手越祐也|主観と俯瞰で未来を見据える実は冷静な猪突猛進男のビジョン

ソロアーティスト手越祐也が、いよいよ動き始めた。7月7日に配信リリースされた第1弾楽曲「シナモン」を皮切りに、6カ月連続で配信シングルを発表。さらに12月22日には1stソロアルバム(タイトル未定)の発売も予定されている。そして9月には東名阪のライブハウスを回る初のソロツアー「手越祐也 LIVE TOUR 2021『ARE YOU READY?』」が行われる。

NEWS脱退、ジャニーズ事務所退所からおよそ1年間、YouTubeで途切れることなく近況を発信しながら、着々とソロアーティストとしての下準備を進めていた手越。豪胆な性格と過去の逸話的エピソードからは想像もつかないほど、彼は客観的な視点を持って音楽活動に取り組んでいる。音楽ナタリーでは初のツアー開催を控える手越にインタビュー。独立からの激動の1年を改めておさらいしつつ、アーティスト活動への真摯な思いを聞いた。

取材・文 / 臼杵成晃撮影 / 須田卓馬

ライブ配信情報

手越祐也 LIVE TOUR 2021「ARE YOU READY?」Zepp Haneda(TOKYO)公演 生配信

2021年9月22日(水)OPEN 18:00 / START 19:00

いつもとは違う1年間

──手越さんが独立してからまだ1年ちょっとしか経ってないんですね。なにせ展開が濃いので、なんとなくもう2、3年経っているような気持ちでいました。実際濃密な1年でしたか?

独立からの半年間、去年の年末にかけては、同じように「あれ? まだ半年しか経ってないんだ?」という気持ちでした。歳をとるにつれ1年が早く感じるとよく言うけど、今までで一番遅い半年間でしたね。逆に2021年の上半期はめっちゃ速かったです。前までは「あれっ、もう『MステSUPER LIVE』か」「もうカウントダウンライブか」みたいな感じで速く感じていたんですけど、確かにあの感覚は遠い昔のことのように感じますね。そのくらいいつもとは違う1年間だった。

手越祐也

──15歳から芸能活動をしていて、年間の恒例行事のようなものが多かった手越さんとしては、これまで重ねてきた生活のペースが激変したことで時間の感覚はだいぶ変わってしまいそうですね。

そうなんです。今までとまったく違う流れだったので。独立して半年くらいは特に……やっぱりネット記事には「元ジャニーズの」「元NEWSの」と書かれるんですよ。でも、もういいんじゃない?という気持ちになって。僕は今でもジャニーズをリスペクトしているし、NEWSもめっちゃ大好きだけど、夢を追うために離れたんです。「元」を付けるのはどちらにとっても失礼なんじゃないかなって。でも、準備を整えて今こうしてようやくその一歩を踏み出せたくらいなので、辞めて半年程度なら仕方ないかもしれませんね。

外の世界には何があるんだろう

──独立したことで、今までとは違うルールや考え方に触れる機会も増えたのではないでしょうか。特に未知の領域だったYouTubeを始めたことで新たな出会いや気付きも多かったのではないかと思いますが、そういった新しい刺激は音楽をやるうえでも影響がありますか?

手越祐也

人からの影響という意味では、独立する前のほうが大きいですね。事務所にいる頃から俺は外の世界とばかりコミュニケーションを取っていたので。20歳を超えたくらいから、外の世界を見なくちゃいけないと思っていろんな人に会ってきたんです。尊敬する方々に話を聞くと、皆さん自分で自分をコントロールして、自分の判断で「これをやりたい」と決めているんです。ホールツアーがやりたかったらやる、曲をリリースしたかったら出す。それを考えたときに、自分は絶対にこっちに行かなくちゃいけないと思った。

──なるほど。

俺、一番嫌いな言葉が「確認します」なんですよ(笑)。「確認します」から返答がなく、実行するまで1年も2年もかかる。アーティストやアイドルにとっての1年2年ってめちゃくちゃ大きいわけですよ。スポーツ選手も同じですけど、体も顔も1年で刻一刻と変わっていく。絶対に「全盛期」や「賞味期限」はあると思っていて。俺は自分のことも俯瞰でシビアに見ているんです。自分で自分をコントロールしている諸先輩方の立ち回りを見たときに、すごくそこに影響されて。俺も自由に、別に儲けがなくても面白いメンツが集まっているフェスには出たいし、逆にお金をすげえ積まれても興味ないところには出たくない。やってて楽しい、やり甲斐がある、刺激を受ける……この先の人生は自分でそれをチョイスしていきたかった。損得勘定や名声じゃなくてね。それを考えたとき、その先にあったのは「独立」という道だったんですね。

──その話を聞くと独立についてはすごく腑に落ちます。

ジャニーズの世界観も大好きなんです。それは今も。でも男は冒険者だから「外の世界には何があるんだろう」という好奇心はいつだって持ってる。俺は外の世界が見たくなってしまったんです。

ボーカリスト手越祐也の武器は

──独立後にどういう音楽をやりたいというビジョンは明確にあったんですか?

僕が今までどんな音楽をやってきたかというと……もちろん踊りもやるし、ロックもやるし、ジャズもやる。エロい曲もいっぱいある。オールジャンルで、アルバムによって曲によって表情を変える。J-POPでもロックでもブラックミュージックでもレゲエでもない。完全にノンジャンルな音楽をやっている人は少ないなと。

──そうなんですよね。過去のソロ曲だけを挙げても見事にバラバラで、「この中からどの方向で行くのかな」と思っていたのですが……。

変わらず全部やる。今まで培ってきたことの延長を、さらにクオリティを上げて見せていく方向が一番いいんじゃないかと考えました。第1弾の「シナモン」のような純粋な純愛の曲も歌うし、次の「ARE U READY」はロックだし、この先もまったく違うジャンルの曲を用意してるんです。いろんな素晴らしいボーカリストがいる中で、自分が人より長けているなと思うのは、曲によって声色をガラッと変えられるところ。それは自分の武器だと思っているので、曲調も含めて追求していこうと思っています。

──新たな活動の第1歩として、数あるバリエーションから優しいラブソングの「シナモン」を選んだのはなぜなんですか?

みんなの意見を聞きつつ、いろんなタイプの曲を考えましたけど……いい意味で絶対に期待は裏切っていきたい。今まで一番多くやってきたダンスミュージックか、あるいはロックで来るというのは容易に想像できたと思うから、そこは裏切りたいなと。「シナモン」みたいな曲は、僕にとっては一番歌うのが難しいんですよ。もっとわかりやすくテクニカルで、キーが高くてワーッと張り上げる曲のほうが「どうだ俺の歌!」とアピールできるんで。引き算で考えていくような「シナモン」のほうが難しい。でも、あえてテクニカルな要素は排除して、ただただまっすぐ、高校生のようにピュアな純愛を歌う楽曲を一発目に持ってくるとはファンの人も思わないだろうし、それこそメディアの印象通りの「チャラチャラした兄ちゃんだからパーティっぽい曲歌うんでしょ」という世間のイメージとは真反対ですよね。

──確かに週刊誌などのイメージから想像する「手越祐也の曲」とは正反対でしょうね。

ジャニーズだから聴いてくれていたファンもたくさんいるけど、たぶん「ジャニーズだから聴いてなかった人」も多いと思うんです。フェスだとかに出ることで初めて僕の歌を聴いてくださる方に届くことも想像したとき、「えっ? 手越ってこういう歌を歌うの?」というサプライズには「シナモン」みたいな楽曲が一番なんじゃないかなって。

──いい1歩を踏み出せた実感はありますか?

そうですね。まさに狙い通りというか、今まで僕の曲を聴いてこなかった方からのコメントもたくさんいただいているので、「シナモン」から始めてよかったなと思っています。


2021年9月1日更新