Gero×大石昌良|才能を認め合う“親友”同士のコラボ

Geroがニューアルバム「EGOIST」を7月26日にリリースする。

“EGOIST=自分主義”を掲げて制作された今作にはHoneyWorks、ヒャダイン、SPYAIR、大石昌良、玉屋2060%(Wienners)、ナナホシ管弦楽団、DECO*27、堀江晶太、中西航介、鈴木ぷよといった豪華作家陣が参加。このほかGeroが自作した楽曲も収められ、12曲入りのフルアルバムが完成した。音楽ナタリーではGeroと大石との対談を企画。イベントでのコラボの際には、オーディエンスにお互いを「親友」と紹介するなど、交流の深い2人にアルバム収録曲の制作にまつわる話や、ボーカリストとして感じるそれぞれの魅力を語り合ってもらった。

取材・文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 星野耕作

すね毛を見て「真のエンタテイナーなんだな」って

──4月に千葉・幕張メッセで開催されたイベント「ニコニコ超会議2017」での大石さんのステージでは、Geroさんを「親友」と紹介してコラボを披露しました。

大石昌良 そうでしたね。まあアレはあくまでステージ上の“ビジネス親友”と言うか……。

Gero ええー!? そうだったんですか、大石さん!

左からGero、大石昌良。

大石 嘘だよ(笑)。Geroくんっていろんな方と仲良くしていて、距離感を感じさせない人なんですよね。急にゼロ距離で話しかけてくる、みたいなところがあって。

Gero 2015年に行われた「ANIMAX MUSIX」ってイベントのときに大石さんが僕に声をかけてくれて、そこから交流が生まれたんです。アニソン系のイベントって女性の出演者が多くて、僕みたいなソロのシンガーは孤立しがちなんですけど、そんな中大石さんが声をかけてくれたのが、メチャクチャうれしくて。

大石 会場が横浜アリーナだったんですけど、すごく大きな楽屋があって。いろんな共演者がいる中でGeroくんを見つけて「あ、コイツたぶんメッチャおもろいやつやな」と思ったんです。

Gero まあ、僕そのとき女装してましたからね。

大石 そうそう(笑)。

Gero i☆Risっていうカワイイ女の子たちのグループとコラボで“Gero☆Ris”っていうのをやろうって話になって。i☆Risにはピンク色のメンバーがいないからってことで、僕のサイズに合わせてピンクの衣装を作ってもらったんです。

大石 Geroくんはすごく丁寧に毛を剃って来てるんだけど、すね毛だけあえて剃ってなくて。それを見て「あ、なんか仲良くなれるかな」って思ったの。Geroくんのステージに賭ける意気込みというか、真のエンタテイナーなんだなってことが伝わってきた。

左からGero、大石昌良。

Gero 僕は学生時代のときにSound Schedule(大石が所属しているバンド)の大ファンで。「ピーターパン・シンドローム」とかメチャクチャ聴いてましたから、大石さんは僕にとって憧れの大先輩なわけですよ。それなのにすごくフランクに接してくれて。今年の春はお花見に誘っていただいたんです。

大石 プライベートでも誘いたくなるっていうのは、本当に仲良くなりたい人や、刺激を受けたい人に限ると思うんです。もしかしたらGeroくんは僕のことを親友と思ってないかもしれないけど、僕にとっては親友と言っても過言ではないですね。

Gero うわ! なんだか照れますね。

大石 Geroくんの長所やね。誰にでも好かれるタイプだけど、特に歳上に好かれるタイプと言うか。アニソン界の重鎮の皆さんにもかわいがられているのは、僕から見てうらやましい部分もあるんですよ。

Gero でもそのお花見もそうそうたる方々が集まっていましたから、大石さんの顔の広さはすさまじいなって思いました。あそこに雷が落ちたら来期のアニソンが全部ダメになるんじゃないかってくらい、業界の売れっ子が集まってましたから。いやあ、すごいお花見でしたね(笑)。

仮歌がエグい

──Geroさんの最新アルバム「EGOIST」には、大石さんの提供曲「ベイビーミュージックライダー」が収録されています。

Gero すごい名曲を書いてもらっちゃいました。

大石 いやいや、名曲て。ありがとうございます。

──Geroさんから大石さんにはどういうオーダーを?

Gero 大石さんにはいつか曲を書いてもらおうと思っている中で、思い切って事務所も通さず本人に直接オファーをして(笑)。ただ大ヒットしている「ようこそジャパリパークへ」みたいな曲を僕が歌うのはちょっと違うかなと思っていろいろ相談させてもらったんですよね。

左からGero、大石昌良。

大石 Geroくんに歌ってもらうんだったら、洋楽で言えばMaroon 5みたいな、少しR&Bやファンクの要素が入りつつもポピュラリティをちゃんと得られる楽曲にしたかった。それに加えて歌がうまくないと歌えない曲を作ろうと思って。自分で仮歌を入れてみたら我ながらメチャクチャ難しかったんですよね。

Gero いやそれがですね。大石さんの仮歌がエグくて(笑)。完成度が高すぎて僕、笑っちゃったんですよ。「ベイビーミュージックライダー」はこのアルバムの中で一番練習した曲だし、初めてしっかりプリプロしてレコーディングに入りました。

大石 もう少し難しくしといたほうが……。

Gero これ以上はアカン!(笑) ここ最近はボーカリストとして大石さんの歌声を聴く機会も増えていますけど、歌を聴くたびに「この人化け物やな」と思っています。この仮歌が来ちゃったらもう本気になるしかないと言うか。

大石 なんか褒め合いになってしまうけど、あなたも十分化け物ですよ!

新しい一面を引き出した1曲

Gero あと大石さんには「ド頭で幸せになる感じでお願いします」ってお願いもしましたよね。

大石 そうそう。それで「幸せをどう表現しようか」って問題になるわけなんだけど、例えば僕やGeroくんの歳でありったけの愛を“ガチ恋”の歌詞に乗せて歌うのって、なんかちょっと違うかなあと思って。なので今回の曲では、赤ちゃんに向けて愛を注ぐ人間の歌にしたんです。それも“音楽バカが赤ちゃんをあやすときにちょっと迷ってる”みたいなニュアンスで。

Gero 相手は赤ちゃんなので、うまく愛が伝わらないんですよ。そのちょっとちぐはぐな感じが僕にとっても面白くて。こういうタイプの曲は歌ったことなかったから、新しい一面を引き出してもらったし、早くライブで歌いたい1曲ですね。

大石 今回のアルバムには、作家としてヒャダインさんなんかも参加していたから、ネタに振り切るとちょっと被ってしまうとも思って。コミカルな要素はあるけど、歌唱力がないと歌いこなせない、グルーヴィな曲を書いたんです。

Gero「EGOIST」
2017年7月26日発売
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
Gero「EGOIST」初回限定盤

初回限定盤 [CD2枚組]
3780円 / GNCL-1268

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Gero「EGOIST」通常盤

通常盤 [CD]
3240円 / GNCL-1269

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DISC 1
  1. born to blaze
    [作詞・作曲・編曲:堀江晶太]
  2. あぶらかだぶらぶらぶらぶサマー
    [作詞:lotta / 作曲・編曲:玉屋2060%]
  3. Gravity
    [作詞・作曲:DECO*27 / 編曲:Rockwell]
  4. サヨナラカゲロウ
    [作詞:MOMIKEN / 作曲・編曲:UZ]
  5. STEAMHUMAN
    [作詞・作曲・編曲:鈴木ぷよ]
  6. 見てるだけ
    [作詞・作曲:前山田健一 / 編曲:ミツル]
  7. 弱者の宣言
    [作詞:shito、Gom / 作曲:shito / 編曲:HoneyWorks]
  8. ベイビーミュージックライダー
    [作詞・作曲・編曲:大石昌良]
  9. パ・パ・パ・パパラッチ!
    [作詞:ナナホシ管弦楽団 / 作曲・編曲:岩見陸]
  10. トレマ
    [作詞・作曲:Gero / 編曲:大和]
  11. 231
    [作詞:Gero / 作曲:Gero、鈴木ぷよ / 編曲:鈴木ぷよ]
  12. LIGHT
    [作詞・作曲・編曲:中西航介]
DISC 2(初回限定盤のみ)
  1. 小さな恋のうた
  2. はなまるぴっぴはよいこだけ
オーイシマサヨシ「仮歌」
2017年7月26日発売
TIME IS MONEY RECORDS / Flying Pan RECORDS
オーイシマサヨシ「仮歌」

[CD]
2800円 / DDCZ-2160

Amazon.co.jp

Gero(ゲロ)
Gero
兵庫県生まれのボーカリスト。2009年、ニコニコ動画に投稿した“歌ってみた”動画が話題を集め、本格的な活動をスタートさせる。多くの同人CD / DVDへの参加、イベント出演などを経て、2011年には自身初のフルアルバム「Gourmet」をリリースし、インディーズながらオリコン週間アルバムランキングで7位を獲得した。2013年7月、テレビアニメ「BROTHERS CONFLICT」のオープニングテーマ「BELOVED×SURVIVAL」でメジャーデビューを果たす。2017年4月には自身の主催ライブ「ちゃんげろソニック2017」を成功させ、同年7月にフルアルバム「EGOIST」を発表。同年8月からは同アルバム名を冠した全国ツアー「Gero Live Tour 2017-EGOIST-」を開催する。
大石昌良(オーイシマサヨシ)
大石昌良
愛媛県宇和島市出身のシンガーソングライター。大学の軽音楽部の仲間である川原洋二、沖裕志とともに1999年に結成したSound Scheduleでボーカル&ギターを担当する。2006年にSound Scheduleが解散してから、2008年にシングル「ほのかてらす」でソロデビュー。2011年にはSound Scheduleの再結成でも話題を呼んだ。2015年にはTom-H@ckとのユニット・OxTを結成。また「オーイシマサヨシ」名義でアニメやゲームに多数の楽曲提供を行っており、2017年7月にはアニメ「けものフレンズ」オープニングテーマのセルフカバーなどを収めたニューアルバム「仮歌」をリリースする。