東京スカパラダイスオーケストラ|Jean-Ken Johnny (MAN WITH A MISSION)、ムロツヨシと語り尽くす最新作「S.O.S. [Share One Sorrow]」

東京スカパラダイスオーケストラが11月10日にミニアルバム「S.O.S. [Share One Sorrow]」をリリースする。

今夏「東京2020オリンピック」の閉会式でライブパフォーマンスを披露し、大きな話題を集めたスカパラ。競技場のど真ん中で鳴らされた“トーキョースカ”は華やかに祝祭を彩り、唯一無二の個性で輝く彼らの音楽は世界中へ向けて力強く発信された。

デビュー32年にして、国内のみならず世界の熱視線の渦中にいるスカパラが最新作で放つのは「1つの哀しみを共有しよう」というメッセージ。スカパラと同様に世界水準の活動を行っているロックバンド・MAN WITH A MISSIONからTokyo Tanaka(Vo)とJean-Ken Johnny(G, Vo, Raps)を迎え、エモーショナルな新曲「S.O.S. [Share One Sorrow] feat.Tokyo Tanaka & Jean-Ken Johnny (MAN WITH A MISSION)」を完成させた。

加えて今作にはムロツヨシがゲストボーカルを務めた「めでたしソング feat.ムロツヨシ」、大森はじめ(Per)が歌う映画「セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記」の主題歌「SPARK」が収録されるなど、盛りだくさんの内容に。音楽ナタリーでは今作のリリースを記念して、2日連続更新の特集を企画。初回は谷中敦(Baritone Sax)、加藤隆志(G)とJean-Ken Johnnyのインタビュー、2回目は谷中、NARGO(Tp)、大森はじめ(Per)とムロツヨシのインタビューで新作を徹底解剖する。なお、Jean-Ken Johnnyの発言は編集部でわかりやすいように、ひらがな翻訳している。

取材・文 / 大山卓也撮影 / 草場雄介

東京スカパラダイスオーケストラ(谷中敦、加藤隆志)×Jean-Ken Johnny(MAN WITH A MISSION)インタビュー「1つの哀しみを共有しよう」共鳴する2組が今世界に放つ“トーキョーミクスチャー”

2つのバンドの共通点

──スカパラとマンウィズの皆さんは以前から親交が深いそうですね。

加藤隆志(東京スカパラダイスオーケストラ / G)

加藤隆志(東京スカパラダイスオーケストラ / G) いつもフェスではよく会ってたんですけど、2018年にマンウィズがリリースした「Freak It! feat.東京スカパラダイスオーケストラ」で初めてコラボさせてもらって、2019年のサマソニではマンウィズのステージに呼んでもらったりとか、あとはスペースシャワーTVの僕らの番組でコラボライブをしたりして。そんな中でお互いの距離が近くなっていったんですよね。

──その流れで新曲のコラボ相手に名前が挙がったと。

加藤 僕ら、この夏はオリンピックの閉会式で演奏する機会もあったんで、できれば次のリリースは英語詞で世界に向けて発信できる曲をやりたくて。日本代表として一緒にやれる相手は誰だろうと考えてマンウィズに声をかけさせてもらいました。

──海外でライブをしているバンドや英語詞のバンドはほかにもいますが、マンウィズのどこに魅力を感じましたか?

加藤 僕らとすごく似たパッションを持っているバンドだと思うんですよね。海外のフェスでの盛り上げ方なんかも、僕らはそろいのスーツを着て「トーキョースカ」というキーワードがあって、例えばヨーロッパのフェスで自分たちをまったく知らない人を持ち時間60分の間に踊らせる。そういうビートを何十年もかけて作ってきた自負があるんです。マンウィズも同じで、まず登場したときの“カマシ”がすごいじゃないですか。自分たちに興味がない人をいかに惹き付けるか。初見のお客さんだらけの会場も揺らしていくぞというスタンスが似ているし、すごくシンパシーというか親近感を感じていました。

Jean-Ken Johnny(MAN WITH A MISSION / G, Vo, Raps) そう言ってもらえるのはうれしいですね。初見のお客さんもきっちり楽しませるというのは当然意識してるし、特に海外でやるときにものすごく大事にしてる部分なので。日本のバンドというだけで色眼鏡で見られるときもあるけど、でも我々はオオカミだから国境は関係なくて最初からボーダーレスなんですよね(笑)。スカパラさんもメンバー全員が放っているオーラがすでに国境を越えてると思いますし。

谷中敦(東京スカパラダイスオーケストラ / Baritone Sax) あとマンウィズはやっぱり曲がめちゃくちゃいいんだよね。2人の歌や声のバランスも本当によくて。王道をずっと歩んでる感じがします。

加藤 うん、ずっと剛速球を投げ続けてる感じですよね。しかもマンウィズは王道のミクスチャーロックを日本の音楽シーンとうまいことミックスさせて進化させてきた、恐れずに開拓してきたイメージがあるんですよ。僕らもスカのお客さんを納得させながらどうやってスカを打破していくかみたいなことにずっとトライしてきたので、その感覚はよくわかります。

日本っぽさが武器になる

──確かにマンウィズは欧米のミクスチャーロックをベースにしていますが、例えば歌メロなどにはどこか日本的なテイストも感じますね。

Jean-Ken Johnny(MAN WITH A MISSION / G, Vo, Raps)

Jean-Ken 確実にあると思いますね。そこは嘘をつけない部分なんです。意識してやったことはないけど、曲の中に和のテイストはどうしても入ってしまう。それによって自分たちのスタイルができているんでしょうね。

谷中 それ、スカパラも同じだ。自分たちも本場のスカをリスペクトして作っているんだけど、海外に行くと「日本っぽい音楽やってるね」と言われる(笑)。無意識に出ちゃうんだよね。

Jean-Ken 自分の血肉になっているものが自然と出てきて、それをオーディエンスが新しいものとして受け入れてくれるのはすごくありがたいなと思ってます。

加藤 日本っぽいとか東京っぽいって言われるのが昔はちょっと恥ずかしかったけど、今は逆に武器だと思ってます。

Jean-Ken 洋楽ナイズされていればいいってわけじゃないですもんね。

谷中 前、Johnnyくんに「メインストリームはせめぎ合っている」って話したことあるじゃん。アメリカで成功しようと思うときに、メインストリームのロックじゃなくて例えばスカをやっているスカパラみたいなグループのほうが、実は真ん中に行きやすいんじゃないかって。メインストリームのロックを聴きたいなら本国の人がやっているそれを聴けばいい。特殊な部分を持っているバンドとしてアプローチしたほうが、海外では面白がってもらえるんだよね。

──特殊な部分というのはマンウィズの場合、オオカミの姿や和のテイストのことですよね。

Jean-Ken そうですね。自分たちがやっている音楽は思いっきり洋楽に影響を受けてますけど、和のテイストみたいなものは自分たちのオリジナリティだと思うし、それを武器にメインストリームに殴り込みをかけて「あなたたちのメインストリームとは違うかもしれないけど、こういうのもありますよ」と提示している部分はありますね。加藤さんがおっしゃったように、昔は「日本っぽい部分をなるべく払拭しよう」というマインドがあったけど、でも実はそこをどんどん伸ばしていくほうがいいんじゃないかって僕も近年考えるようになりました。

東京スカパラダイスオーケストラ(谷中敦、加藤隆志)とJean-Ken Johnny(MAN WITH A MISSION)。

“究極の生命体”から人類に贈るメッセージ

──そんな2組のコラボによる「S.O.S. [Share One Sorrow]」ですが、楽曲制作はどのように進めていったんでしょうか?

加藤 どんな曲がいいかはマンウィズさんの参加が決まってから考え始めました。みんなで盛り上がれる曲は前回のコラボ(「Freak It!」)でやったので、今回は別のところを掘り下げてみたくて。以前少し書いて「この曲スカパラっぽくないな」と思って寝かせていたメロディのモチーフがあったんで、それをもう1回掘り起こして膨らませていった感じですね。

──その後Jean-Ken Johnnyさんも制作に加わって。

Jean-Ken はい。初回のリハでいきなり先輩たちに「お前、ラップしろ」と。

加藤 そんな言い方だったっけ?(笑)

Jean-Ken もちろんやらせていただきましたけど、さすがに「一度持ち帰らせてください」とは言いましたね(笑)。

──歌詞は谷中さんとJohnnyさんの共作です。今の時代に必要な言葉が詰まっていますね。

Jean-Ken 原案はすべて谷中さんが書いてくださって、僕はほとんど英訳しただけです。

谷中敦(東京スカパラダイスオーケストラ / Baritone Sax)

谷中 一応元から英語で書いてたんだけど、自分はネイティブみたいにしゃべれるわけじゃないんで。

──ラップ部分のリリックはJohnnyさんの担当ですか?

Jean-Ken 「なんとなくこういうことを言ってほしい」という原案をいただいて、韻とかリズムを考えながら「多少意味は変わるけどこんな感じでどうでしょう?」みたいにやりとりしながら仕上げました。

谷中 ラップ作るの早かったよね。頼んだ次の日にできてたから。

Jean-Ken 最初に送っていただいた歌詞が温かいうえにすごく突き刺さるものだったので、当たり前なんですけど「これはマジでやらなきゃな」と思って(笑)。歌詞の世界観がはっきりしてたから、書きやすかったです。

谷中 自分としては“究極の生命体”から人類に贈るメッセージだから、デカくてストレートなテーマのほうがいいんじゃないかと思って。

加藤 地球人同士でこのメッセージを言い合ってたらちょっとカドが立つもんね(笑)。マンウィズの2人に歌ってもらえたことで、人の心にスッと入っていく曲になった気がします。


2021年11月10日更新