音楽ナタリー Power Push - 朝倉さや

音楽で今一度日本を洗濯し候

歌い方は違ってもシンパシーを感じた

──「木蘭の涙」は中孝介さんとのコラボ曲ですね。

中孝介さんは日本の伝統文化を重んじながら愛を持って音楽活動をされている方だと思うので、私にとって目標とする先輩のような存在なんです。その中さんと今回、一緒に歌わせていただいたことで、まさに日本の素晴らしい音楽を皆さんに届けられるんじゃないかなと思っています。中さんの島唄と私の民謡って、発声やコブシの回し方とか聴き心地が違うんです。言ってみれば、北と南の伝統文化のよさがそれぞれに詰まってるんじゃないかなと思います。途中で「はぁあ~」という掛け合いがあるんですけど、そこは特に聴いてもらいたいですね。歌い方は違っても、歌い手としての志にすごくシンパシーを感じました。

──そして「上を向いて歩こう」は2012年にMVをYouTubeで発表したものとは違うバージョンになってますね。

最初にレコーディングしたバージョンもいい感じだったんですけど、今回は全力で声と思いを入れ直しました。実は「新庄節」も1回レコーディングし直していますし、そういう意味ではすごくこだわって作ったので「これが『日本漬け』です!」って皆さんに胸を張ってお届けできるものになっています。

──カバーだからこそ歌い手としての自分自身に対して、よりストイックに向き合われたという感じですか。

本当にそうですね。名曲と呼ばれるものはすでに曲の世界が完成しているものが多いですから。それを自分がどう歌っていくかはプロデューサーのSolayaさんとも相談しながら詰めていきました。

Solaya 例えばSTARDUST REVUEさんが歌う「木蘭の涙」って、歌がうまいとかっていう次元じゃないよさがあるんですよね。そのレベルに到達することはとても難しいことなので、カバーをするときはそこに新しい価値を乗せて再解釈するという意味でやらないと勝てないと思うんです。そこで彼女の山形弁だったり、中くんの島唄だったりという要素を加えることで本家とは違う「木蘭の涙」を作り上げることができた。今回のアルバムには彼女の歌のすごさを閉じ込めることができたと思っています。

──「日本漬け」は歌手としての朝倉さやの魅力と実力が凝縮されたような作品になりましたね。

やりたいことをやりたいようにやらせてもらえている環境があることにすごく感謝しています。日本の伝統文化を歌い継いでいきたい私にとって、日本の音楽の素晴らしさを提示できたかなと思っています。今回、こうやってカバーをさせてもらったことで自分自身もこの曲たちの魅力をさらに知ることができた、そんな思いもいっぱい詰まったアルバムになりました。

「日本漬け」を携えて海外でも

──そして今回はボーナストラックとしてオリジナル曲「ゆらゆらゆらら」と「東京」が収録されています。

朝倉さや

アルバム「快進撃のミュージック」に収録されていた「ゆらゆらゆらら」とは違う、ジャズやボサノバの要素を入れたバージョンになっています。「東京」は静岡市民文化会館で行ったワンマンライブの音源で、MCも入ってるのでぜひ聴いてください。

──今作はさやさんが侍に扮したジャケット写真も面白いですよね。これはどういうアイデアで?

「日本を切り開く」っていう意味にしたくて、ここは坂本龍馬さんかなと思ってこういう衣装にしました(笑)。“音楽で今一度日本を洗濯致し候”って感じで。ちなみにアルバムの題字は、習字セットを買ってきて自分で「日本漬け」と書いた字がそのまま使われているんですよ。

──作品に関連するビジュアルなども、さやさんが考えているんですね。

そうなんです。衣装も髪型も自分で考えていますし、前回のアルバム「快進撃のミュージック」のアーティスト写真用の衣装も、お店に行って「私はこういう気持ちでこういうアルバムを作りましたので、これに合うような服を探しています」って説明をして。そしたらお店の人が10セットくらいの服を持ってきてくださって。休みの日は、衣装さんみたいに服を抱えて走り回っています(笑)。

Solaya 自分で衣装を用意したりするのもそうですけど、彼女はどんなときもどういうことに対しても“楽しむ力”を持っているんです。テレビ番組のレポートでもラジオでも何でも楽しくやれる人間力がすごい。そこが一番尊敬してるところです。

ありがてえお言葉です(笑)。

──2016年はさやさんにとってどんな1年でしたか。

朝倉さや

たくさんの人に歌を届けられたことがうれしかったです。アルバムを出せたのはもちろん、ライブをしていても笑顔がたくさん見れましたし、幸せな空気を感じることができて感謝の気持ちでいっぱいです。来年は夏にツアーをやりたいなと思っていますので、全国各地で歌わせていただけたらうれしいです。来てくれた人を幸せにできるようなライブにしたいと思っていますので、そちらも楽しみにしていてください。アルバム「日本漬け」を携えて、海外でもライブをやりたいなあ。世界中でコロコロとコブシを回して歌いたいです! もちろんオリジナル曲も作っていますよ。

──またツチノコが登場したりする「伝説生物」シリーズの楽曲なども楽しみにしています。

はい。最近はネッシーのことを調べていて、すでに曲の断片はできてるんです。ネッシーのことをしっとり歌いたいと思いますので、お楽しみに!

ニューアルバム「日本漬け」 / 2016年12月21日発売 / 3000円 / Solaya Label / SLSC-0010
「日本漬け」
収録曲
  1. 木蘭の涙 ft.中孝介
  2. 新庄節-Future Trax-
  3. やさしさに包まれたなら
  4. Rain
  5. 涙そうそう
  6. いつも何度でも
  7. もう恋なんてしない
  8. 残酷な天使のテーゼ
  9. クリスマスイブ
  10. 上を向いて歩こう
  11. 新庄節

<ボーナストラック>

  1. ゆらゆらゆらら Jazz & Bossa ver.
  2. 東京 Live ver. @静岡市民文化会館

2017年 朝倉さや ホールコンサートツアー(仮)

  • 2017年7月1日(土)東京都 よみうり大手町ホール
  • 2017年7月17日(月・祝)山形県 山形市民会館
  • 2017年8月11日(金・祝)宮城県 電力ホール
  • 2017年8月12日(土)山形県 響ホール
  • 2017年9月18日(月・祝)静岡県 静岡市民文化会館
朝倉さや(アサクラサヤ)
朝倉さや

山形県出身のシンガーソングライター。家族の影響を受けて小学生の頃から民謡を習い始め「民謡民舞少年少女全国大会」で、2度優勝した経験を持つ。18歳で上京し、Solayaのプロデュースのもとオリジナル曲の制作を開始した。2013年4月にデビューシングル「東京」をリリース。2014年10月には「タッチ」「女々しくて」「ロビンソン」といった楽曲を山形弁で歌ったカバーアルバム「方言革命」を発表し、大きな話題を呼ぶ。また2015年9月に発表された「River Boat Song-Future Trax-」では、「第57回日本レコード大賞」の企画賞、「第8回CDショップ大賞2016」の東北ブロック賞を獲得。2016年4月にニューアルバム「快進撃のミュージック」を、12月にはカバーアルバム「日本漬け」をリリースした。