりもと　あははははは！（笑）

後藤　途中で気付いたのか、滑舌の悪さをゆっくりフェードインしてました。あと「全然しゃべらない司会者」と「めっちゃしゃべる司会者」のネタがあって、「しゃべらない」のほうでどっちかわからなくなったんでしょうね、ちょうど中間くらいでしゃべってました（笑）。で、イチかバチかでしゃべらんほうにして、奇跡的に当たっていたっていう。

福徳　コントのタイトルがネタの後に出るから、外してたらどうしよーってドキドキでした。

──終わったあとはどんな心境になりましたか？

福徳　「よう観に来てくれたな」っていう、今までにないほどのお客さんへの感謝ですね。16年やってきたけど、ほんまもんの「ありがとうございました！」が出ました。

──心からの感謝が出た（笑）。

後藤　僕は毎年やってもいいかなっていう気持ちになりました。スタッフさんには「もうやめといたら？」って言われましたけど（笑）。

福徳　あと、思っていたより体力残ってましたね。普通の2時間の単独ライブだったら体力温存のために最初の30分はMAXで行かないようにしていた部分もあったんですけど、今後それは二度としないと思います。常に100でいくやろなと。

──おお！

こやま　ペース配分大事ですよね。僕らは最初からぶっ飛ばしてしまうタイプで。後半疲れてしまってうわーってなります。

福徳　噂で聞いたのは、上沼恵美子さんは「快傑えみちゃんねる」のオープニング、めっちゃ声小っちゃいんですって。お客さんに「え、なんて？」って集中して話を聞いてもらうために。それで徐々に声をわーっと大きくしていって、最後いつも大爆笑で終わるという。

もりもと　へー！

福徳　そういうテクニックもあるみたいです。

こやま　めっちゃ迷います。それで言うと、バンドだとカップリング曲から始める方とかもいるんですよ。で、だんだん人気曲をやっていくっていう。でも僕ら1曲目から有名な曲やるから……。

福徳　あはははは（笑）。やっぱ掴みも大事やしなー。

こやま　掴みたい。そこがまだ大人になれていないところです（笑）。

──さて、そろそろ終わりの時間ですが、言い残したことはありませんか？

こやま　僕らのライブも今度ぜひ来てください。

後藤　ぜひぜひ！ 行ってみたいです。MCがめっちゃ楽しみ（笑）。

しばた　これはずっと言っているんですけど、ジャルジャルさんと対バンしたいです！

福徳　面白そう。お願いします！

──お二組のコラボが実現することを期待しています。ありがとうございました！