音楽ナタリー Power Push - 田中和将(GRAPEVINE)×高野寛

ポップ職人がもたらした 普通じゃない化学反応

歌詞から伝わる心象風景

──先ほど撮影中に高野さんと田中さんが読書の話をしていたのが印象的でした。

高野寛

高野 彼はね、レコーディング中とかちょっと待ち時間があると本を読むんですよ。

田中 何か読んでないと気が済まないんです。3冊ぐらいの小説をいつも同時進行で読んでますね。

高野 小説を3冊同時に?

田中 そうですね。移動用に持ち歩く文庫本と、寝る前に読む用のハードカバー、それとトイレで読む用の本。

──小説を3冊同時進行だと、話しが混ざってしまいそうですが。

田中 なりますよ(笑)。まったく違った話を読んでるから、ときどきわけがわからなくなりますね。

──近年田中さんが書く歌詞には、読書にまつわる言葉があまり使われなくなった印象があります。

田中 なんかね、これ見よがしに歌詞にそういう言葉を使うのもあざといな、って思っちゃって。「文学的な歌詞が」とか言われるのも、面倒くさいですし。

高野 レッテルを貼られちゃうんだよね。

田中 「文学的だ」とか言ってる人は、そんなにきっと文学のことを知らないんだと思う節もありますし。なので違うやり方をいろいろ模索していますね。

高野 田中くんが書く歌詞は本をいっぱい読んでる人ならではのボキャブラリーを感じさせますし、心象風景が遠くまで広がってるのがよくわかる。僕は小説だけじゃなくて新書なんかも読むんですけど、さっき田中くんに薦めた本は小説だから興味があったら読んでみてほしいですね。

田中 今度探してみます。

また一緒に演奏したいよね

──プロデューサー視点で、高野さんが今後GRAPEVINEに望むことって何かありますか?

高野 飲み過ぎに注意ってことかな(笑)。

田中和将(Vo, G)

田中 気を付けます。

高野 でも田中くんはものすごく酔っても、変な絡み方をしない稀有なキャラだと思います。

田中 そうは言ってもお酒飲み過ぎて「あー、楽しかった」というよりは、どちらかというと後悔のほうが多いもんですよ。「いらんことしゃべりすぎたな」とか。だいたい反省してます。

──GRAPEVINEと高野さんの共作は今後も続きそうですか?

田中 そうですね。今後もまた機会があったらぜひ一緒にやりたいですね。

──今回のシングルを聴いたら、GRAPEVINEと高野さんの共演を観たい人も出てくると思いますが。

田中 「ゲストに呼びます」とか言っちゃうとサプライズ感が減っちゃうから、仮に呼ぶとしても今は言いません(笑)。

──高野さんがステージ上でギターを擦る姿を、ぜひ観てみたいです。

田中 確かにそうですね。

高野 あんまり人前ではやったことないからなあ。でも機会があれば、またステージで一緒に演奏したいよね。

左から田中和将(Vo, G)、高野寛。
GRAPEVINE ニューシングル「EAST OF THE SUN / UNOMI」2015年12月2日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
初回限定盤 [CD+DVD]1944円 / VIZL-993
通常盤 [CD]1080円 / VICL-37119
CD収録曲
  1. EAST OF THE SUN
  2. UNOMI
初回限定盤DVD収録内容
  • LIVE IN VICTOR STUDIO presented by J-WAVE 「Hello World」
  1. スロウ
  2. 風待ち
  3. YOROI
  4. FLY
  5. 豚の皿
  6. なしくずしの愛
  7. 光について
  • VIDEOVINE vol.3
GRAPEVINE(グレイプバイン)
GRAPEVINE

田中和将(Vo, G)、西川弘剛(G)、亀井亨(Dr)の3人からなるロックバンド。1993年に元メンバーの西原誠(B)を含めた4人で結成。1997年にミニアルバム「覚醒」でデビューし、1999年リリースの3rdシングル「スロウ」が大ヒットを記録する。2002年に西原がジストニアのため脱退して以降は、高野勲(Key, G)、金戸覚(B)をサポートメンバーに加えた5人編成で活動を続けている。2010年にはギタリスト / プロデューサーの長田進と「長田進 with GRAPEVINE」名義でアルバム「MALPASO」を制作。2012年にメジャーデビュー15周年を迎え、9月に初のベストアルバム「Best of GRAPEVINE 1997-2012」を発表した。2014年11月にビクターエンタテインメント内のSPEEDSTAR RECORDSへ移籍し、2015年1月に移籍第1弾シングル「Empty song」収録曲を含むニューアルバム「Burning tree」をリリース。また同年12月に高野寛をプロデューサーに迎えて制作されたシングル「EAST OF THE SUN / UNOMI」を発表した。

高野寛(タカノヒロシ)

1964年生まれ。1988年に高橋幸宏プロデュースによるシングル「See You Again」で鮮烈なデビューを飾る。1990年にリリースした「虹の都へ」のヒットにより、一躍脚光を浴びる存在に。90年代後半からはソロのみならず、ギタリスト/プロデューサーとしての活動をスタートさせる。また2000年に入ってからは、BIKKE(TOKYO No.1 SOUL SET)、斉藤哲也とともに結成したNathalie Wise、宮沢和史率いる多国籍音楽集団GANGA ZUMBA、高橋幸宏が結成したpupa(ピューパ)など、複数のバンドやユニットに参加。また2014年にはブラジル滞在中に自身が撮影した写真によるフォトエッセイ集「RIO」を刊行するなど、豊かな才能をさまざまな形で発揮し続けている。