ナタリー PowerPush - カミナリグモ

結成10年目の憂鬱と確かな自信

カミナリグモのニューシングル「王様のミサイル」がリリースされた。表題曲の「王様のミサイル」は、上野啓示(Vo, G)が9年前に書いた楽曲で、今もなおライブの定番曲として歌い続けられているナンバーだ。ナタリー3度目の登場となる今回の特集では、上野に単独インタビューを行い、結成10周年を迎えたカミナリグモの現状と新作に込めた思いを語ってもらった。

取材・文・インタビュー撮影 / 臼杵成晃

この半年ぐらいは悶々としていて、気分は暗かった

──前回のインタビューがメジャー2ndアルバム「SMASH THIS WORLD!」発売時で、ナタリーへの登場はおよそ9カ月ぶりです。アルバム発売後の反響はどうでしたか?

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「SMASH THIS WORLD!」は自分たちの中でもすごく満足のいくアルバムになって。作り上げたときも、その後のツアーでも手応えは感じたんですけど……思ってたよりは売れなかったんです。だから自分の中ではどちらかというと落胆が大きくて。正直な話、この半年ぐらいは悶々としていて、気分は暗かったですね。

──いいものを作ったはずなのに、自分の考える評価まで追い付いていないような。

そうですね。なんというか……そういう状況をふまえて改めてアルバムを聴き返してみても、やっぱりアルバムに対する不満はないんですよ。だから現状の結果に満足はできないけど、納得するしかないなと。でも、やっぱり目に見える結果を出さないと「このアルバムはよくなかった」と言われても仕方がないことで。自分の頭でしっかりと考えて判断して、それで人が付いてきてくれなければそれまでというか。今でもありがたいことに、付いてきてくれるお客さんもスタッフもいてくれていますけど、そのへんは今まで以上にシビアに考えるようになりましたね。次のリリースをどうするかはアルバム発売直後から話し合っていたんですけど、そういう結果も踏まえていろいろと悩んでしまって。だけど、どれだけ考え込んでも正解は誰も知らない。直感や瞬発力がいい結果を生むこともあるでしょうけど、やっぱりバンドとしては自分たちで責任を持って、納得のいく判断をしていこうと思って。

──今年はカミナリグモ結成10周年ですけど、それほど華やかに「10周年!」という気分でもないんですね。

まあ多少はね、祝ってもらえたらラッキーみたいなところもありますけど(笑)。活動を始めた頃はまだ僕らの純粋なファンなんてほぼいないようなものだったし、今応援してくれている人もここ何年かで知ってくれた人がほとんどでしょうから、今振り返ってどうこうという立場のバンドでもないと思うんですよ。でも「10周年」というのは今しか言えないことですし、10周年だからちょっと大きいライブをやろう、ツアーをやろうというのは、いいきっかけになるかなって。次の作品はどうしよう、というところで立ち止まってリリースがないとツアーも組めないというのは、バンドにとっていい状況じゃないし。悩みながらも立ち止まりたくはなかったから、ライブはどんどんやりたかったんです。

──今はよく「どのバンドもCDが売れない」という話を聞きますけど、上野さんとしてはかなりシビアに捉えてるんですね。

もちろんいい曲を書くっていうのは当然なんですけど、自分たちできちんと考えてプランを組んで活動して行かないと。まだまだ、フェスにばんばん出られたりするバンドでもないし、考えて動いていかないと失速してしまうという危機感は常にあるので。

──バンドが"売れる"ための明確な答えってないですよね。楽曲にタイアップが付けば必ずめちゃめちゃ売れるとも限らないし。フェスに頻繁に出たりするのも、バンドの音を知ってもらえるきっかけにはなりますけど、それで確実にセールスが伸びるとは限らないでしょうし。

うん。何かのタイミングでバンドがスピード感を持ってステップアップできるようなこともあり得るのかもしれないけど、まあ、奇跡が起こることを計算に入れて活動プランを立ててはいないですから(笑)。できることをやるしかない、っていうところに尽きますね。

9年経っても「王様のミサイル」が持つテーマは変わらない

──今回、バンドの代表曲と言える初期のナンバー「王様のミサイル」が改めてシングルとしてリリースされます。やはりこの曲はカミナリグモにとって重要な曲だと思うのですが、10周年であえて立ち返ってみたようなところもあるのでしょうか。

まあ10周年というのもあるんですけど、さっき言ったように、僕らはまだまだこれから知ってもらわないといけない立場のバンドで。「王様のミサイル」は何度かリリースしている曲ではありますけど、このタイミングでシングルを発表するにあたって、まだ僕らを知らない人に聴いてもらうのに一番ふさわしい曲なんじゃないかと、メンバーとスタッフの間で意見が一致したんです。

──この曲が作られたのは9年前なんですよね。

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そうですね。2003年。カミナリグモとして活動を初めて1年目の終わりぐらい。

──作った頃のことは覚えてますか?

覚えてますね、漠然とですけど。まだ大学生で20歳ぐらいだったのかな。ひとり暮らしのアパートで、ブラウン管の向こうのとんでもない世界の出来事を観て。それで一晩で書き上げたような、そんな曲です。作ったときはいつもどおりというか、いい曲ができたなという手応えはあったんですけど、こんなに長く歌い続ける曲になるとは思ってなかったです。リリースをするのは自主制作も含めると3回、オムニバスも入れると4回かな。こうやって何度もリリースの機会を与えてもらえる曲もそんなにないし、それだけ味方になってくれる人が多い曲なんだなというのは感じます。バンドにとって大事な曲だなっていう認識ではいますね。

──2003年といえば、イラク戦争の年ですよね。9年前とは状況は違うものの、日本も世界も今は不安定なことが多くて。この曲で歌われていることは、そういう世の中の気分とも図らずもリンクしてしまうところがありますね。

戦争という国同士の争いに限らず、個人レベルでも争いはなくならないし……やっぱりこういう復讐や憎しみの連鎖というのは、嫌なことだけど普遍的なものだと思うんですよね。僕もすごく人を嫌いになることもあるし、逆に嫌われることだってあるし。いろんな人がいろんな環境でいろんな価値観を持って生きてきて、立場が違えば理解も違うし、人間は決して完璧ではないので。本当はこの歌が必要とされていない世界が理想なんでしょうけど。9年経ってもこの曲が持つテーマは変わらないし、今このタイミングで改めて思うところはあります。戦争という重いテーマの曲ではあるんですけど、理想どおりにいかない現実にどう立ち向かっていくのか、という自分の世界観がしっかりと込められてるんだなって。基本的には人間なんて無責任な生き物で、そこをカバーしてるのが想像力だと思うんですよ。あれだけ大きな震災が起こって、当初はもっとシリアスな出来事として受け止めてたけど、だんだんそれも薄れてくると、今日の晩ごはんだとか読んでたマンガの続きが気になったりとか、そうなってくのは当然で。この歌に対する自分の感覚にも気分によってムラがあったんですけど、9年前に作ったこの曲が、自分の理想と現実に対する捉え方の原点になっていると、最近改めて気付いたことはとても大きかったと思います。

──改めてレコーディングし直す上で、アレンジ面など苦労したところはありますか?

レコーディングに関してはすごくスムーズでした。ライブでも毎回必ずやっているような曲ですし、今のライブメンバーになってからも何度もやっていて、基本的な部分はもうみんなの中である程度共有できているから。

──普段からやっている今のバンドサウンドそのまんまを出すという。

はい。もちろん細かいアレンジをさらに詰めたりはしましたけどね。新作をリリースするとき、普段だったらレコーディングしたあとに「さあライブでどう演奏しよう」と考えますけど、今回は順番が逆だから。結果的にイメージしていたとおりの仕上がりになりました。

ニューシングル「王様のミサイル」/ 2012年8月8日発売 / 1200円 / キングレコード / KICM-1409

CD収録曲
  1. 王様のミサイル
  2. ミスマッチ
  3. Goodbye,you all
  4. シンガー
カミナリグモ「王様のミサイル-Oneman Tour-」
  • 2012年9月17日(月・祝)
    長野県 長野NEONHALL
  • 2012年9月27日(木)
    愛知県 名古屋ell.SIZE
  • 2012年9月29日(土)
    福岡県 福岡SPIRAL FACTORY
  • 2012年9月30日(日)
    広島県 広島BACK BEAT
  • 2012年10月2日(火)
    大阪府 梅田Shangri-La
  • 2012年10月7日(日)
    東京都 WWW
カミナリグモ

2002年、上野啓示(Vo, G)が中心となってカミナリグモを結成。翌年には上野のソロプロジェクトとなり、弾き語り、バンド、ユニットと形態を問わないスタイルとなる。2007年にはサポートとして参加していたghomaこと成瀬篤志(key)が正式メンバーに。インディーズで3作のマキシシングルと1stアルバム「ツキヒノォト」を発表した。かねてよりthe pillowsを敬愛していた上野が、ライブ会場で山中さわお(the pillows)に手渡した音源が高く評価され、2010年7月に山中プロデュースによるマキシシングル「ローカル線」でメジャーデビュー。同年11月にはメジャー1stアルバム「BRAIN MAGIC SHOW」、2011年にはミニアルバム「SCRAP SHORT SUMMER」と2ndフルアルバム「SMASH THIS WORLD!」を発表した。2012年8月8日にはインディーズ時代からの定番ナンバー「王様のミサイル」を再度レコーディングし、ニューシングルとしてリリース。