ナタリー PowerPush - 蝶々P

殿堂入りボカロP新作完成 ピアノで描く“現実の裏側”

2008年6月に初音ミクオリジナル曲「シューティング・スター」を初投稿した蝶々P。美しく荒れ狂うピアノの旋律を生かしたロックナンバーは多くのリスナーの支持を集め、「え?あぁ、そう。」「心拍数♯0822」のミリオン2曲を筆頭に、20曲を超える殿堂入り楽曲を持つ人気ボカロPとなった。そんな蝶々Pが8月7日に待望のメジャー2ndアルバムとなる「Fictional World」をリリース。ナタリー初となるインタビューではニューアルバムについてはもちろん、楽曲制作に関する思いを存分に語ってもらった。

取材・文 / 田口こくまろ

 
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ピアノ教室からバンド結成へ

──ではまず自己紹介をお願いします。

はじめまして、蝶々Pと申します。ボーカロイドを使用した楽曲を作ったりしてます。イチゴ牛乳とアップルパイとチーズケーキが好きです。よろしくお願いします!

──papiyonというアーティスト名もありますが、蝶々Pとの使い分けは?

ボーカロイド関連の活動は「蝶々P」、それ以外は「papiyon」ということにしていますが、あまり明確な線引きはしていません。

──音楽との出会いを教えてください。

小さい頃からピアノを習って……というか半ば強制的に教室に通わされていました。練習は嫌いでしたがピアノ自体はけっこう好きだったので、なんだかんだで高校受験前までは続けてました。それから高校に行って知り合った友人がベースをやってて、そのまた友人が違う学校でドラムやっててということがあったので、「じゃあ俺ギターやるからもう1人くらい誰か誘ってバンド組もう!」みたいな話になったんです。このとき組んだバンドがきっかけで、どんどん音楽にのめり込んでいきました。

──曲はオリジナルだったんですか?

はい。今思えば曲にすらなってなかったですけど最初からオリジナル曲やってました。当時は何もわかってなくて、よくベーシストやドラマーに「こんなのできねえよ」って怒られてましたね。また、バンド活動と並行してインストの楽曲制作もしてました。もうとにかく「曲を書く」っていうのが楽しくてしょうがなかったんですね。「muzie」っていう音楽投稿サイトを知ってからは、そこにひたすら曲を作っては投稿してましたね。

「ラブアトミック・トランスファー」はもともとインスト曲だった

──で、2008年6月に初のミク曲「シューティング・スター」を投稿されるんですけど、きっかけを教えてください。

インスト曲をやっているうちにだんだん歌が入ったものをやりたくなってきたんです。まあバンドでやれって話なんですけど、ちょうどその頃からいろんな事情であまりバンド活動ができなくなっていて。ちょうど初音ミクというのが流行りはじめた時期なので、面白そうだと思って購入したのがきっかけですね。

──初めて作ってみた感想、苦労などを教えてください。

やっぱり最初はなかなか思った通りに歌わせることができなくて苦労しましたよ。なんかすごいロボっぽいんです。もうなんと言うか、国語の授業で音読させられたときの僕より棒読みです。自分なりの調声法というかノウハウを構築するまでは苦労した覚えがあります。

──投稿して反応があったときはどう思いましたか?

リアルタイムでコメントをもらえるのはやっぱりうれしかったですね。自分では気付かない部分のアドバイスをもらえたりもしましたし。まあ、コメントを読んで心が折れそうになるときもありましたけどね(笑)。

──2009年12月の「ラブアトミック・トランスファー」で初の殿堂入りを果たします。この曲は普段より打ち込みが多めのダンサブルな曲ですが、何か変化があったのですか?

あれはもともとインストの曲だったんですよ。曲のイントロ部分が本来、サビというか一番盛り上がる部分になる予定だったんです。でもこれをイントロに使ってこのまま歌をつなげたらすごいカッコいいかもしれないと思って歌ものに作りなおしたんです。少しもったいない気もしましたけどね。イントロだけで1分くらいあるのも途中までインスト曲だった名残です。あと、このときたまたまブレイクビーツ系の音楽をよく聴いてて、跳ねる感じのリズムにはまっていたのも理由の1つだと思います。

あんなに真剣に歌詞と向き合うことは後にも先にもない

──2010年3月「え?あぁ、そう。」、8月の「心拍数♯0822」と立て続けにミリオンを獲得します。ここまで支持された理由を自己分析していただけますか?

んー、どうなんですかね。「え?あぁ、そう。」に関しては自分の中でも異色というか、完全に勢いだけで作った曲なので……。投稿した当初はあまり伸びていませんでしたが、おそらく「歌ってみた」が発端で、ある日突然再生数がすさまじいことになっていて自分でも驚きました。ちなみにこの曲を作ったときは生涯で一番真面目な顔をしてたと思います。いろんな意味で後にも先にも、あれほど真剣に歌詞と向き合うことはないでしょうね。「心拍数♯0822」は曲も歌詞もシンプルでわかりやすいところがよかったのかなと思います。いずれにしろたくさんの方々に聴いていただけたっていうのがとにかくうれしいです。

──その後、11月にはアルバム「pianythm」、そして翌年「Glorious World」をリリースします。動画共有サイトで発表するのとアルバムとしてまとめるのでは何か違うところはありますか?

「アルバムとして1つの作品を仕上げる」というのはやっぱり曲に対する考え方も違ってきます。楽曲の持つ世界観をアルバムの中でいかに共有させるかというのを考えるようにしています。1曲ずつではなく、アルバムをすべて通して聴いたときの感覚を大事にしています。

ニューアルバム「Fictional World」 / 2013年8月7日発売 / 2000円 / EXIT TUNES / QWCE-00284
「Fictional World」ジャケット
収録曲
  1. Fictional World / 蝶々P feat. 初音ミク
  2. 幻奏サティスファクション / 蝶々P feat. 初音ミク
  3. Black Board / 蝶々P feat. 初音ミク
  4. クランベリー / 蝶々P feat. GUMI
  5. ウソツキツツキ / 蝶々P feat. GUMI
  6. Star Bright / 蝶々P feat. MAYU
  7. 2つの恋,1つの歌 / 蝶々P feat. 初音ミク
  8. White Prism / 蝶々P feat. 初音ミク
  9. 月見夜ラビット / 蝶々P feat. 初音ミク
  10. 星屑メソッド / 蝶々P feat. 初音ミク
  11. そういうこと。 / 蝶々P feat. 初音ミク
  12. it is / 蝶々P feat. MAYU
  13. 背中合わせの僕と君 / 蝶々P feat. 初音ミク
  14. 群青まで。 / 蝶々P feat. 初音ミク
  15. Black Board(Scop Arrange) / すこっぷ×蝶々P feat. 初音ミク
  16. 心拍数♯0822(Jimmythumb Arrange) / ジミーサムP×蝶々P feat. 初音ミク
  17. ラブアトミック・トランスファー(z'5 Arrange) / Neru×蝶々P feat. 鏡音リン、鏡音レン
蝶々P(ちょうちょうぴー)
蝶々P

2008年から動画共有サイトにボーカロイドを使ったオリジナル曲を投稿している、美しいピアノロックを得意とするボカロP。2009年に「ラブアトミック・トランスファー」が再生数10万以上となり初めてVOCALOID殿堂入りを果たす。2010年発表の「え?あぁ、そう。」「心拍数♯0822」の2曲はミリオンを達成し代表曲に。2011年に「Glorious World」、2013年に「Fictional World」という2枚のアルバムをEXIT TUNESからリリースしている。