ナタリー PowerPush - The BK Sound

豪華アーティスト多数参加! 湘南乃風セレクター初のソロアルバム

友達や先輩たちとのスタジオ作業はいつも笑顔

──制作自体はどのくらいの期間で?

マネージャーをやっている空き時間を利用してちょこちょこトラックを作ったりしてましたが、本格的に制作を始めたのは今年に入ってからですね。湘南がレコーディングする姿を今まで見ていて、きっと過酷なものになるだろうなと思ってたんですけど、意外にも楽しかったです。だいたいスタジオでは笑顔でした。自分がリリックを生む苦しみがない分ラクなんでしょうね(笑)。気心の知れた友達や先輩たちとの作業だったんで、「今日ダメなら次やりましょう」って感じで、煮詰まりも含めて楽しかったです。幸せなことですよね。“音楽=音を楽しむ”ってことなんで。

──リリックに関して、プロデューサーとして各アーティストに指示をすることもありました?

英語が堪能ではないので、ジャマイカのアーティストに関しては、フックのリリックだけリクエストを入れて、残りのバースは各人におまかせしました。日本人アーティストに関しては歌詞のテーマから一緒に作っていった感じですね。自分は基本的にダンスホールは踊るための音楽だし、熱いメッセージは必要ないと思うタイプの人間なんですけど、アルバム1枚通して聴いてもらうにあたっては、刺さるメッセージもぶち込みたいなと思って、EELMANとメッセージチューンを作りました。

──テレビの向こうの出来事に無関心な現代人について歌った「ANGEL」という曲ですね。

はい。ジャマイカに行った翌日にハイチで地震があったんですが、現地の人たちがアクションを起こすのがとても早くて、ジャマイカ人のチャリティ意識の高さに驚きましたね。ジャマイカにも裕福な人はそれほど多くないのに、野外イベントに遊びに行ったら大きなドラム缶が回ってきて、そこにみんな募金してハイチに送っていたりするんです。「アイツらが今大変だから」って感じで、同じカリブの人間同士つながり合いの意識が強いんでしょうね。そういうのを直で見て、果たして日本や日本以外のアジアの近隣国で災害が起きても同じように動けるんだろうか?って疑問に思ってしまいました。自分を含めた大半の日本人はテレビの向こうの出来事みたいに感じてしまうんじゃないでしょうか。

──なるほど。

あと、メッセージチューンという意味では、サイプレス上野との曲も自分たちのこれまでと今後を歌った曲です。サイプレス上野とは10代の頃クラブで一緒にイベントをやって、よく遊んでいたんですよ。今はヒップホップとレゲエ、お互いにそれぞれのフィールドでがんばっていて、しばらく会う機会がなかったんですけど、最近フェスで再会して「一緒にやろうよ!」ってノリで(笑)。それぞれのフィールドでがんばっていれば、どっかでリンクしたり、再び巡り合うこともあるんだね、っていうメッセージが込められています。当時一緒にやってた奴らにも聴いてほしいねって2人で話していました。

カッコいい音を鳴らしてクラブ文化をよみがらせたい

──レゲエの主旋律はフリーキーなものも多いですが、BKさんの曲はきれいなメロディが特徴ですね。Metisや細美さんをフィーチャーした曲などは特に美メロで。

細美くんとは宮古島のロックフェスで一緒になったんですよ。浜辺でアフターパーティをやったときの細美くんとの思い出をそのまま曲にした感じですね。宮古島の海の前で気持ち良くなれる音楽を作りたいと思って。細美くん自身、自分のバンド以外のプロジェクトは初めてだったみたいで「お互い楽しんでやろう」って言ってくれました。Metisの曲は、どレゲエというよりはジャジーなダンスチューン。大好きなジャズのネタを使っていつかやりたいなと思っていた曲です。Metisの声は本当にいいんですよね。意外性というか、こういうジャジーなのもハマるんじゃないかなと思って、オトナのためのR&Bみたいなものを目指しました。

──プロデューサーとしてもセレクターとしても活動するBKさんですが、今後はどんな方向に進んでいきたいですか?

活動としては今までと特に変わらないですね。プロデュースもしたいし、クラブでも引き続き回したい。フェスでもセレクターはやるつもりですし、基本的に楽しくやれればと。世間のニーズやジャンルにとらわれることなく、自分がカッコいいと思うことを続けていきたいです。

──このアルバムのリリースをきっかけに、クラブに遊びに来るお客さんが増えるといいですね。

あの、クラブについては最近個人的に思うところがあって。台湾や香港など、アジアでDJするときに感じるのはやっぱり人のエネルギーなんです。とにかく活気があって、お客さんが遊びに対して貪欲で。一方東京は10年前に比べて“クラブ活動”している人が減ってしまって、活気が少なくなってしまったように感じます。昔はクラブに行かないと新しい曲も聴けなかったけど、今はUstreamがあったりして、家で1人でも楽しめちゃうからなんでしょうか。インターネット自体は誰にでも届くツールだし良いものだとは思うけど、その現場でだけ感じられる空気感を楽しもうっていう意識が薄くなったのは寂しいです。みんなで音楽を楽しむ文化をよみがえらせるためにも、自分はカッコいい音をクラブで鳴らしていきたいと思います。

1stアルバム「One」 / 2010年9月1日発売 / 2800円(税込) / FOR LIFE MUSIC ENTERTAINMENT / FLCF-4347

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CD収録曲
  1. INTRO feat. SONPUB
  2. OH OH OH feat. T.O.K.
  3. BAD NUMBER feat. 湘南乃風
  4. アラビアン★ダンス feat. HAN-KUN
  5. I wanna party feat. MINMI & ASSASSIN
  6. DAYDREAM BELIEVER feat. キヨサク (MONGOL800, The NO PROBLEM's)
  7. BLESSING feat. 細美武士
  8. Only your love feat. TURBULENCE
  9. LIFE feat. 導楽 & LIFE-G
  10. Mush up machine feat. GOKIGEN SOUND
  11. 1/1トラベラー feat. サイプレス上野
  12. ガイア feat. Metis
  13. ANGEL feat. EELMAN
  14. SUKIYAKI feat. TERRY LINEN
The BK Sound(ざ・びーけーさうんど)

1980年千葉県出身。湘南乃風のバックセレクターとしても活躍するサウンドプロデューサー。DJとして国内外の多数のイベントに参加。2010年9月、初のソロアルバム「One」をフォーライフミュージックエンタテイメントからリリース。