CIVILIAN×篠原ともえ|コンプレックスと向き合った4人が出した答え

自分が大好き

篠原 そうだったんですね。今、私もコンプレックスについて考えてみたんですけど……私の場合は、自分が超大好きでした(笑)。

コヤマ あははは、すばらしい。

篠原 今回のMV撮影で「過去の写真を持ってきてください」って言われて、シノラー時代の写真を探していたら、ポラの写真が見つかったんです。その写真に当時の自分がひと言書き添えてあって「自分が大好き」と書いてありました。10代の頃から自分のことが大大大大好きだった。でも、周りから見たときにそれが不思議なのかしら?って。今回のMVをやらせていただいて、そういう思いにも気付かされました。

──先ほどコヤマさんが話していたように、篠原さんは10代の頃から大勢の人に注目されて、いいことや悪いこと、いろんな意見を言われてきたと思うのですが……それでも自分を好きでいられたのはどうしてですか?

篠原ともえ

篠原 周りは決めようとするんですよね。「ともえちゃんて、実は暗いんでしょ?」「本当のともえちゃんはおとなしいんでしょ?」って。「実はこうなんでしょ」とみんな想像するんですけど、本当は「私はこうだ」なんて決められないと思うんです。なので、自分を決めないって決めたんですよ。そういった心持ちでいると、柔軟に変身できることの気持ちよさを知ることができたんです。眼鏡をかけて自分を隠すことも私だし、おめかしして自分を変えようとする私もいますし、積極的に監督へアプローチする私もいますし……って。誰かに決められちゃう悩みはあるかもしれないけれど、私は私のことを決めないし、どの私のことも大好きでいることにしているんです。

シノラーファッションの理由

──ところで、篠原さんがMVに出演なさることって珍しいですよね。

篠原 誰かのMVに女優として出演するのは芸能生活23年で初めてなんです。デビューの機会をくださってありがとうございます(笑)。「顔」はCIVILIANさんにとっても大事な曲なんですよね?

コヤマ そうですね。CIVILIANに改名して、すぐに作った数曲のうちの1曲だったんですよ。

篠原 女の子が歌ってもよさそうだけど、男性が歌っているというのが色っぽいですよね。

コヤマ 男の口調で歌詞を書くと、どうしても僕自身の話になってしまう気がして。曲は僕の分身なんですけど、口調というのをあえて変えたほうが伝わる部分があるよなと思ってそうしました。あとは「女の子として生まれていたらどうだったんだろう 」なんて、たまに考えることがあって。歌の中だったら何者にでもなれると言うか。いわゆる口調が女の子のような歌だったりとか、そういうのが歌いたいと思って作った曲なんです。

篠原 人のことを歌っているのかと思ったら、ご自身の体験だと聞いて驚きました。

コヤマ 狙って作ったというよりも、自然とこういった歌詞が書けたというか。

篠原 そうだったんですね。なんだか、今日はナタリーのおかげでいろんな疑問が解消しました(笑)。コンプレックスをみんなで言い合ったりして、ナタリー相談室みたい。

有田 僕らは篠原さんにカウンセリングしてもらっているみたいです(笑)。

──では、皆さんはコンプレックスはあるほうがいいと思いますか? ないほうがいいと思いますか?

CIVILIAN

有田 あるほうがいいと僕は思います。苦しい思いはするんですけど、それをポジティブにできれば逆に自分の個性になる気がして。

コヤマ コンプレックスを歌うことで、逆にバネにできたりもするんですけど。でも……コンプレックスはないほうがいいんじゃないかな。このMVを人に届けることができて、それを観た人の反応によっては僕の考え方も変わることがあるかもしれないですけどね。

──篠原さんはコンプレックスについて、どう思いますか?

篠原 あのね、コンプレックスを何かに変える瞬間って気持ちいいんですよ。私はシノラー時代どうしてああいった格好をしていたかと言いますと、お尻が大きいからミニスカートではなくハーフパンツにして、ペタペタ歩くからDr.Martensにして、手がぐりぐり動くからジャラジャラ音がする腕輪をして、おでこが広いから前髪をぱっつんにしていたんです。「自分自身をどう彩るか?」と自分と向き合ったときに、あのファッションが生まれたんですよ。「顔」のMVにも鏡の中の自分と向き合うシーンがありますけど、鏡写しって、コンプレックスと向き合って何か発見するきっかけになるものだと思います。

有田 そうだったんですね……なんだか、20年越しにシノラーファッションの謎が明らかになったような気分ですね。

仲間でいましょう

──では最後に、座談会を終えた感想をお聞かせいただければと思います。

コヤマ 音楽に限らず、モノを作っている人特有の空気を感じられて……僭越ながら、僕は篠原さんのことを仲間だと思えました。

篠原 いい響き! ぜひ、仲間でいましょう。

コヤマ いさせてください!

篠原 そうだ、今度皆さんの衣装のデザインをさせてください。

有田 そんなことをしていただけたら、涙がちょちょぎれてしまいます。

篠原 私は派手なものが好きなので、ハチャメチャなデザインにしちゃったらごめんなさい(笑)。

CIVILIANと篠原ともえ。
CIVILIAN「顔」
2017年8月2日発売 / Sony Music Records
CIVILIAN「顔」初回限定盤

初回限定盤 [CD+DVD]
1800円 / SRCL-9445~6

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CIVILIAN「顔」通常盤

通常盤 [CD]
1200円 / SRCL-9447

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CD収録曲
  1. デッドマンズメランコリア
  2. ハロ/ハワユ
初回限定盤DVD収録内容
  • 顔 -Music Video-
CIVILIAN(シビリアン)
CIVILIAN
ボーカロイドプロデューサー・ナノウとしても知られるコヤマヒデカズ(Vo, G)と、純市(B)、有田清幸(Dr)による3ピースロックバンド。2008年、コヤマが同窓生の純市、有田に声をかけて結成。2009年よりLyu:Lyu名義で活動を開始し、2010年、1stミニアルバム「32:43」をリリース。オリコンの「ネクストブレイクアーティスト」に選出されるなど、アグレッシブなサウンドと絶望的な言葉の中に希望を垣間見せる詞が話題を集める。2011年には2ndミニアルバム「太陽になろうとした鵺」を、2012年には「SUMMER SONIC2012」の大阪公演にも出演。そして2013年3月、1stフルアルバム「君と僕と世界の心的ジスキネジア」をリリースした。全国でワンマンライブを行うなどバンドとして精力的に活動する一方、コヤマが小説「ディストーテッド・アガペー」をWebで連載するなど、多方面で活躍する。2016年7月にはバンド名をCIVILIANと改め、8月に改名後初となるシングル「Bake no kawa」を発表。11月にはSony Music Recordsよりメジャーデビューシングルとなる「愛 / 憎」をリリースする。2017年8月にメジャー3作目のシングル「顔」を発表した。
篠原ともえ(シノハラトモエ)
篠原ともえ
1979年3月29日生まれ、東京都出身。タレント、衣装デザイナー、歌手、女優、ナレーター、ソングライター等、幅広い活動を展開中。1995年、16歳のときに石野卓球プロデュースの篠原ともえ+石野卓球名義で歌手デビュー。シングル「チャイム」をリリースする。1990年代には自身のアイデアでデコラティブな“シノラーファッション”を発信。大学ではデザインを本格的に学び、ライブなどで着用する衣装はデザイン、縫製ともに自身で手がけている。2013年から松任谷由実コンサートツアーの衣装デザイナーに抜擢。藤あやこのCDジャケットの衣装デザインも手掛けている。また、近年では天文を愛する「宙(そら)ガール」としてプラネタリウムでの星空解説やライブを開催。2011年には天文や宇宙の知識を問う「天文宇宙検定」3級に合格した。著書には「ザ・ワンピース」「ザ・ワンピース2」(ともに文化出版局)、「篠原ともえのハンドメイド~アクセサリー&ファッション小物77~」(講談社)など。2017年3月には初のベスト盤CD「ALL TIME BEST」をリリースした。