ナタリー PowerPush - BOOMANIA ~THE BOOM SPECIAL BEST COVERS~

MCU、ユウ、おおはた雄一が語るTHE BOOMの魅力とカバーアルバム

今年デビュー20周年を迎えたTHE BOOM。ベストアルバム、2枚のシングルリリースと全国ツアースタートに加え、まさにアニバーサリーイヤーならではの企画アルバム「BOOMANIA ~THE BOOM SPECIAL BEST COVERS~」が発売された。

奥田民生によるTHE BOOMのデビュー曲「君はTVっ子」から、東京スカパラダイスオーケストラによる「風になりたい」まで、ジャンルも年代も越えた全22組による22曲、2枚組のカバーアルバム。

友部正人・矢野顕子・小田和正・こだま和文らTHE BOOMが憧れてきた先達、奥田民生・BEGIN・高野寛ら同年代のアーティストたち、さらにMCU・坂本美雨・ユウ(GO!GO!7188)ら「THE BOOMチルドレン」を公言するひと世代下のアーティストなど、参加ミュージシャンもカバーのスタイルも、THE BOOMの音楽性と同じくボーダレスで、バラエティに富んでいる。

ロック、フォーク、スカ、レゲエ、沖縄民謡、サンバなど、ジャンル・地域を縦断してきたTHE BOOMの音楽の旅。このアルバムには、さまざまな人に届く「歌」を追求してきた旅で彼らが得た出会いの結実、撒いてきた種子の萌芽がある。

今回は、このアルバムに参加したミュージシャンの中からMCU、ユウ、おおはた雄一を招いて、THE BOOMの魅力、THE BOOMからの影響を語ってもらった。

取材・文/杉山敦(TUK TUK CAFE)

私の中では「音楽=THE BOOM」でした(ユウ)

──MCUさん、ユウさん、おおはた雄一さんとも1970年代生まれということで、1989年にデビューしたTHE BOOMと出会ったのは、ご自身のデビュー前だったと思いますが、初めて彼らの音楽を聴いたときの印象を教えてください。

ユウ 中学3年生のときに「島唄」(1992年)を、たまたま家族でドライブしていたときに姉のカセットテープで聴いて、すごい衝撃を受けました。それまでバンドなんて知らなかったし、音楽にもほとんど興味を持ってなかったけれど、初めて音楽っていいなと感じました。最初にTHE BOOMを生で観たのは1993年の鹿児島市民文化ホールで、それが人生初のライブ経験です。高校に入ったら絶対にバンドを組もうと思ったし、私の中では「音楽=THE BOOM」でした。

おおはた 僕も中学の頃ですね。バンドブームで、ホコ天とかが雑誌で特集されてて。最初に「おっ!」と思ったのは、テレビで見た「君はTVっ子」(1989年)ですね。「ンチャンチャ」という跳ねるようなリズムや歌詞が、他のバンドとは雰囲気が違うなと思ったのを覚えています。“君の気をひくためなら毒薬飲んでもいいよ”とか、そういう言葉にひっかかりました。

MCU 僕も中学の頃、THE BOOMがデビュー前にホコ天でやっていたときから観に通っていたんですが、最初は声と、顔ですね(笑)。宮沢さんの顔を見たときにくるものがあったんですね。声も素敵だったし。歌詞も「都市バス」(1989年)の“古本屋の前で下車 他人の心のぞきたくて 涙でシワになったページを探す”というフレーズなんて、すぐその情景が浮かぶし、抽象の仕方もわかりやすくて、惹かれましたね。

おおはた そういうパンチのある言葉が随所にありますよね。

ユウ (MCUさんが)私より前からTHE BOOMを知ってるということが、単純に悔しい(笑)。GO!GO!7188でデビューした2000年当時、THE BOOMとレコード会社が一緒だったんです。スタジオでスタッフに「いまからすごい人に会いに行くからユウちゃん髪を整えたほうがいいよ」って言われて、誰に会うのかわけがわからずに連れて行かれたら、ロビーに宮沢さんがいらっしゃって、そのときに「神様に会えた!」みたいな感じで、涙がボロボロ出て泣いてしまったんです。

誰もが知ってる曲でいくか、マニアック路線でいくか迷った(MCU)

MCUMCU

──今回カバーアルバムへの参加を依頼されて、THE BOOMが20年間で作ってきた曲の中からそれぞれの曲を選んだ理由と、レコーディングのポイントを聞かせてください。

おおはた 「ないないないの国」(1989年)は、歌詞で選びましたね。僕は下北沢に住んでるんですけど(※この曲を書いた当時、宮沢和史も下北沢に住んでいて、THE BOOMには下北沢を舞台にした曲が他にもいくつかある)、今の自分にばっちりということで選びました。あの曲を聴いたとき、下北沢の風景が浮かんできて。レコーディングはいろいろ考えました。でもカントリー・ブルースという僕にとっていちばん自然なスタイルでやってみました。あと、モノラル録音です。どーんと来るように。

ユウ このお話をいただいたときに、GO!GO!7188ではなくて、これまでに「THE BOOMが大好き」って話をしていたミュージシャン同士でやりたいと思って、友達のTHE BACK HORNの菅波栄純くんと、元・中ノ森BANDのCheetaと、ドブロクの原田くん(ハラダイス銀河)に声をかけて、ソウル・フラワー・ユニオンの奥野さんにプロデューサー的な立場で参加をお願いしました。このメンバーなので、しっとりとした曲でなくどかーんとした「ひのもとのうた」(1990年)を選びました。かなり悩みましたけど、私のベスト5に入る曲です。原曲のイントロは「君が代」からきてるんじゃないかと思ったんです。それで和のイメージにしたくて、琴の音が頭に浮かんで作りました。

──MCUさんの「berangkat-ブランカ-」(1994年)は、メロディとサビの部分を残して、THE BOOMの膨大な歌詞からの引用で作ったリリックを新たに足していますよね。

MCU ヒップホップ的な解釈ですね。リリックのサンプリング。ラップには韻があるんですが、その韻に合ったTHE BOOMの歌詞を使ったり、THE BOOMの曲タイトルありきで韻を踏んでみたり、そこで物語を作っていったりというラッパーならではのことをやってみたかった。カバーしたい曲はたくさんあって、「berangkat-ブランカ-」のような誰もが知ってる曲でいくか、じゃなかったら「乳牛」(※THE BOOMの変名バンドのレパートリー。レコーディングはされていない)のようなマニアック路線でいくか迷ったんですけどね(笑)。

『BOOMANIA~THE BOOM SPECIAL BEST COVERS~』 / 2009年7月22日発売 / 3500円(税込) / FIVE D plus / VFCV-00044~5

  • Amazon.co.jpへ
CD収録曲
DISC1
  1. 君はTVっ子 / 奥田民生
  2. berangkat-ブランカ- / MCU
  3. 釣りに行こう / キマグレン
  4. 風になりたい / 絢香
  5. 月さえも眠る夜 / BO GUMBO3 feat.ラキタ
  6. 気球に乗って / 友部正人
  7. ひのもとのうた / ユウ・菅波栄純・ハラダイス銀河・Cheeta・奥野真哉
  8. ないないないの国 / おおはた雄一
  9. それだけでうれしい / 坂本美雨 feat.高田漣
  10. 僕にできるすべて(REMIX) / こだま和文
  11. 24時間の旅 / HIKURI from MEXICO
DISC2
  1. 島唄 / LOW IQ 01
  2. おりこうさん / MONGOL800
  3. 星のラブレター / MINMI feat. PETER MAN
  4. TOKYO LOVE / bird
  5. TAKE IT EASY / BEGIN
  6. 神様の宝石でできた島 / bonobos
  7. なし / かりゆし58
  8. からたち野道 / 高野寛
  9. 中央線 / 矢野顕子 with 小田和正
  10. 虹が出たなら / YOUR SONG IS GOOD
  11. 風になりたい / 東京スカパラダイスオーケストラ

THE BOOMデビュー20周年を記念したカバーアルバム。特設サイトには、参加ミュージシャンのコメントが掲載され、試聴もできる。メキシコから参加のHIKURIは、メキシコ人のバンドでスペイン語によるカバーを提供。「島唄」を以前から同国でカバーしており、宮沢和史のユニットGANGA ZUMBAの前身バンドが2005年に中南米をツアーしたときにメキシコで宮沢と出会っている。友部正人は自身のサイトで、レコーディングに使用した12弦ギターは、故・忌野清志郎から譲り受けたものだということを明かしている。

THE BOOM プロフィール

1989年デビュー。宮沢和史(Vo)、小林孝至(G)、山川浩正(B)、栃木孝夫(Dr)の不動の4人で活動を続ける。2枚組30曲入りのベストアルバム「THE BOOM 89-09」を2009年5月にリリースし、ニューシングル「夢から醒めて」「My Sweet Home」を発表。その音楽的探求心は多くのミュージシャンに影響を与え、代表曲「島唄」は国内外でカバーされている。