バナナマン、ノリと遊びが詰まった最新作「bananaman live O」盟友オークラによる解説も (2/3)

バナナマンの王道

コント「On Fleek」のワンシーン。

コント「On Fleek」のワンシーン。

On Fleek

同窓会に着ていく服を悩む日村。「少しでもダサいと思われたくない」「安定した今の生活を見せつけたい」と、スーツケースにさまざまな衣装を詰めて設楽に相談を持ちかける。

設楽 実際に僕が同窓会に行くことになって、「何着ていく?」みたいな会話から生まれたネタですね。あとは奥さんが同窓会に行った話も聞いて、そんなのも盛り込みながら。コントのパターンとしては王道の感じ。こっちがポーンと投げて、日村さんが動いていくネタは好きでよく書くんですよ。

日村 ここでも僕はいっぱい脱ぐので、今回ほとんど裸状態です(笑)。

設楽 今回は全体的にそうなんですけど、普段からやっているような遊びの要素を取り入れていて、素に近い掛け合いが多いです。


オークラ解説

この年次だから生まれる人間の上下関係という全体を通して伝えたい世界観もありつつ、このコントもバナナマンだからできるやり取りを見せています。日村さんが持ってくるのは100%変な服というわけではないから、思い切りツッコむのではなく2人で話し合ったり、乗っかったりしながら、どんどん変な方向に進んでいって、徐々にこの2人の関係性が見えてくるのはバナナマンぽいなと思います。「遊んでるのかな?」と思う場面もあるくらい、バナナマンの普段のノリが出ているのも心地いいです。稽古中、本人たちも練習しながらすごく笑っていたのが印象的でした。

テレビの最前線にいながらライブでは2人のノリを大事に

コント「Off Guard」のワンシーン。

コント「Off Guard」のワンシーン。

Off Guard

人から頼まれた日村への誕生日サプライズを準備していたところ、本人に見つかってしまった設楽。逆ギレしながら予定通りサプライズを敢行し、驚いたリアクションをスマホで動画に収めようと日村に細かく演技指導する。

設楽 これはけっこうフリーな部分があるんですよ。その場で思いついたことを言っている場面もあるんじゃないかな。

日村 かなり遊びながら作ったよね。本番の大きな流れはもちろん決まっていますけど、間に若干のフリーな部分があって、「何笑ってんだよ今?」とかも言っちゃうようなノリですね。

──サプライズの練習を何度もやり直す場面がありますが、その回数は決まっていたんですか?

設楽 ざっとは決まっているんですけど、その場その場でやりながら、本番のテンションで増えてると思います(笑)。

日村 そのときのノリだよね。

設楽 そうやって遊んでいる雰囲気がもうバナナマンの世界観になってるっていうのはけっこういろんな人に言ってもらいました。自分たちの色が出ているコントかなと思います。

──客席からだとわからなかったんですが、DVDだと本当にスマホで撮影されていることがわかってより臨場感を味わえました。


オークラ解説

このコントもノリ重視のようでいて、実は構成としては意外にしっかりできています。サプライズを受ける側の人間が驚く練習をさせられるというコメディの定石はしっかりと踏みつつ、その土台を作った上で遊んでいる。しかも、1つ前のコントの仲良くキャッキャやっていたバナナマンから打って変わって、ケンカ口調でやり取りしているところも面白いです。もともとそんなに長くはなかったんですが、結局20分以上やっていました(笑)。練習しながらどんどん長くなって、一時期30分以上やっていたのを削ってこの尺になっています。バナナマンはテレビの最前線で活躍している芸人でありながら、ライブで披露するネタは全然テレビ仕様じゃない。自分たちのノリをちゃんとお客さんに見てもらう方向に走っているなと感じます。

“赤えんぴつのおーちゃん”だから武道館も緊張しなかった

コント「Oh-chan&Hi-ton」のワンシーン。

コント「Oh-chan&Hi-ton」のワンシーン。

Oh-chan&Hi-ton

設楽演じるボーカルの“おーちゃん”と、日村演じるギターとコーラスの“ひーとん”からなるユニット・赤えんぴつによるライブのワンシーンを切り取ったコント。「好きだ」「夢」の2曲を披露する。

設楽 実は2年ほど前から武道館ライブをやることが決まっていて、それに向けて前回から昔の曲をやっていたんですよ。今回コントの中で「武道館やります」って告知をしたんですけど、最初お客さんが困惑しちゃって。

──コントの中の話なのか、本当なのか。

日村 わかんないですよね(笑)。最後、おーちゃんが「本当です」って言って拍手が来る感じでした。

設楽 赤えんぴつのコントは何年もやってきていますけど、初めて赤えんぴつの歴史が動いた回ですよね。今回披露している「夢」という曲は、「赤えんぴつが武道館に向けて作った」という意味も乗っかっています。

──武道館ライブを経て、来年の「bananaman Live」での赤えんぴつがどうなっているのかも楽しみです。コントとはいえ、音楽ライブの聖地とも言える武道館で歌うのは緊張しませんでしたか?

設楽 現実の僕らとしては、赤えんぴつのライブをやるのは初めてでしたし、その初ライブが武道館っていうとんでもない場所で(笑)。でも、“赤えんぴつのおーちゃん”としてだったからあまり緊張しなかったんですよ。「おーちゃんがやってることだから俺は関係ない」っていう感覚になって、全然恥ずかしくなかった(笑)。「おーちゃんは武道館に立ったらこういうこと言うよね」みたいな。

──お客さんはライブの来場者でもあり、コントの世界の観客役でもあったわけですよね。

日村 そうそうそう。お客さんもコントの中にいるんですよね。

設楽 お客さんが来てくれてあのライブが完成していると思うと不思議な感覚だよね。

──1ステージで約20曲を歌っていましたが、体力づくりなど訓練はされたんですか?

設楽 どうすればいいかわからなくて、ボイトレとかギター教室に行ったほうがいいのかなとも思ったんですけど、結局一切やらなかったんですよ。

──ポテンシャルのみで。

設楽 ポテンシャルのみです。稽古もどれぐらいやればいいかわからないから、単独の稽古みたいなことを毎日やってました(笑)。


オークラ解説

このときにはもう武道館ライブは決まっていたので、本人たちの間でも歌をちゃんと作ろうという気持ちがあったと思います。「夢」という曲を披露していますが、見ているほうからするとバナナマンは“夢を叶えた側の人間”ですよね。本人ははっきりとは言いませんけど、この歌を聞くと、設楽さんは夢を叶えられていない人もいるということや、自分たちがこの先も芸能界で生きていく中で夢ってなんだろうとか、いろいろ考えているんだろうなという気がします。「赤えんぴつin武道館」は、赤えんぴつというフォークデュオが武道館まで行き着いた、というコントで、来場したお客さんも言わばエキストラ。こういう前例のない、オリジナリティにあふれたエンタメが増えればいいなと思います。